登場人物紹介(2) な行~ま行(大量のネタバレありversion)

『続・ここは安全地帯』の登場人物紹介(※昇順)です。

 ※名前の記載がない人物は、作中の呼び名の欄に記載があります。

  今回も大量のネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。


【な行】

●長倉 貴俊(ながくら たかとし) ※「ここは安全地帯」に登場

 7年前の高校2年生時に、斗紀夫の同士である女子高生・A子にX市にて母と2人の弟を殺害され、中牧東高校まで転校してきた被害者。中牧東高校での名前は、母の旧姓を使っていたため、「矢追貴俊(やおいたかとし)」であった。

 何事もそつなくこなせるうえ、穏やかな優しい性格で、その容貌にも大変に恵まれた元・少年。だが、何かと巻き込まれ体質であり、6年前の10月の我妻佐保を標的とした身代金目的殺人未遂事件に斗紀夫と巻き込まれた。

 24才となった現在は、ハワイで父・滋とともで暮らしている。斗紀夫とはメールでやり取りを続けており、A子を惑わせたその美貌も、今もなお健在の模様でもある。日本を離れても、A子に殺された母や弟たちは、彼と彼の父の胸のなかにずっといる。


●仲吉 浩太(なかよし こうた)

 6年前は、八窪卓蔵が代表取締役を勤める会社の従業員(職種は営業)であった。「Y市連続殺人事件」の直後に退社し、現在34才。身長178cm。

 ひょっとこを思わせる個性的な顔立ちの男性。事件当時は28才。彼は自分のスペックは同期入社の白鳥学とほぼ同等であり、鍛えた肉体美にも自信を持っていたが、顔面だけは白鳥学に完全に負けていたため、白鳥学の存在を苦々しく思い、一方的にライバル視していた。

 事件発生の夜、ペンションに八窪卓蔵の長女・真理恵の元夫が現れたとの連絡を白鳥学より受けていた卓蔵を車に乗せ、ペンションまで送り届けようとしていた。その途中で、「殺戮者」に惨たらしく殺害された白鳥学、八窪真理恵の死体を目撃し、なお愛娘の死体を見た八窪卓蔵が脳出血を起こして倒れた場にも居合わせた。

 暗闇から自分と卓蔵を見ていた「殺戮者」の不気味な姿と殺意にも気づいたが、彼は事件の目撃者となっただけであった。

 事件後、すぐに退社し、Y市から遠く離れた県内の会社に就職した。脳出血を起こし寝たきりとなった卓蔵の見舞いには、半年に1回ほど訪れてくれている。


●新田野 道行(にったの みちゆき)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり犠牲者。

 新田野唯の夫。子供はいない。身長178cm。

 職業はグラフィックデザイナー(妻・唯とは別会社)であった。肩幅が広い体格で、シンプルであるが、ビビットな色合いの服装を好んでいた。

 妻・唯とは幼稚園からの幼馴染で19才の学生時に結婚し、次の年に結婚20周年を迎える予定であった。唯とはツインソウルだと思えるくらい、好物も趣味も考え方もピッタリと一致していた。何より幼き頃より一緒にいると楽しく、心よりくつろぐことができる関係であった。子供を持たないという意見も彼女とは一致していた。

 「Y市連続殺人事件」が起こったあの夜、「殺戮者」が姿を見せた時、妻を連れてすぐに車で町まで逃げた方がいいと判断するなど、決断力と行動力が見られた。町までの道路を車で逃げる途中、助手席の唯を八窪真理恵だと間違えた「殺戮者」に襲撃され、必死でハンドルをさばき「殺戮者」を車から振り落そうとした。

 自分の間違いに気づいた「殺戮者」が彼らの車より、ひらりと身を翻し、助かったかのように思えたが、眼前にはすでに崖が迫っていた。ハンドルを切り直す間もなく、唯、そしてすでに殺害されていた滝正志の死体ともに、崖下に墜落し、車ごと炎上。最愛の妻と同じ日、同じ時間に死亡。享年38才。

 事件後、新田野夫妻の母親たちを中心とし、本事件の情報を求めるビラ配りは6年たった現在もなお行われていた。


●新田野 唯(にったの ゆい)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり犠牲者。

 新田野道行の妻。子供はいない。身長166cm。旧姓・元浦唯(もとうらゆい)。

 職業はグラフィックデザイナー(夫・道行とは別会社)であった。

 夫・道行とは幼稚園からの幼馴染で19才の学生時に結婚し、次の年に結婚20周年を迎える予定であった。新田野夫妻は際立った美形というわけでなかったが、どちらもそれなりに整っている外見をしており、並んでもお似合いであった。夫婦共用のFacebookの友人は100人以上、家のインテリアもお洒落で、公私ともに充実していたいわゆるリア充夫婦。

 普段の唯は、パンツルックや原色を使ったファッション、髪はハーフアップが定番であったが、事件当時に限っていつもと気分を変えるために、清楚系のファッションに身を包んでいた。そのことによって、「殺戮者」に八窪真理恵に見間違えられ、夫・道行が運転する車ごと襲撃されることに。彼女は「殺戮者」の醜悪さは直視することができなかったようだが、ペンションから逃げる際、玄関を開ける役をかってでるなど、道行を守ろうとしていた。

 自分の間違いに気づいた「殺戮者」が彼女たちの車より、ひらりと身を翻し、助かったかのように思えたが、眼前にはすでに崖が迫っていた。運転席の道行がハンドルをさばく間もなく、道行、そしてすでに殺害されていた滝正志の死体ともに、崖下に墜落し、車ごと炎上。最愛の夫と同じ日、同じ時間に死亡。享年38才。

 事件後、新田野夫妻の母親たちを中心とし、本事件の情報を求めるビラ配りは6年たった現在もなお行われていた。


●根室 ルイ(ねむろ るい)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり犠牲者。身長161cm。

 独身でずっと服飾関係の仕事を続けていた元・キャリアウーマンであった。定年後であった当時は、年金と貯金で暮らしていた。努力家であり、自分なりのルールを決めて、生きてきた女性。また、銀幕の女優を思わせるような大変な美人であり、頭身バランスもなかなかに良かった。

 「Y市連続殺人事件」では一番年上の被害者であるが、彼女の際だった美しさには由真や肥後史彰も目を魅かれ、ネットでも話題にあがり、斗紀夫も認めていた。彼女があと40才ほど若ければ、間違いなく斗紀夫の毒牙にかかっていただろう。

 「殺戮者」による殺戮が開始され、皆パニック状態でペンションから逃げ出していたなか、何も知らず客室で深い眠りについていた。由真と「あら、いい男」な白鳥学に起こされ、由真・真理恵・学たちと逃げようとした。廊下の突き当りで由真たちとともに追い詰められたが、由真たちの反撃により「殺戮者」が逃げていったことに胸を撫で下ろしたのもつかの間、再びペンションへと侵入してきた「殺戮者」により割れた窓ガラスに胸を串刺しにされ死亡。彼女が最期に見た”夢”は、今は無き生家で自分を膝の上に抱く、今は亡き優しい父の夢であった。享年62才。

 もしかしたら、彼女が自室で深い眠りについたままであったとしたら、彼女の存在は「殺戮者」に気づかれることなく、生存していたかもしれない。 


【は行】

●初音(はつね)

 我妻佐保の長女。我妻優美香の孫娘。現在2才。名字は登場せず。

 まるっこいお尻にオムツを着用中。我妻家にようやく訪れた、穏やかな日常の象徴ともいえる幼子。顔立ちは優美香や佐保によく似ており、将来は並の女の子以上に可愛くなるのは間違いないと、斗紀夫は予測していた。


●ピア

 斗紀夫の妻・宵川麻琴の弟の子供。性別不明。2才。

 ちなみに、麻琴がこの子に食べさせようとしたクッキーの店名を日本語訳すると「無知な馬鹿」である。


●肥後 史彰(ひご ふみあき)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり生存者。事件当時は32才で、失業中あった。現在は38才。身長173cm。

 外見は年相応で顔立ちも普通程度であるが、人柄は良さそうではある。やや骨太で中年太りが始まりかけたような体格。

 事件の少し前、4年間勤めていた会社を業績不振による退職勧奨により退社せざるを得なくなっていた。リストラ後、就職活動に苦戦し、息抜きのつもりでなけなしの金をはたいて「ぺんしょん えくぼ」へとリフレッシュにやって来たが、そこで手に入れたのは心休まる時間などではなかった。命だけは助かった彼もまた、これからの生涯癒えぬことのない苦しみと恐怖を、事件により刻みつけれたのだ。

 「殺戮者」から逃げる時、友人たちに置いて逃げられ打ちひしがれていた駒川汐里の背中を叩いて自分とともに生きるために逃げることを促し、一刻を争う時ではあったが、血だらけで呻いていた笹山之浩を駒川汐里とともに担いで車に乗せた。

 そう車の運転が得意ではなかった彼であったが、「殺戮者」に見逃されたため、駒川汐里と笹山之浩とともに、車で山を下り、市立総合病院まで逃げることができ、生存者となったのだ。事件後は実家に戻り、雇用形態にこだわらず、事件のことを思い出す時間を少しでも少なくするために、がむしゃらに働き続けていた。

 38才となった現在、同じ事件の生存者である駒川汐里と結婚し、ともに生きていくことを決め、彼女と一緒に由真のもとを訪れ真理恵の霊前に手を合わせた。


●深田 季実子(ふかだ きみこ)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり犠牲者。身長158cm。

 「ぺんしょん えくぼ」の厨房担当。調理師免許も持っている。

 外見と年齢は典型的なおばちゃんであったが、その心は永遠の夢見る乙女の可愛らしさを持つ女性であった。マザコンだった夫とは既に死別しており、息子・娘が1人ずついたがどちらも授かり婚により家を出ていた。孫の成長を非常に楽しみにしていたらしい。また、恋愛ドラマが大好きで、寝る前にこっそりと携帯の画面でチェックしていたり、目の前で繰り広げられた現実の恋愛ドラマ(八窪真理恵・吹石隆平・白鳥学の三角関係?)に、興味深々であった。彼女自身の恋愛としては、人知れず(笹山之浩には気づかれていたが)多賀准一と熱い仲であった。

 事件の夜、首と胴体を切断され惨たらしく殺害された多賀准一の遺体を見て、気が触れてしまい、彼の首を抱えたまま闇の中へと駆けていった。その後、多賀准一の首を抱えたまま、フラフラとペンションの中に入っていき、由真たちを飛びあがらせた。その後、玄関の屋根の上に潜んでいた「殺戮者」に縊り殺された。彼女の最期の言葉は「准さん」であった。享年50才。


●吹石 隆平(ふきいし りゅうへい)

 6年前の「Y市連続殺人事件」の被害者であり生存者。当時、28才で現在は34才。身長182cm。

 あの夜にペンションにいた13名の被害者の中には含まれてはいない被害者であり、生存者である。

 真理恵とは自らの不貞(高校出たての若い娘との不倫)により、離婚することとなり、何とかやり直したいと、事件当日、横浜から車を走らせてペンションまでやって来た。桜井朋貴を駅まで送り届けた後、ペンションまで戻ろうとしていたその道路にて、「殺戮者」に襲われ、左腕を切断され崖下に蹴飛ばされた。何とか一命はとりとめることはできたも、昏睡状態から目覚め、真理恵の死を知った彼の慟哭は病室中に響き渡った。「殺戮者」に一番最初に襲われた人物である。

 マリンスポーツが趣味であり、小麦色の肌と精悍な顔つきで男くさい外見の男性。事件後、自分の命以外は全て捨て、真理恵への愛と殺戮者への憎しみを胸に、彼女の仇を取ろうと、Y市の山間部を中心に練り歩き続けていた。その彼が放っているその眼光は、6年前よりもさらに鋭く、そして悲しみに満ち、まるで野生の獣を思わせた。近衛仁郎や富士野七海は、彼のことを単に”レストラン周辺をウロウロしている目つきの危ないホームレス”だと思っていた。由真は彼の健康を心配し、食料等をこっそりと差し入れていた。

 彼は本来なら、近衛仁郎と同じく、事件より6年後の”由真を主人公とした宵川斗紀夫の舞台計画”には登場しない人物であった。だが、6年後の新たな舞台の夜、歪んだ欲望を持つ宵川斗紀夫に右ストレートと腹蹴りをくらわせ、炎の壁の中で「殺戮者」に殺されかかっていた由真を助けようと飛び込んでいった。最期は炎より逃げようとする「殺戮者」を逃がすまいと、燃えさかる炎に「殺戮者」とともに焼かれ死亡。愛する妻の仇を取り、憎しみの炎を昇華させ、その生涯を閉じた。享年34才。


●富士野 七海(ふじの ななみ)

 「レストラン 笑窪」のアルバイト。ホール担当。

 地元の国立大学に通う大学1年生。18才。身長163cm。

 今年より親元を離れ1人暮らし中。口寂しさからつい甘い物を口に運ぶ習慣がついてしまった。ぽっちゃり体型をコンプレックスに思っていたため、男性との交際経験はなかった。おっちょこちょいな面もあるけれど、お客様の受けも非常によく、由真は彼女には長く働いていてほしいと思っていた。仁郎とは仲が良く、時々、夫婦漫才のようなやり取りもしていたらしい。

 彼女自身は、女の勘は鋭い方だと自負していたが、身近にいた異常性欲者・高藤永吾の裏の顔には全く気づいていなかった。生理がかなり重い体質。

 彼女は両親にたっぷりと愛情をもらって育っていたためか、世の中には八窪由真の姉たちを殺したような悪人がいたとしても、少なくとも自分が出会った人達は皆善人であると信じてもいた。だが、にこやかにずっと一緒に仕事をしていた自分の同僚が、人を傷つける犯罪を犯すような人間であったこと(それも松前不二男と高藤永吾の2人)に、自分の世界が足元からガラガラと崩れ落ちていき、酷いショックを受けることとなった。


【ま行】

●町沢 月祈夜(まちざわ るきや) ※「ここは安全地帯」にも登場

 6年前、不良少年の逢坂夏樹や桐田照彦とつるんでいた元・少年。

 24才となった現在は、既に結婚し子持ちとなっている。だが、彼の荒々しい気性は相変わらずのようで、居酒屋での駐車トラブルにより男性1名に重症を負わせ逮捕され、全国ネットで名前が報道される事態に。どうやら、ネット民たちにより彼がFacebookなどのSNSに載せていた顔写真や個人情報は拡散されていくと思われる。


●松前 不二男(まつまえ ふじお)

 「レストラン 笑窪」のメインシェフ。開店当初より勤務。

 ”自称”48才。身長170cm。本名と実年齢は不明。

 鍛え抜かれた筋肉を持ち、寡黙で少し気難しそうで少し頭髪の寂しいただのおじさんにしか見えなかった彼であるが、その正体は宵川斗紀夫と「殺戮者」の同士であり、”協力者”であった。彼もまた夢のなかで受け取った者である。

 変身した”松前不二男”は、鱗や水かきこそないものの、まるで想像上の半魚人を思わせるような化け物である。背丈は人間時とそう変わりはなく、わずかに残っていた頭髪は完全になくなり深い緑色のゴムのような触感を思わせる皮膚の隅々に、赤い血管の筋が生々しく浮き出て、鍛え上げられた筋肉をさらに示していた。ナイフで切り抜かれたような形のような切れ込みの中に漆黒の瞳があった。人間時にも高い運動能力の持ち主であったと思われるが、変身した彼は人間離れした跳躍力を見せた。なお、彼も「殺戮者」と同じく、全裸で犯行に及んだ。

 ”松前不二男”は変身後も、正気を保ち、自らの欲望を達成するためだけに動いていた。彼は、「夢で受けとった者同士を共食いの如く殺したかった」のだ。「殺戮者」を追い詰め、斗紀夫を殺害したのも、正義感からではなく、単なる自分の歪んだ欲望のためであった。”松前不二男”を駒として扱っていた斗紀夫こそ、彼の掌で転がされていたのかもしれない。

 彼はシェフという仕事自体は真面目にこなし、化け物に変身した後も近衛仁郎に恋愛アドバイスをするなど、仁郎のことは非常に気に入っていた模様。自分の欲望をそそらないものは殺さない主義であり、善良な仁郎や由真はその手にかけることはなかった。手にかけた宵川斗紀夫も、斗紀夫自身は一度も化け物に変身しなかったため、筋を通して自分も人間の姿のまま斗紀夫を殺害した(溺死させた)。

 その後、彼は、本当の名前と年齢は不明のまま姿を消してしまった。本物の「松前不二男」はおそらく、彼にその命と戸籍を奪われたに違いない。そして、その本物の「松前不二男」も、彼と同じく夢で受け取った者だと推測できる。

 宵川斗紀夫殺人事件の容疑者で指名手配犯であるが、彼は法の手につかまることなく、日本の片隅でその天寿を全うすることとなる。

 ちなみに、彼に「ハゲ」は禁句である。

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