第79話  エピローグ 3

 事務所にコーヒーの香りが漂ってくる。

 長い黒髪、ほっそりとした体、ピンクのエプロンが堪らなく愛らしい。


「あぁー、幸せだなぁーボクはぁー」

 コーヒーを作っている浅上さんの後ろ姿を見ながらしみじみと感じる。

 

「……所長、目つきが大変よろしくないです」

 五十嵐さんに言われた。

「おっと、よろしくありませんでしたか?」


「ええ。通報されてもおかしくないかと」

「そうですか、ああ、それはちょっと注意しなければいけませんねぇ」

「そもそも高校生をここで働かせる事は……どうなんでしょうか? それもよろしくないのでは?」

「いやいや、それはよろしいですよ。なんせ彼女はフィアンセですから! 将来を誓い合ってるのですよ!」

「フィアンセって言い方、古いですね……」

「え! 古いですか?」

「高校生に手を出すのも、よろしくないのでは?」

「愛に年齢は関係ありません!」

 僕は主張した。


「青少年育成条例などに引っ掛かるのでは?」

「……う、いや。愛があれば……結婚を前提にニャフニャフすれば」


「ニャフニャフて何ですか、イヤらしい」

 五十嵐さんがゴミを見るような目で僕を見る。

 うん、なかなか悪くない。

 浅上さんにもこんな目で見てもらいたい。

 ……いや待て。あまり変なことを考えすぎてもいけない。浅上さんは普段ぽやっとしてるが、変なところで鋭い。

 呆れられないよう真面目に仕事をして、カッコいい所を見せなくては!

 

「ところで五十嵐さん! 今日の予定は?」

「……二件ありますよ、ご存じでしょう?」


 確かに知っていた。

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浅上夜子の恣意的な日常 ユーアート @yuato

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