第2話ちわわおばあちゃんとリー


「夕ご飯はからあげにするけど、好きかい?」

「好きです。大好物です! 手伝いましょうか?」

「カフェとここの借家のキッチン最新式なんだよ。ボタン押すだけで、何でもできちゃうんだ。カウンターの椅子に腰かけておくれ」


少年は、ちわわおばあちゃんがいるキッチンが見える対面カウンターの椅子に腰を下ろす。


「そうなんですね 。僕は……名前紹介してなかったですね。リー・ステップホイッパーと言います」

「私は、チワワを飼ってるから、ここいらじゃ、ちわわおばあちゃんで通ってるけど、本名はイルザ・シードと言うよ。ところで、追いかけて悪かったね。なぜ万引きするか知りたくてね。なぜだね?」


「僕は...... 」


「あっ、もしかしたら、リーくんは、孤児なのかな? それか養子」

「養子です。実の両親は亡くなり、孤児院に引き取られ、5歳で今の両親の養子になりました」

「今、何歳だね?」


キッチンのボタンをあちこち押し終わったちわわおばあちゃんは、僕の眼をまっすぐ見る。


「12歳です。実は今の両親に10歳の頃から万引きを強要させられているんです。両親いわく自分の食い扶持は自分で稼いでこいってことで。両親はお金もちなんですが、ケチで、世間向けに孤児院には、多額の寄付をしてますが、僕は、ろくすっぽご飯も食べさせてもらえません」

「そうか、困ったもんだね。ちょいと私が一晩いいアイデアがないか考えとくから明日の朝また来れるかい?」

「はい、大丈夫です。今、両親は旅行中で明後日帰ってきます」


リーン!と音がして、ちわわおばあちゃんがボタンを押すと、ジュージューしたからあげが出来上がっていた。


「手を洗っておいで! カウンターに並べとくからね」



リーが、トイレから戻った時、カウンターにはからあげ、サラダ、焼きたてのパン、マグカップに入ったスープが並んでいた。


「おいしそう!」


ちわわおばあちゃんもカウンターに椅子を運んできて、二人並んで座る。

 

「さあ、食べよう」

「はい! いただきます!」

「いただきます」


リーとちわわおばあちゃんは、しばらく無言で食べつづけている。 


リーは、マグカップのスープを飲んでから口を開く。


「ちわわおばあちゃんは、スポーツやってるんですか?」

「今はチワワの散歩だけだね。若い時はバスケをやってたよ」

「ちわわおばあちゃんに追いつかれてびっくりしました。いつも、万引きして逃げきってたので!」

「こらこら、万引きはもうしないことだよ。不良の入り口だからね」

「はい、わかりました。このからあげたくさんありますね? 朝ご飯用にいただきたいのですが!」

「いいよ、残ったら、持っておいき」


リーは、ちわわおばあちゃんと山盛りあった食べ物をたらふく平らげた。残った食べ物は、テキパキとちわわおばあちゃんがタッパーにつめて冷蔵庫にしまわれた。そして、タッパーを忘れるな!のメモをチワワのクリップにはさむ。


「これで、よし!あとは、メリーの散歩だけだね。リーくん、チワワのメリーの散歩につきあうかね?」

「はい! ご一緒します。メリーちゃんはどこ? 」

「私の寝室にあるサークルにいるよ。ちなみに、メリーはオスで3歳のやんちゃざかりだよ。散歩紐はリーくんにまかそう。では、連れてくる」


ちわわおばあちゃんは、寝室の方へ歩いて行く。


ガチャ


寝室のドアを開いて、ちわわおばあちゃんは、中に入った。


ガチャ


しばらくして、ちわわおばあちゃんと散歩紐つけた小さな白いショートコートチワワのメリーが、あらわれた。


「かわいい!」

「ありがとう!よく言われるよ。さあ、行こう」


ちわわおばあちゃんは、散歩紐の持ち手をリーに渡した。















 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る