第5話「二人の仲」
「はぁ……テスト」
そう言うのは優也。
「優也、ちゃんと勉強してるの?」
「ああ……全くと言っていいほどやってねぇ」
「……テスト?」
今日は3人で登校。
流石に、渉先輩と登校するのはいろいろと怪しまれそうで避けたかったけど、そうもいかなかった。
(渉先輩より早く家を出た筈なんだけどなぁ)
いつの間にか着いてきているとは。
「テストはテストだろ。あー、マジでめんどくせぇ!」
「そうだ、渉先輩教えて下さい」
「いいよ」
元々昨日は、勉強を教えてもらうつもりで着いていったんだ。
なのにあんなことになって、結局教えて貰えなかったし。
「じゃあ、今日の放課後に、家で」
「おう!」
「ねぇ、早海さん!あのイケメンの転校生と知り合いなの!?」
教室に着くなり、クラスの女の子が尋ねてきた。
(ああ、やっぱり)
「ちょ、ちょっと道案内をしただけだよ。あはは……」
「なーんだ。絶対、何かあると思ったんだけどなぁ〜」
(ひとまずはよし、と)
明日から気をつけないといけないかもしれない。
(変な噂を立てられちゃ困るし。あ、そうだ)
「優也っ」
小声で前の席の優也に話しかける。
「あ?」
「渉くんのことは誰にも言わないでよ?」
「渉のこと?」
「だーかーら、
「あー、それか。分かったよ。てかさ、別にその位知られても良くね?」
「いやいや、良くないって!変な噂になったら困るでしょ!?」
「ふーん」
(とりあえず、友達になろう。そうすれば噂されなくても済むかも。元々、友達になるつもりだったしね!)
そして放課後、私と優也と渉先輩の3人で帰る。
「そういえば、渉の着てるのって制服なのか?」
優也が言った。
(ちゃっかり呼び捨てだし)
確かに、明るい茶色のチェックベストに焦げ茶のズボン、首元にはループタイをしている。
どこか、私たちの着る洋風な制服とはまた違う、洋風さが出ている。
「まだ新しい制服出来てないから。これは、あっちでよく着てたやつ」
「そっか。何か似合ってるな、それ。多分俺が着たらダサいだろうけど」
そう言われて、つい想像してしまう。
(うわぁ、確かに似合わなそう)
「あ、今想像しただろ!」
「してない、してない。絶対似合わないとか思ってないから」
「そう言われるとなんかムカつくな」
「だって、優也はそんなキチッとした格好より、カジュアル系でしょ」
「良く分かってるじゃねーか」
「まぁ、それなりに長い付き合いだしね」
「本当、腐れ縁だよな〜」
「この縁を断ち切りたいところだけど」
小学校に上がって、優也が引っ越してきて、それからずっと一緒にいる気がする。
長すぎるくらいに。
「なんだよ、お前は俺と離れたいわけ?」
「ずっと一緒にいるじゃない。もうそろそろいいでしょ」
「うわ、酷い」
「なんなの?優也は私と離れたくないの?」
冗談半分で聞いてみる。
「べ、別に……。ってああ!」
急に優也が大声を上げた。
「どうしたのよ」
「今日は帰っても誰もいないんだった。ってことで、今日も夕飯食いに行くわ」
(それなら……)
「今日は家も誰もいないよ。だから、私の料理だけど良いの?」
「良いよ、別に。お前料理得意じゃん」
「二人とも、仲いい」
それまで黙っていた渉先輩が、急に喋り出した。
「まぁな!」
(誇らしげに言うことでもないと思うんだけど)
「羨ましいよ。僕にはそういう人がいないから」
「これから、私がそういう人になるよ」
自然と言葉がこぼれる。
「私がじゃなくて、私達だろ。俺を外すな」
「そうだね」
「……優しいね、二人は」
1日違いの私達の恋の仕方。 冬野千代 @tiyo_422
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