第61話 無垢

ヘイデンの森の天使は若く美しく善良な上、無垢なる存在でもあった。


その天使を捕らえてやろう、女盗賊のジャニスは手下を引き連れ森へと入った。


ところが森には醜悪な悪鬼どもがいて、手下たちはたちまち食われてしまった。


そこに天使が現れた。

悪鬼どもは悔しげにキイキイ鳴くと逃げていった。


「お陰で助かった。礼を言うよ」


ジャニスは天使に短剣を突きつけた。


「でもね、この世界は食うか食われるかなのさ」


「そうね。そのとおりよ」


天使はジャニスに襲いかかると、彼女から若さ美しさ善良さを残らず剥ぎ取った。


「でもこれをすると悪いカルマが溜まるの」


天使は真っ黒な汚泥を吐いてジャニスの上からボタボタと浴びせた。


その罪業の深さに、ジャニスはもはやヒトではいられなくなる。

それで彼女はキイキイ鳴いて逃げだした。



世界には光もあれば闇もある。


ヘイデンの天使は若く美しく善良な上、一点の罪もない無垢なる存在だった。


いつまでも、いつまでも。

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ひぐまカクテル ひぐまびっち @higumabich

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