夜空を泳ぐ鯨。これが何と言っても素晴らしい幻想を描いています。突然やって来た親子の別れは、確かに悲し過ぎるものでした。しかし、最後まで読むと不思議と心が安らぎ、決して悲しいだけの物語ではないという事がわかりました。魂をお迎えする鯨。出会うには少し複雑な気持ちになりますが、一度は目にしてみたいです。
昔、溺れかかった人間の子供を鯨が助けた話を読んだ。漁師の子供で、仕事を覚える為に海に出て船から落ちたらしい。鯨はその子供を背中に乗せて水面まで浮上し、奇跡的にも生還できた。実話である。 本作での子供はああした展開になった。起きたことは起きたで逆戻りはない。ないが、今頃は鯨の背中に乗せてもらったところだろうか。
電車の中で何気なく読んでいたのですが、悲しくも優しい結末に涙をこらえました。十五夜の夜、月明かりを浴びて泳ぐ美しい鯨。その情景が心に沁みます。
悲しみと救い、希望を詰め合わせた素晴らしい作品です。読めば、幻想的な夜にあなたを誘ってくれるでしょう。