言葉の意味はいかにして決まるのか。「言葉を使う人によってさまざまだ」という考えもあるが、それではコミュニケーションが破綻する。井の中の蛙的な言語使用では相手に伝わらない。
この話は「よく分からないヤツから絡まれている」という印象が強いです。でも、理由があってこそ変な人という結果なんだろうと察しがつきます。ただ彼の目線で見ると、彼女は同情の余地がない奇妙な人で、「風と木は似ている」の意図もキャンディーの思い入れも意味がわからないのです。
いや、ちゃんと意味はあるのです。でも、なにも知らない人は「どういうこと?」と聞く優しさを持っていません。
彼女には友達になってくれる味方がいたはずなのに、どうしてこんな結末を辿ってしまったのだろう。この物語には、わからないことが多すぎる。
十時楓の手を、五十嵐晴は払い除けた。
彼は、嘘が嫌いだった。
彼女から嘘の匂いを嗅ぎ取った彼がそのような行動に出るのは、不機嫌だったのも相まって、ある意味必然だったのかもしれない。
何故彼は嘘をそれほど嫌悪しているのだろうか。
嘘を纏った彼女を介して、何を見出したのだろうか。
彼女の心の深くに侵入した彼は、あの行動を後悔していた。
謝罪に彼が彼女に差し出したのは、ストロベリーポップキャンディー。
それは、彼女の心に寄り添ったものだった。
言葉巧みに場面を形創っているので、その様子を容易に想像できる。
また自然描写と登場人物の繊細な心理を上手く結んでいるので、物語に没入できるだろう。
ぜひ読んでみては如何だろうか。