第3話
4年前に障害者施設で私とユリコは出会った。
私は、幼少期の男子からのいじめと家庭不和で心を病んでいき、男性恐怖と対人恐怖からひきこもり生活を長年していた。
『人と関わるなんて馬鹿馬鹿しい。』
ずっとそう思っていた。
母が知り合いから新しく障害者施設を作った人がいると聞いた。
「リナ、行ってみたら。楽しいかもよ。」
楽しいことなど考えたことがなかった。
「楽しいかぁ…楽しいね…」
きっとあの時私の心のどこかに自分を変えてみたいと微かな希望があったのかもしれない。
「通ってみてもいいかな。」
一人の外出なんてほとんどしたことがなかった。
他人と話さなければいけない。
でも、私にとって微かな希望は大きな夢に変わっていったのだった。
変えたい変わりたいの気持ちが日に日に強くなっていく。
開所日、私は前日に一睡も出来なかった。
『怖いなぁ、あ〜ヤダなぁ。』
キョロキョロと周りを見渡しては深いため息をつくばかりだった。
「初めまして、えっと〜リナちゃん。」
私に挨拶をしてきた女の人、ユリコだった。
「はっ、初めまして。」
私は緊張のあまりこれ以上の言葉を発することができなかった。
「よろしくね〜。」
ユリコはニコニコと笑いかけながら、私の隣に座った。
初対面なのに自分の病気のこと、離婚をして一人息子と離れて暮らしていることを話してきたユリコ。
同じ病気の仲間だと思って話せたのだろうと私思った。
私は返答を返すことだけが必死でうまく話をすることは出来なかった。
『もしかしたら、この人と仲良くなれたら私、少し変われるかも』
そんな淡い期待を抱き私はユリコに笑みを浮かべたのだった。
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