少年漫画を思わせる熱い展開に、ミステリーの要素も満載。
何よりキャラクターが生き生きと描かれている!
舞台は現代をベースとした、名探偵が名誉職という世界。名探偵には使い魔が付くというファンタジックな設定もありますが、上手く混ざり合っていて違和感がありません。
そう思わせる要因は、本作の持ち味であるコミカルさでしょう。
主人公の修也を始め、ヒロインの千鶴、お目付け役のエル、その他のキャラクター全てが個性的で、彼らの小気味よい掛け合いは読んでいて楽しいです。
本作の魅力はそれだけではありません。
主人公の修也は名探偵の息子、なのに才能を開花させられず、理想と現実の差に悩みながら、時には卑屈になってしまいます。
ともすれば、とっくに心が折れていてもおかしくないのに、彼は名探偵になることを絶対に諦めないのです。
大人になると諦めることが当たり前になってしまうものですが、本作は諦めない心の強さを教えてくれます。
プロの作家になりたいけど、なかなか自分の作品にスポットライトが当たらない、もしかしたら自分には才能が無いんじゃないか……そんな悩みを抱える書き手さんにオススメの一作です。
推理学園物、推理バトルがあったり推理の授業があったり探偵という職業が確立していたり、という舞台設定は非常に魅力的で少年漫画との相性も良いと感じた。発想の素晴らしさに悔しさすら覚えた。
だが、このストーリーは、これだけで読んだ時、読み手に物足りなさを残すだろう。
それは、主人公の今までを形作ってきた父親の存在、主人公が授業そっちのけで気掛かりになっている父親の存在、そして、この話でクライマックスの遠因となる父親の存在が、結局、謎を撒くだけ撒いてひとつも謎を回収せずに幕引きを迎えてしまったからだ。
たとえ壮大な物語の一部だとしても、この物語だけで完結と銘打つならば、父親のことについても何らかの解決、父親について悩まされる主人公の苦悶を追った読み手が納得できる答えを提示した方が良かったのではないだろうか。何のために主人公の心情を丁寧にえがいたのか、それが、せっかくワクワクドキドキできる描写でえがかれていただけに、もったいなく感じる。
とはいえ、読み手をアツくする技量の巧みな作家だと思う。使い魔のエール、その言葉の強さは心に響く。
謎解きもこじつけや無茶、ゴリ押しではなく、論理と理論で展開され、なるほどと頷ける説得力がある。
アツい、普通の戦闘とは一味違ったバトルを求める方は一読して損はないだろう。