1日違いの私達の恋の仕方。

冬野千代

第1話「草むらから転校生」

4月1日と4月2日。

たった1日の違いが、とても大きいのです。

何故って、それは______「学年の境目」だから。



「朱音、置いてくぞ!」

「先行ってて!」

私は、幼馴染である須藤優也にそう言いつつ、急いで制服に着替える。

どうしてそんなに急ぐのか。

時計はもう遅刻10分前の状態だからだ。

高校へ入学してもう2か月になる。

(昨日、徹夜してまで本を読むんじゃなかった……!)

そう後悔してももう遅い。

制服に着替え、家を出るころにはもう優也はいなかった。

(まあ、自分が「先行ってて!」って言ったんだけど)

つくづく自分に後悔する。

「って、そんな場合じゃない!」

私は、髪を乱しながらも通学路を駆け抜けた。

すると、草むらの中からもそもそと人が出てきた。

「……あ!あの、もしかして”春ヶ咲高校”の生徒さんですか?」

おっとりとした口調で尋ねられた。

「えっ?あ、はい……そうですけど」

走っていると、突然私と同い年くらいの男の子が現れた。

(でもうちの高校の制服ではなし、もしかして転校生……?)

それにしても、一番の驚きは、草むらから出てきたことだ。

くるくるとした髪に葉っぱが絡みついている。

「あの、案内してもらえます?」

日本人離れした綺麗な顔立ちに、目が離せない。

「は、はい!……あの、髪に葉っぱついてます」

「あ、本当だ。教えてくれてありがとう」

ふわっと笑った。

その表情に、すこしドキッとした。



遅刻寸前だということも忘れて、私は彼を学校まで徒歩で案内した。

「あの、うちの学校に何か用があるんですか?」

「”転校生”って扱いになるのかな」

(やっぱり、転校生なんだ……)

「じゃあ、学年は?」

「何年生かな?僕、ずっと海外に住んでたから。あっちではもう大学に入学できるって教えられた」

「!?」

(俗にいう、”飛び級”というやつ?)

「でも、両親が、『同年代の子たちと学校生活を送りなさい』ってさ」

「歳は……」

「16歳だよ」

(1年……?いや、2年生……?)

「じゃあ、まだ誕生日来てないの?」

「ううん、4月1日で16歳になったんだよ」

(とういうことは、1年生!?)

本当に同い年なんだと確信すると、なんだか安心する。

(先輩だったらどうしようかと思った)

「同い年なんだね。これからよろしくね」

「うん」

そんなことを話しているうちに、学校に着いた。

彼を職員室に送ると、そのまま教室に向かう。

(あ、名前聞くの忘れた)

教室は随分とそわそわしていた。

もうHRは終わっていたみたいだ。

「おい朱音、お前遅刻にしては遅すぎるだろ。何してたんだよ」

前の席の優也が、荒い口調で言う。

「ちょっと道案内をしてて」

「道案内?」

「今日からうちに来る”転校生”らしいよ。同い年みたいだし、私達のクラスにくるといいなあ」

「はぁ……」

なんでか優也はため息をついた。

「ん?」

「そいつ、1年じゃなくて”2年”だから」

「え?」

「HRで担任が言っていた。同い年って、まだ誕生日が来てないだけなんじゃねーの?」

確かに彼は「4月1日で16歳になったんだよ」って言っていた。

(どういうこと?)

「……」

一瞬頭が混乱する。

「お前、そんなにそいつと一緒の学年とかクラスがよかったわけ?」

「そ、そういうわけじゃ……ないけど」

(え、え?4月1日誕生日の人って、学年が一つ上なの?)


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