数多の記憶によって紡がれる一人の少女の誕生物語

 人間と機械の記憶を永久に残すプロジェクト2569プロジェクト。
 そのナビゲーターのあまたちゃんに導かれて、読者は様々な人の記憶を垣間見ていきます。
 サイエンスフィクションらしく、その記憶にはさまざまな近未来の技術が絡んでくるのですが――。じつは、この記憶が後編の2569 Coreこと、プロジェクトの核心となる部分に繋がってくるのです。

 ここからは、読んでいただいてのお楽しみなんですが、作者さんの構成力のすばらしさに思わず、おぉ、と、私はうなってしまいました。
 とくに後編の怒涛の展開は、SF抜きにして、熱く、読み手の心を躍らせてくれます。

 また、短編部分についても、よく練られたヒューマンドラマで、ショートショートしてかなり完成度が高いです。
 人によっては泣くんではないでしょうか。
 特に8-A「私は猫だった」については、筆者さんの猫を飼われている経験から書かれたものだからでしょうか、とてもユニークな名作に仕上がっています。

 はたして2569プロジェクトとはなんなのか。
 ぜひ、この作品を読んで、その記憶に触れてみてください。
 おすすめです。

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