概要
待って、待ってくれ、俺の話を聞いてくれ
二十九歳にしてフリーター、自称売れないマジシャンの林明雄は、ある日トラック事故をきっかけに超能力を手に入れるが──
おすすめレビュー
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- ★★ Very Good!!魔術に取り憑かれた男の最期。
まず特筆すべきは徹底した一人称小説であること。マジシャンを目指す「俺」の独白体小説であり、場面の仔細な描写に多くの文が割かれていることによって、思わず作品の世界へ没入させられてしまう。そして一人称小説はまた、交通事故で死にかけるも奇跡的に生還して特殊能力を身につけるという今やベタベタのベタに成り下がった舞台装置との相性も大変いい。
読者は自然に、特殊能力で「俺」がいい目を見るのだなと想像するだろうが、この物語における「俺」はまったく幸せになれていないということもまた印象的であろう。そして読後に残ったもっとも強い印象もまたここにあるのだ。自分に与えられた魔術に気付く前の「俺」がバイト先の店…続きを読む