後編
僕達の教室に戻って来た時には、既にクラスメートは誰も残っていなかった。
桐野と話している内に、帰りのホームルームも終わってしまっていたらしい。
「…………」
つい先日、席替えが行われたばかりの机の上を見れば、ホームルームで配られたのだろうプリントの類が置かれており、前の黒板にはデカデカと『桐野と西条は職員室に来るように』と、担任の藤村良明(34歳新婚)からのメッセージが残されていた。
どうやら、教室に戻ってくることは予想されていたようだ。
さて、どうして僕達が教室に戻ってきたかというと。
「日々の生活を見返すことで、改めて悩みを再発見出来るかも知れん」
などと桐野が言い出したせいである。
そんな自分探しもどき、一人でやってくれと言いたいところだけど、一度協力すると言ってしまった手前、放っておくことも出来ない。
放っておいたら、また盛大に振り回される恐れもある。
ドカッと、窓際最後尾の自分の席に腰を下ろす桐野を尻目に、机の上に積まれたプリントの類を鞄に仕舞おうとして。
「ん?」
ハラリと、机の上から何かが落ちた。
「……手紙?」
宛先も、差出し人の名前も書かれていない、白い無地の封筒に。
切手が貼られている訳でもないので、一見して、それが手紙だと判断出来る要素はないのだけど。
しかし、僕にはそれが手紙だということがハッキリ分かる。
何故なら。
「ふむ、いわゆる女生徒からの恋文という奴だな。なかなかの名文だ。相手に対し、いかに劣情を催しているのかが、的確に表現されている」
桐野が、その中身を堂々と読み上げたからだった。
「最悪だな! お前、最悪だな!」
「何が最悪だ。どうせ俺に送られて来た恋文なのだから。俺がどうしようと勝手だろうが」
宛名が書いてあるわけでもないのに、よくもまあ、そんなに自信満々に言えるものだ。僕の机の上に置かれていたのだから、僕宛てという可能性だってあるじゃないか。
「まさか貴様、自分宛の恋文だったのではないかと思っているのか?」
「……その可能性も無くはないだろ」
「確かに、可能性は無くはないな」
桐野は、納得したように頷く。
「だが、つい先日席替えが行われ、俺と貴様の席の位置は、見事に入れ替わることとなった。このことを知らない他クラスの女生徒が、俺達の机を間違えて恋文を忍ばせたという可能性の方がよっぽど高いと俺は考えるのだが、貴様の言う、無くはない可能性とやらを聞かせてもらおうか」
「200%完璧に同意するよ。それは桐野宛の恋文だ。変な事言って悪かったよ」
面倒くさいことになりそうなので、さっさと白旗を上げておく。
それに、先程読み上げられた文面から考えても、僕宛ての手紙、ということは考えづらい。
「しかし……ふむ、手紙か。よし西条、良いことを思い付いたぞ」
「僕にとって悪いことじゃないのを切実に願うけど、一体何を思い付いたの?」
「この手紙の差出し人を探してみようと思う」
「……へ?」
桐野は、手の中の白い封筒を弄びながら、笑みを浮かべる。
「この手紙の差出し人は、恐らく散々に悩みを重ね、悩みに悩み、悩み抜いた末の思いの丈をこの手紙に綴ったのだろう。それは文章の揺れ動き方からも良く分かる。そうでも無ければ、これほどの文章は生まれまい」
「君は、そんな大切な手紙を、あっさりと読み上げたけどね」
「これほどの悩みを抱えた人物なら興味がある。ひょっとしたら、貴様とは違い、俺の求める悩みを教えてくれるかも知れない……よし、決まったぞ西条、俺はこの手紙の差出し人を探し出すぞ!」
「探し出すって……えっと、それはつまり、特別教室棟に、行くってことでいいの?」
「特別教室棟? 特別教室棟とは何だ?」
桐野は、訝るように僕を見下ろして来るが、何故そんな顔をされなければいけないのか分からない。
「何だ、じゃなくてさ。君が読み上げた手紙に書いてあったじゃないか。『15時に特別教室棟の裏で待ってます』ってさ」
「そうか。世の中は完璧な俺を中心に上手く回っているのだな」
「別にどっちでもいいけどさ。行くのなら早めに行っておいた方が良いんじゃない? もうあんまり時間ないよ?」
桐野の、普段通り過ぎる反応に呆れながら教室の時計を見れば、現在時刻は14時45分。約束の時間までは、あと15分ほどしかない。
ここから特別教室棟までは、数分もかからずに到着出来るとは言え、早めに行っておいた方が良いだろう。
「うむ、そうだな。それでは西条、行くぞ!」
「……へ?」
突然、目の前に差し出された手。
桐野の大きな手に、思わず戸惑いの視線を向ける。
「え、何この手?」
「何、とは何だ?」
「ひょっとして、一緒に行くぞ、とかそういうことを言うつもり?」
「無論だ。貴様は、俺の悩みを探すことに協力すると言ったではないか」
「いや、確かに言ったけどさ。あの、流石に時と場合を考えた方が良いんじゃない?」
だって君、今から恋文を差し出された相手に会いに行くんだよね。
その場に、僕が同席するというのは、流石にちょっとどうかと思いますよ。
「ははん貴様、この恋文の差出し人の心情を慮って、自分は席を外そうと考えているのだな」
「うん。良かった、きちんと話が通じているようで安心したよ」
良かった。本当に良かった。
「心配いらん。いくら相手が俺に対して劣情を催したとはいえ、その場で同衾に及ぶということはない。だから、貴様も同席しても何の問題もない」
「全く分かってなかった!?」
まさか、あらゆる過程を通り過ぎて、そんな最終局面的な心配をしているとは思わなかった。
というか、その場でなかったら、ことを致すつもりなのか。
「……分かった。僕も付いて行くよ。何だか、相手の事が心配になってきたからさ」
「うむそうか。では行くか」
「うん」
意気揚々と歩き出す桐野の後ろに付いて、トボトボと歩き出す。
段々と、自分が何をしようとしているのか分からなくなって来てはいるが、ここまで来たら、ひとまず流れに身を任せるしかない。
桐野清十郎という、絶望的に大きな流れに。
かくして僕は、特別教室棟裏の生け垣に身を隠し、桐野と、手紙の差出し人の密会を、こっそりと観察する羽目になっているのである。
「相手は……まだ来ていないみたいだな」
待ち合わせの時間である15時まで、あと5分ほどある。
どうやら、僕達の方が早く着いてしまったようだ。
桐野は僕にも同席するよう告げて来たが、流石にそれは断って、特別教室棟を囲っている、生け垣の中に隠れることにした。
それだって、随分と罪悪感に苛まれる事態ではある。
何しろ、手紙の主は、必死の想いを込めてあの手紙を書いたに違いないのだ。
そんな想いを、こんな風に茶化すようなことをしてしまって良いのだろうか。
いや、良い筈がない。
「良い機会だ。この機会に、いい加減、桐野にも大人しくなって貰おう……」
桐野清十郎には今、交際している女生徒はいない。
それは、決して桐野自身がモテないという訳ではなく。
むしろ、モテにモテた結果と言った方が正しいだろう。
入学してからの半年間、完璧な外見を持つ桐野に言い寄ろうとする女生徒は枚挙に暇がなく。しかし、そんな彼女達に対し、桐野はなんとも辛辣な言葉を浴びせて、一人残らず撃退してきたのだ。
しかし、今回は今までとは違う。
何しろ、ほぼ初めて、桐野自身が相手に対して興味を持っているのだ。
上手くいけば、二人の間で交際が始まり。
僕に与えられた『桐野担当』という不名誉なレッテルは剥がされるのだ。
それに、桐野が欲している悩みとやらも、交際が始まってしまえば、望むだけ手に入れることが可能だ。
何しろ、男女関係の問題だ。
泰然自若として偉そうに人間関係を語る桐野だって、自らがその立場に立たされてしまえば、今まで通りではいられまい。
男女関係とは、得てしてそういうものなのだ。
「いやまあ、僕もそんなに詳しくはないんだけど……」
などど、若干自虐めいたことを呟きながら、相手が来るのを今か今かと待つ。
待ち合わせ時間まであと2分ほど。もう、いつ現れてもおかしくない。
「うーん……この位置からだと、声がうまく聞こえないかな? それにいざという時に飛び出すのが遅れるかも知れないし……」
あくまで念の為のこと、決してゲスな考えを持っての行動ではない、と自分を納得させ、生け垣の中を移動しようとした瞬間。
「キャッ!?」
「って、うわ!?」
何かにつまずき、転びそうになる僕の身体。
しかし、何とか体勢を整えようと、左手で生け垣の天辺を掴み、右手を地面に伸ばそうとして。
その右手が何か柔らかいものを掴んだ。
「……!?」
その妙に柔らかい感触に地面を見下ろせば、僕の右手が掴んでいたのは、こちらを見上げている眼鏡の女生徒の制服の一部。
いや、ハッキリ言おう。
それは紛う事なき、女生徒の胸の一部。
いわゆるおっぱいだった。
「――ッ!!」
「待って!!」
叫び声を上げそうになる女生徒の口を塞ぎ、再び生け垣に身を隠す。
チラリと桐野の方を窺えば、誰かが桐野に向けて近付いてきているのが見える。
それこそが恐らく、手紙の差出し人だろう。
今ここで、大きな声が上がってしまえば、緊張して来ている手紙の主の勇気を無碍にしてしまうことになってしまう。
「ムーッ! ムーッ!」
「静かに! 静かに!」
暴れる眼鏡の女生徒を押さえる。
このままでは、桐野達の様子を窺っている余裕はない。
まずは、この女生徒の方を何とかしなければならない。
「少しだけ! 少しだけでいいから静かにして。お願いだから!」
「…………」
眼鏡の女生徒は、僕の意図を察してくれたのか、目を見開いて了解の意を示すと、抑えている僕の手を離すよう、合図を送ってくる。
「あ、ごめん! 苦しかったよね」
僕は、慌てて抑えていた手を離して、女生徒を解放し。
そして。
「こんにちは、私はカンナと申します。早速ですが結婚しましょう」
「え、こ、こんにち…………は?」
結婚しましょう。
それは、まぎれもなく、プロポーズであった。
「え、えーと……それは何かの冗談なのかな? 僕はあんまり詳しくないんだけど、最近はそういうのが流行っているの?」
突然の事態に、思わず混乱してしまうが、こういう事態の対応には慣れている。何しろ、桐野という超弩級な奇人が常に側にいるのだ。
こういう場合は、相手との意思の伝達が問題なく出来ているかを確認するのが先決で。
「そうねですね! 子供は野球チームが出来るぐらいは欲しいですよね!」
「いや、子供とかじゃなくて……えっと、カンナさんはここで何をしているの?」
「やだ。カンナさんだなんて、他人行儀に呼び方をしないで下さい。いつも通り、カンナ、と呼び捨てにして下さいまし」
「えっと、多分初対面だと思うんだけど……まあいいや、カンナは、ここで何をしているの?」
「一人目は女の子。二人目は男の子。三人目と四人目は悩みますが、いっそのこと双子で、男の子と女の子が一人ずつなんてどうなのでしょうか?」
「ダメだ。これは一番ダメな奴だ!」
言葉は通じていながら、しかし意思の疎通が全く取れていないという、考え得る限り最悪のパターン。
通称、パターン:桐野である。
「ところで、あなた。作る時、激しくした方が、女の子が出来る確率が高まるという噂は本当なのでしょうか?」
「って、ちょっと!? 何で服を脱いでるの!?」
「まあ、試してみればすぐに分かるでしょう」
「って、しかもいつの間にか僕の服も脱がされてるし!!」
首筋あたりが、妙にスースーすると思った。
着ていたカーディガンが脱がされ、シャツの第二ボタンまでもが外されている。鎖骨が冷たい外気に当てられる。
いつの間に脱がされていたのか。
考えられるタイミングは一つ、それは彼女の悲鳴を抑える為に口を抑えていた時だ。僕は彼女を抑えるつもりだったけど、実は僕の身体は、彼女の手の上にあったというのか。
「さあ、今すぐ、私と、結婚を前提にしたお付き合いを前提にした性交渉と参りましょう! アナタの知らない世界、見せて差し上げますわよ!」
「ひぃぃぃぃぃ!?」
冗談じゃない。
そんな事、出来る訳がない。
僕は、半ば露わになってしまった上半身を必死に隠しながら、こちらへにじり寄ろうとしてくるカンナから、少しでも距離を取ろうとする。
しかし。
「なっ!?」
僕の制服の裾が、生け垣の一部に引っかかっている。
その場から身動きを取ることが出来ない。
「うぇっへっへ、どこにも逃げられませんことよ?」
「ひぃっ!?」
僕が動けないことを確認したカンナの笑顔が、更に歪む。
それは獲物を前にした肉食獣、いや昆虫のような容貌で。
「全く、手紙が、あの汚らわしい桐野とかいう奴に読まれた時はどうしようかと思いましたけど。おかげで、二人っきりで素敵なアバンチュールを送れるんですもの。感謝しなければなりませんわね」
「手紙……? じゃあ、あの手紙はお前が書いたのか!?」
「勿論ですわ。お慕いしていますのよ、あ・な・た。ベーロベロベロベロ!!!」
「キャッ!? ちょっ、やめて! 気持ち悪い!」
「大丈夫ですわ。すぐに気持ち良くなりますからね」
「そんな問題じゃない。今すぐにやめないと怒るぞ!」
「ふふん。上の口ではそんなこと言って、下の口ではどうかしら? 大丈夫、初めては誰にでもあるものですわ。さあ、私と共に、新たな世界へと旅立ちましょう!!」
「ちょっ!? た、助けて!!」
「ふふーん。こんな場所で叫んでも、誰も助けになんて来ませんのよ!!!」
「助けて!」
「そーれ、ベロベロベロベロベロベロ!!!!」
「助けて、桐野!!」
「呼んだか? 西条」
言葉と同時に、生け垣の中に顔を出したのは、桐野清十郎だった。
「なっ!?」
「桐野!」
「すまん。お楽しみだったようだな」
引っ込んだ。
「ちょっ!? 待って、桐野!」
服を脱がされ、半裸で組み敷かれている僕の姿を目撃しながら、あっさりと姿を消す桐野。おい、それはちょっと酷すぎるんじゃないのか。
「ふん、驚かせやがりまして……さあ、これで邪魔者はいなくなりましたわ! 二人で、永久に崩れることのない、愛の塔を築き上げましょう」
「やーめーてー!!!」
「手紙の差出し人がまだ来ないようだ。暇つぶしに、凡百の民草である貴様に対し、手紙という物について語ってやろう。いいか? そもそも、手紙というものはだな――」
「ッ!?」
再び生け垣に顔を出してきた桐野。
こちらの様子などお構いなしに、またどうでもいい持論を展開し始め。
しかし、そのおかげでカンナに隙が生じた。
流石に、二度も突っ込んでくるとは思っていなかったのだろう。
そりゃそうだ、そんなバカげたこと、普通は思わない。
普段から、そんなバカげたことに付き合わされている、『桐野担当』の僕以外だったら。
「どぅりゃぁぁぁああああ!!!」
こちらに覆い被さって来ているカンナの隙を突いて、下から両腕を掴む。そのまま、お腹に向かって膝蹴りを叩き込み、突き上げるようにして足の裏を当てて。
投げた。
「ああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
体育の授業で先生が見せてくれた華麗な投げとは違う。
巴投げと呼ぶのがはばかられるような、不格好な投げ。
しかし、その不格好な投げは。
見事に、僕に覆い被さっていたカンナを、生け垣の向こう側、特別教室棟の壁へと向けて投げ飛ばし。
僕は、貞操を守ることに、成功したのだった。
「よおおおおおおおおおおおおし!!!」
「つまり、手紙を書くと言う行為は、劣情を昇華させるということであり……おい貴様、聞いているのか?」
多分、この世に生まれてから、一番大きなガッツポーズを上げた僕の横で。
桐野は、普段と全く変わらぬ姿だった。
こいつだけは、本当にもう。
「ふむ。既に時間は15時15分。約束の時間から、15分も過ぎているというのに、手紙の差出し人は、まだ現れないようだな」
「はぁ? こいつだよ、こいつ。この変態が、手紙を送ってきた張本人だよ」
「何、この女生徒が……しかし、気絶しているじゃないか」
「ああ。僕が投げ飛ばしたからな」
当たり所が悪かったのだろう、カンナは完全に気を失っている。
それにも関わらず、瞳の奥にはハートマークが浮かんでいるように見えるのは気のせいだろうか。
気のせいであって欲しい。
「ふむ、変態か。確かに、こんなにビリビリに破れた制服を大切そうに握っているところは、普通とは言えないな。しかも、制服を握った手を、股間付近に持って行ってるところなども、変態ポイントが高い」
「……え?」
気絶しているカンナの姿をもう一度見る。
その手に握られているのは、ビリビリに破れた制服。
というかそれは、紛れもなく僕の制服で。
「ちょっと待って、そこに僕の制服があるということは……」
改めて、自分の姿を見下ろす。
そこにあったのは、白い下着だけに包まれた、限りなく裸に近い姿で。
「なっ、バカッ! 見るな!」
僕は、露わになってしまった下着を両手で隠す。
真っ赤に染まってしまった顔も隠したいが、僕には手が二本しかない。
僕の制服……スカートは、カンナが力一杯に握っており、取ることが出来ない。
上下の下着をそれぞれ隠すだけで手一杯だ。
「? 何を必死になって隠しているんだ? 安心しろ西条。俺が貴様のその貧相な肉体に対して欲情することなどない」
「なっ! もっ、もっと言い方って言うもんがあるだろ! まだ、これから大きくなるんだよ! 色々と!」
ああもう、滅茶苦茶だ。
滅茶苦茶過ぎて、頭がおかしくなりそうだ。
目の前に立つ桐野清十郎すら、真っ直ぐに見ることが出来ない。
「何だ西条、お前は相変わらず訳の分からない奴だな」
と、桐野は、何かを思い付いたように顔を上げる。
「そうだ西条、俺の悩みが決まったぞ」
「……はぁ?」
こんなタイミングで、何を言い出すんだ。
今の僕は、そんな事を話している状況ではないんだ。
時と場合を考えてくれ。
「俺の悩み、それは西条、貴様という存在だ」
「……はぁ?」
しかし、やはり桐野はお構いなしに、いつも通りに持論を語り始める。
「常々疑問に思っていたことなのだが。俺と話す時、何故貴様は自分のことを『僕』などと名乗るのか。俺と歩く時、何故貴様は隣に立たずに数歩後ろを着いて来るのか。俺といる時、何故貴様の心音はそんなにもうるさいのか。俺が貴様以外の女生徒と話す時、何故貴様は殊更不機嫌な様子を見せるのか。そして、俺が貴様の裸を見る時、何故貴様はそんなにも恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうな反応をするのだ?」
「――――ッ!?」
「俺には貴様の考えが理解出来ん。何をしたいのか分からん。しかし、だからこそ知る必要があるのかも知れんな。だから俺は、これからずっと貴様と共にいて、貴様の謎を解き明かしていこうと思う。勿論、問題はないな?」
「こ……」
顔から火が出んばかりに、赤く染まる。
恥ずかし過ぎて、まともに立っている事すら出来ない。
腰から崩れそうになってしまう。
だから。
「こ、こ……」
「こ? そうか。今生を賭して、俺の協力をしてくれると言うのだな。良いだろう、良いだろう。ならば、貴様には、生涯変わることなく、俺の傍に居続ける権利を与えてやろうじゃないか」
「この、バカーーーッ!!」
思わず、涙がこぼれ落ちそうになるのを耐えながら。
僕、
桐野清十郎の脛を、思いっきり蹴飛ばしてやったのだった。
おわり
桐野清十郎は、ほのかに悩みを抱えている。 更伊俊介(個人用) @sarai_shunsuke
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