第4話ちわわおばあちゃんとリーその3
ピンポーン
呼び鈴が鳴ったので、寝ようか迷っていたリーが、ドアを開けて見ると、そこにいたのは明後日に帰ってくるはずの両親だった。
「えっ? どうして?」
「お金がもったいないからキャンセルして戻ってきた。とりあえず、メシだ」
「もしもし、ちわわおばあちゃん!僕、明日は、両親が帰ってきたので、ちわわブックスに行けなくなりました。明後日も親を連れていけるかわかりません」
「わかった! 明後日はこちらから、そっちに行くから今夜はぐっすり寝るんだよ」
「はい! わかりました。お休みなさい」
▽
ちわわおばあちゃんは、水晶玉の掛け布を取り、水晶玉に向かって話しかける。
「カナいるかい? 私、イルザだよ」
「イルザかい。久しいね。元気かな?」
「私は元気だよ。早速だが、明後日の夜7時は時間取れるかい?」
「ああ、大丈夫だよ。何かな?」
「ジェイド街にあるラルフ・スイートと言う家に行って、そこの家族を私の家に連れてきて欲しいんだ。父親と母親が偏屈らしいから、ちょっとした魔法も使ってもいいかも。よろしく頼むよ」
「魔法を使っていいなら簡単だよ。明後日、夜7時だね」
「じゃあ、また」
「明後日な」
ちわわおばあちゃんは、会話を終えるとまた水晶玉に掛け布をかけた。
▽
ピンポーン
白くて長い白髪を頭の後ろで縛った80才くらいのカナ・ホワイトは、スイート家のプッシュホンを押す。
「はい、どなた?」
「カナ・ホワイトと言う占い師です」
「ああ、占ってから水晶玉とか売りつけ輩か? 帰ったー
カナがインターフォンに向かってくるりと手を回すと魔法がかかった。
ーーん?どうぞ入って」
ガチャリと鍵が回ってからドアが内側に開く。カナはゆっくりエントランスに足を踏み入れた。そばに中年の女性がいる。
「ヤヤ、誰か来たのか?」
中央の階段を昇った先の手すりから、クシャクシャの巻き毛の年配の男性が声をかけた。
「あなた、占い師のカナ・ホワイトさんって方ですのよ。占ってもらいましょうよ」
ドタドタ……
男性は、手すりから手をはなし、階段を勢いよく降りてくる。その時、2Fの左手のドアが開いて、リーが顔を出した。
カナ・ホワイトは、右手を大きく回す。そして、ブーツについた滑車を、鳴らした。そのとたん、両親たちは、なんだか夢心地のようになった。
「これでよし、両親たちには、魔法をかけた。おーい! 君はリーくんだね。両親たちに命令してみてごらん」
リーは、階段を降りてきて、まず父親に「座れ」と命令する。父親は言われた通り、床に座った。
「出来たね。じゃあ、移動するから、私の耳にお入り! ん? 不思議そうだね? 私の耳はね、手を耳もとに伸ばすとその人間を異空間に送ることができるんだよ。試しに父親にそう命令してみな」
「ほんと、大丈夫ですよね?」
「大丈夫! なんたって私は、異名が時渡りの魔女だからね」
リーが、父親に命令すると、父親の身体はするすると、魔女の耳に吸い込まれていく。魔女にうながされるまま、母親にも命令して吸い込まれたあとにはリーだけが残った。
「リーくん、怖いんだね。魔法は怖い部分もあるけど、だいたい安全だよ。簡単、私の耳に手を伸ばすだけだからやってごらん」
「はい、じゃあ、やってみます」
リーは、魔女の耳に手を伸ばす。
カフェと本の店、ちわわブックス まよなかちわわ @karaage22
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