ヒマワリのタネ
ニヤノネネ
第1話
「た・・・助けて」
0時近くに苦手な友人ユリコから電話がきた。
私は何を思ったのか、すぐにユリコのアパートを目指して自転車を漕ぎ出した。
自転車で走りながら、何度もなぜユリコの元に向かっているのかを考えていた。
自転車を漕いでるうちにユリコのアパートに着いてしまった。
重たい足取りで二階のユリコの部屋へ向かっていく。
部屋の前についたが、扉の前で身体が止まってしまった。
『私が彼女を助ける理由なんてないのに』
この一言が今にも口から出そうだった。
ドアノブを握ってみた。
鍵が開いていた、ゆっくりと扉を開けた。
「ユリチャン・・・」
ユリコが泣きじゃくりながら、飛んできた。
「リナチャン、どうしよう・・・マサルが・・・」
私が部屋に入るとぐったりと横たわっている幼い子供がいた。
子供に私はそっと近づいた。
青白い顔をしている。
私はすぐに救急車に電話をした。
「あの・・・子供が青白い顔していて・・・あの・・・救急車をお願いします」
動転して言葉が上手く出てこなかった。
ひたすら泣きじゃくるユリコ。
部屋の角で胡座をかいて座っているユリコの旦那のノリアキ。
私は何も聞かなかった。
いや、聞かなくても分かっていたのだ。
いつかこんな日が訪れることを。
私はゆっくり口を開いた。
「どうする?警察も呼ぶ?」
ユリコは泣きじゃくりながら大きな声で
「警察呼んだら私たち捕まるよね!どうしたらいいの?私ヤダ、ねぇどうしたらいいの?」
パニックになるユリコをよそ目にノリアキは態度を変えることがなかった。
「警察呼ぶの!?」
私は声を荒げるようにユリコたちに問いただした。
ユリコは首をゆっくり縦に頷いた。
私は警察に電話を入れる。
ユリコは泣くのを止め、見ている私が怖いほどに落ち着きだしていた。
それはまるで全てを終えたかのように見えた。
「あの、友人夫婦が子供を虐待したみたいで、子供に意識がなくて、先ほど救急車を呼んで、いま救急車を待っていて、事件だと思ったので警察の方も連絡を入れました。」
さっきとは打って変わって、淡々と対応が出来ていた。
「いまから、向かうって・・・」
ユリコに反応はなかった。
ノリアキの態度が変わることはない。
私は心の中で
『元々、そういう人だよね。あなたは。』
と皮肉を思った瞬間、救急車のサイレンが近づいてくるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます