高度に集積されSFロマンとなった「あるある」

「2115年に開設されたゲームレビューサイトの文章」という設定で書きだされたこの小説とも批評とも精神病患者の戯言とも言い切れないこの・・・これ・・・えーと・・・なんだろう・・・このなんかはゲーマーならニヤリとする「あるある」ネタがこれでもかと盛り込まれている。
さらにその「あるある」は「あるある」を積み重ねていくことで「あるあるネタ」にとどまらず、現代批評となり未来予測となり、ついにはSFロマン大作を生むに至ったのである。
第二話「Acacia」は未来のゲーム用アンドロイドを題材に「オタクのスケベ心」、「拡散するネットミーム」などの「あるある」ネタに爆笑するが、やがて主題は「進み過ぎたテクノロジーの悲哀」であることに気付かされる。
これは「あるある」ネタが作者の長年ゲーマーとしてゲームを愛し、積極的に活動を行ってきた(具体的に言うとフィリピンパブのカラオケでチューリップを歌いチンピラを打ち負かしたり、自分でゲーム福袋を作り自分でそれを開封しあまつさえそれを配信する等)経験による圧倒的なリアリティに裏打ちされているに他ならない。
全てのゲーマーに、いや、ゲームをやらない人にも全力でオススメできる圧倒的にすごいなんかそのよくわからないなにかだ。

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