登場人物紹介(3) や行~わ行(大量のネタバレありversion)

『続・ここは安全地帯』の登場人物紹介(※昇順)です。

 ※名前の記載がない人物は、作中の呼び名の欄に記載があります。

  今回も大量のネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。


【や行】

●八窪 鈴恵(やくぼ すずえ)

 八窪卓蔵の妻。八窪真理恵の母。

 旧姓・灘鈴恵(なだすずえ)。6年前の事件以前にすでに故人となっていた。

 楚々とした美人でいかにも箱入り娘といった感じで、口数少なく、三歩下がって夫に従い、少し世間知らずなところもあった鈴恵と夫の卓蔵との結婚生活は、ゆるやかな川を船に乗って流れているようなものであった。

 結婚から1年半後に鈴恵は妊娠し、真理恵が生まれた。もともと病弱であった鈴恵は、真理恵が3才になって1か月後に風邪をこじらせ、肺炎によりあっけなくこの世を去った。

 由真は毎日、彼女の遺影に向かって、彼女の娘ではなく、愛人の娘である自分が助かったことを謝っていた。


●八窪 卓蔵(やくぼ たくぞう)

 八窪鈴恵の夫。八窪真理恵と八窪由真の父親。4人兄弟の長男。

 事件当時、当時55才で、現在61才。身長171cm。

 「Y市連続殺人事件」が発生するまでは、ペンションや飲食店を形成する会社の代表取締役であった。本編に登場した部下には、白鳥学と仲吉浩太がいる。

 外見は中年男らしく過分に贅肉がついた体型。仲吉浩太いわく「強欲そうで脂ぎった男」であり、一見その筋の人と誤解されるような顔立ちをしている。真理恵の友人には、「鬼瓦みたいな顔」とも言われていた。

 経営能力はあり、娘である由真や真理恵には経済的には、何不自由ない生活をさせ、差別することなく可愛がっていた。だが、来るもの拒まず去る者は追わずといった感じで、女癖はあまりよくなかった模様。その結果、由真が誕生することとなった。だが、真理恵の産みの親である鈴恵のことを心から愛していたのは本当であったようだ。

 家事全般は信頼の厚い家政婦に任せており、鈴恵の後に妻を娶ってはいない模様。

 真理恵を傷つけた元・義理の息子である吹石隆平を許せなかったのは、もともと男としての部分で自分に似ているからという気持ちもあったのだろう。お気に入りの部下である白鳥学を、真理恵の次の夫にしたいとも考えていた。

 事件の夜、助けが間に合わず無残に殺された愛娘・真理恵の死体を前にし、脳出血を起こした。言語障害と運動障害が残り、6年たった今も病院で寝たきりの状態である。由真はレストランに勤務しながら、わずかな昼休みの時間に彼の元へと車を走らせている。


●八窪 直久(やくぼ なおひさ)

 八窪真理恵と八窪由真の従弟。八窪卓蔵の一番下の弟夫婦の1人息子。

 中学2年生。14才。身長157cm。バスケットボール部所属。

 色白で長い睫毛で、女の子ような可愛らしさを持つ年の割には小柄な少年。いまだランドセルを背負っている小学生のような雰囲気も持っている。性格も由真が苦手としている親族たちには似ず、非常に思いやりがある少年である。中学校では、バスケ部に所属しているが、身長が足りずに背が高い下級生にレギュラーの座を奪われたことに、努力しても越えられないことがあるとつらい気持ちになっていた。

 彼の両親はグアムに旅行中であり、自主的な職業訓練の一環として「レストラン 笑窪」の手伝いを行うことに。わずか3日間の手伝いとはいえ、レストランの手伝いを真面目に行っていた。

 だが、その可愛らしい容貌ゆえに、ショタ趣味+強姦趣味を併せ持つ、高藤永吾に目をつけられ、帰宅途中を待ち伏せされ、性的暴行を受けた。その後、帰国した自身の両親に「監督不行き届き」だと責められている由真をかばった。


●八窪 真理恵(やくぼ まりえ)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり犠牲者。身長163cm。

 八窪由真の異母姉。由真とは8才離れている。父は八窪卓蔵。母は八窪鈴恵。

 中学2年生時に5才の由真と暮らし始めた。実の母に捨てられた由真を、八窪家に受け入れ、生活の基本を教え、優しく育てた人物。由真にとっては彼女こそ真の母のような存在である。父・卓蔵と由真が距離を縮めることができ家族となれたのも、彼女の存在が非常に大きかった。彼女は、勉強も人並み以上にでき、学校で問題を起こすこともなく、卓蔵が子育ての大きな苦悩に直面することは一度もなかった。だが、卓蔵はそんな彼女の様子に人間味を感じないことも一度や二度でもなかった。

 色白で優し気な風貌で、聖女のような清らかな雰囲気を持つなかなかの美人。宵川斗紀夫の好みにもピッタリ合致していた。私服はお嬢様系のスカート姿が多い。脚を目立たせるような格好はしないが、なかなかの美脚の持ち主でもある。

 男性との交際経験は高校時代のU、大学で知り合った男、マンションの隣人であった隆平の3人。だが、高校時代のUとは一線を越えた関係にはなっていなかったと思われる。男受けはすこぶるよいが、その反面、女受けが悪いというか、一度も話したこともないような人達(ネット住民)からも敬遠される始末。

 隆平と結婚していた時は、隆平にそっくりな男の子を欲しがっていた。離婚した後も、隆平とやり直す気があり、父を説得しようと考えていたと思われる。

 あの日、「殺戮者」の殺意のルーレットは彼女のところで止まったが、彼女に殺されるような理由はなかった。(彼女だけではなく他の犠牲者たちも同様であるが)単に「殺戮者」が自分の境遇を嘆いて、勝手に妬みや羨望を募らせ、それをぶつける標的となってしまっただけである。

 最後まで、由真と「殺戮者」から逃げようとし、由真が「殺戮者」に踏みつけられている時は、自身の肩に木の枝が刺さったままであるにも関わらず、勇敢に「殺戮者」に体当たりをして由真を助けようとした。もう「殺戮者」の手から逃げられないと覚悟した彼女は、由真に最期の言葉を告げた。

 「殺戮者」に下腹部を素手で貫かれ死亡。その死に顔はまるで眠っているかのようであった。享年26才。

 死亡した直後の写真を「安全地帯」で事件を楽しむ、宵川斗紀夫に撮影されていた。


●八窪 由真(やくぼ ゆま) ★本作の主人公★

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり生存者。身長153cm。

 八窪真理恵の異母妹。真理恵とは8才離れている。父は八窪卓蔵。母は佐伯。

 事件当時は18才の大学1年生。現在、24才。「レストラン 笑窪」の店長。

 5才の時に、八窪家に引き取られた。それまでは、生物学上の母・佐伯との2人暮らしであったが、ネグレクトのような状態にいた。真冬でも冷水で体を洗うなど普通の生活もままならず、そのうえ母が連れて来る様々な男たちを警戒する日々が続いていた。

 外見は、お嬢様風で柔らかい雰囲気を持つ真理恵とはタイプが異なっているも、美人ではある。黒いストレートのショートカット、切れ長の大きな瞳、アーチ形に整った眉、形のいい鼻、小さく引き締まった唇、そして細くてしなやかな体つきと、まるで小さな黒猫をイメージさせる女性。

 小柄であるも運動もまずまずでき、また勉強については成績優秀の部類に入っていた真理恵以上にでき、東京の有名大学に現役合格するほどであった。車の運転に関しても、免許をとって間もないのに、すいすいと山道を運転し、水を吸い込むように吸収していくタイプだと思われる。

 生い立ちがつらいものであるためか、姉である真理恵に普通の姉妹以上に依存してしまっている面もあった。だが、真理恵の幸せを一番に願っており、事件当時は離婚したばかりの真理恵のことを誰よりも心配していた。

 6年前、「殺戮者」からの襲撃を受け、最後まで真理恵とともに逃げ続け、彼女と一緒に必死で生きようとしていた。だが、無慈悲な「殺戮者」により、目の前で真理恵を殺害され、自身も崖から落とされた。「殺戮者」に最後に襲われた人物でもある。

 愛する者を助けられず、自分だけが命を取りとめたことにより、”生きること”に無気力な日々を送っていた。父の治療費のため、親戚たちの計らいにはより、表向きはレストランの店長という仕事に従事していた。 

 そして6年後、宵川斗紀夫の企みにより、再び「殺戮者」との対決の時(本来なら、由真が「殺戮者」を処刑する時であった)を与えられる。姉たちの命を奪い、自分に再びの殺意を向けた「殺戮者」に立ち向かっていった。

 本編の最後、由真は近衛仁郎とともに見上げた青空の中に真理恵と彼女の仇を取りその生涯を閉じた義兄・吹石隆平が見えた気がした。彼女たちの最期の言葉を胸に刻み、由真は生きていく。


●U(ゆー)

 本名不明。舌無しコウモリ、八窪真理恵の高校時代の同級生の男子生徒。

 運動部のエースで皆から歓声をあげられる人気者の雛形のような男子生徒。

 真理恵に告白し、OKをもらえたものの、真理恵がやらせてくれないのを不満に思っていた。時期は不明であるが、真理恵から別れを告げ、高校卒業前に交際はジ・エンドとなった。


●宵川 斗紀夫(よいかわ ときお) ※「ここは安全地帯」にも登場

 世間的に割と名の知れたホラー作家。宵川麻琴の夫。40才。身長178㎝。

 都会的な雰囲気と柔らかな物腰で、大抵の人間は第一印象で好感を持つに違いない外見の持ち主であることも6年前と変わらない。6年前の10月に谷辺千奈津に負わされた傷により、右脚を少し引きずって歩いている。

 常識的な一面も見せているも、何らかの事件で被害者になった女に一番欲情するという異常な性癖は相変わらずのようである。なお、麻琴の押しに負けて、結婚したことを死ぬほど後悔している。彼自身も、あの6年前の10月の我妻佐保を標的とした身代金目的殺人未遂事件で、「安全地帯」という観客席から「主人公」=「被害者」として舞台に上がったため、自分でも認めたくなかったが、少しだけ精神の調子が狂っていたのかもしれない。

 6年前は我妻佐保を主人公とした事件を作り上げたが、今回は同士である「舌無しコウモリ」=「殺戮者」が6年前の起こした事件の被害者である八窪由真を新たな主人公に抜擢した。

 だが、自分が思い描いていた物語はこの時も思うように展開せず、万が一の時のために八窪由真の口封じを頼んでおいた”協力者”である、松前不二男に拉致され自身が殺害されるという結末を迎えた。自分に本物の殺意を向けた松前不二男の口から聞いた言葉は、彼自身が6年前の夏に沼工場で少年・櫓木正巳にかけた言葉と同じであった。彼が死の際に何かを知ったとしても、もうどうしようもなかったのだ。

 宵川斗紀夫はもう二度と「安全地帯」に戻ってくることはできなくなった。彼は世の「安全地帯」にいる人々から眺められる主人公として、事件を覚えている人々の記憶に残り続けるのだ。


●宵川 麻琴(よいかわ まこと)

 宵川斗紀夫の妻。36才。身長170cm。斗紀夫とは1年ほど前に結婚。

 彼女は斗紀夫とはある種異なる狂気の持ち主であり、しかもその狂気を本人は全く自覚していない。弟の子供(アレルギー持ち)にアレルゲンの入った食べ物を食べさせようとしたり、人目を気にせず感情を爆発させ公共の場で騒ぎを起こすなど。斗紀夫いわく「歩く災い」ならび「地雷女」。斗紀夫が由真をヒロインとした舞台計画実行の日、斗紀夫の浮気を疑い、彼の車のトランクに身を潜めるなどしたが、水分補給のことを全く考えておらず、途中で失神するなど頭はあまり良くない模様。

 斗紀夫の遺体発見後、彼の心の中に住んでいた”女たち”(すわなち彼の特殊な性癖について)について知ってしまった後は発狂せんばかりの状態が続いているとのことだ。

 顔だちはごく普通の部類に入るも、その肉体は前に「超」を5つつけても過言ではないほどのナイスバディである。究極の女の肉体ともいえ、30代半ばだというのに、本人の日頃からの努力もあるが崩れなどは全く見当たらず、その肉体は日々熟れていっているように思われる。


●我妻 佐保(わがつま さほ) ※「ここは安全地帯」に登場

 「ここは安全地帯」の主人公であった元・少女。現在は24才。

 我妻優美香の一人娘。初音の母。

 中牧東高校3年時、18才の誕生日に2人の不良少年に輪姦された過去を持つ。この事件は彼女を主人公としたい宵川斗紀夫のたくらみであったが、彼女や彼女の家族ならびに長倉(矢追)貴俊はそれを知ることはなかった。

 斗紀夫が事件のヒロインに抜擢するだけあって、色白でおとなしやかな雰囲気を持つ可憐な少女であった。真理恵と共通する外見の特徴を持っている。

 高校卒業し一浪後、女子短大に入学した。卒業後に見合いをして10才年上の男性と結婚し、初音を出産する。優美香の話によれば、最初は慣れない育児でやつれていたそうであったが、現在は落ち着いて母親業をやれているとのことだった。彼女の現在の姓や居住地、夫の名前や職業については、作中には記載はない。つまりは宵川斗紀夫が知ることはなかったということだ。


●我妻 優美香(わがつま ゆみか)※「ここは安全地帯」にも登場

 我妻佐保の母。初音の祖母。40才。身長158cm。

 40才となった今も、かなり若く見え、変わらぬ美しさを保っている女性。性格的にふわふわとしたところも変わってはいない模様。本編始めに家を訪れた斗紀夫が、6年前の7月に愛娘・佐保があった性被害を裏で操っているとは思いもせず、彼を疑うことなく懐かしさからにこやかに話をした。

 佐保が自分とは別に家庭を築いていることは少し寂しくもあるが、佐保が互いに信頼し合え、大切にしてくれる男性と巡り合って初音を授かったことを、とてもうれしく思っている。このことは彼女の父母である我妻誠人と我妻美也も同じである。初音の存在は我妻家に戻ってきた穏やかな日常の象徴であり、希望であるのだ。

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【R15】続・ここは安全地帯 なずみ智子 @nazumi_tomoko

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