《付録》最後まで読んでいただいた方へ

登場人物紹介(大量のネタバレありversion)

 『ここは安全地帯』の登場人物紹介(※昇順)です。

 大量のネタバレを含んでおりますので、ご注意ください。


【あ行】

●相田 千郷(あいだ ちさと)

 宵川斗紀夫の”元”恋人。谷辺千奈津の妹。身長165cm。

 明るくさっぱりとした性格のしっかり者で身綺麗でセンスもよい。だが、夏の始めに斗紀夫に別れを告げられてからというもの、心身のバランスを大きく崩した。そして、恋敵だと思い込んだ佐保を斗紀夫の前から葬りさるため、姉である谷辺とともに佐保を沼工場に拉致し、身代金を得たのちに殺害する計画を企てた。 

 佐保を監禁している現場に斗紀夫と貴俊が偶然現れ、「斗紀夫の異常な性癖」にはうすうす勘付いていた千郷は皆の前で斗紀夫の性癖を暴露しようと、見当違いにも貴俊に迫ってキスをしてしまい、超絶怒り狂ったA子により淀んだ水の溜まり場に引きずり込まれ殺害された。20×6年10月22日死亡。享年32才。


●荒武 洋治(あらたけ ようじ)

 中牧東高校3年3組所属。佐保のクラスメイト。身長180cm。

 バレー部のエースアタッカーで、がっしりとした体格。朗らかで快活な性格で、転入してきたばかりの貴俊にもくったくなく話しかけていた。運動は得意であるも、成績は良くない。裏サイトで「脳筋バレー」と称された。授業中に時々居眠りをしているのも佐保に目撃されている。佐保はレイプ事件に遭うまで、荒武に対して恋心とまでは言えないが、ほのかに好意は抱いていた。

 10月4日に起こった廊下での揉め事で宇久井を諌めたり、貴俊を千野含むクラスメイトと一緒に自宅まで迎えにいくなど男気のある少年。


●宇久井 大祐(うくい たいすけ)

 中牧東高校3年4組所属。身長177cm。

 制服のブレザーをルーズに着こなし、数人の取り巻きを引き連れている騒々しい男子生徒。不良と言われて想像するテンプレートのような外見であるが、定期試験の順位は常に学年10番内。裏サイトで「勉強だけはできるジャイアン」と称された。1年時に深谷日香里のことが好きで、しつこくちょっかいをかけ彼女に嫌われてしまった。

 転入してきたにも関わらず自分の成績を追い抜いた貴俊が気に入らないこともあり、10月4日に起こった廊下での揉め事で、貴俊が『X市一家殺害事件』の被害者だと大勢の生徒の前でばらす。その後、生活指導の教師にこってり絞られ、べそをかいた。


●A子(えーこ)

 X市の高校で貴俊の同級生であった女子生徒であり、20×5年4月24日に貴俊の家族3人を殺害した「X市一家殺害事件」の加害者。本名は本編に登場せず。

 貴俊の家族殺害後に川に身を投げて自殺したようであったが、彼女は斗紀夫と同じく「夢で受け取った者」であり、その肉体の生命機能停止後もゾンビストーカーとして貴俊を絶対にあきらめず、彼に”触れる”女に危害を加えようとしていた自己中極まりない少女。

 そして、20×6年10月22日に沼工場にて、自分も触れたことのない貴俊の唇を奪った千郷を即、淀んだ水の溜まり場に引きずり込み溺死させた。そのうえ、ついうっかり貴俊の手に触れてしまった佐保も、工場裏を流れる川に引きずり込み溺死させようとしたが貴俊に阻止される。貴俊にかけられた言葉により、彼の心が自分の思い通りになった喜びを一瞬だけ感じるも、それは彼のトラップであった。家族を奪われた癒えぬことのない苦しみと悲しみに、身も心も支配されていた貴俊に、何度もその既に死んでいる肉体を刺され今度こそ本当に死出の旅へと赴くことに。

 その後、1年前以上に”死亡していた”彼女の遺体は、X市の彼女が身を投げた川より発見され、事件は「被疑者死亡」となり書類送検された。


●逢坂 夏樹(おうさか なつき)

 高校中退(在学中であれば佐保と同じく高校3年生)。身長187cm。

 正巳・照彦とは小学校時代からの友人。佐保を拉致・監禁・輪姦した不良少年のうちの1人。整った顔立ち、抜きん出た長身と鋭く冷たい眼光、運動能力の高さで、不良少年たちのリーダー的存在であった。正巳も彼を心の底では恐れており、佐保を彼らの暴行から助けることができなかった(しなかった)。

 タクシードライバーの父との2人暮らしで、父親との相性は非常に悪かったが、彼の父親は夏樹に手をやいていたも、悪いことはしていないと信じていた模様。だが、恐喝や仲間の女を使った美人局にも関わっていた。

 顔つきも体つきも早熟であり、実年齢よりも上に見える。なお、斗紀夫の目から見ると、彼の性器もなかなかに立派であるらしい。斗紀夫いわく「肝の座り方や度胸を社会的にマイナスの方向に向けて育ってしまった人間」。佐保をレイプしたことについても、彼は最後まで反省の念を持つことはなかった。

 斗紀夫に沼工場に呼び出され、口封じならびに正義の鉄槌を下されることに。A子により、沼工場の表道路に連れていかれ連続で車に轢かれて死亡する。この殺人は事故として処理された。20×6年8月8日死亡。享年18才。



【か行】

●木村 麻央(きむら まお) ※貴俊の回想にのみ登場

 X市の高校で貴俊の同級生であった女子生徒。身長162cm。

 クッキリとした二重瞼と、綺麗なストレートの黒髪が印象的な美人の女子生徒。A子のつきまといに悩んでいた貴俊の肩を励ますつもりで軽く叩いたところを生前のA子に目撃され、すぐさま襲撃される。ペットボトルで顔面を殴られ、鼻の骨を折られて入院。その後、何とか学校に復帰したものの、心の傷は深いようで貴俊の姿を見るだけで怯えて逃げるようになった。


●桐田 照彦(きりた てるひこ)

 高校中退(在学中であれば佐保と同じく高校3年生)。身長170cm。

 夏樹・正巳とは小学校時代からの友人。佐保を拉致・監禁・輪姦した不良少年のうちの1人。髪の毛を金色に染めてはいるものの、一見中学生にも見えるような幼い顔立ち。両親は揃っており、兄2人は私立大学に通い、3階建ての一軒家に住むなど、経済的には恵まれた家に育つ。斗紀夫いわく「金持ちの家の末っ子で甘やかされて育ったらしい」。夏樹と同じく、恐喝や仲間の女を使った美人局にも関わっていた模様。

 お喋りで、長い物に巻かれろといった太鼓持ちであり、その場にいる一番強い者に乗っかる気質。そのうえ、佐保監禁時に町沢たちを呼ぼうとしたり、正巳と町沢が睨み合っていた時に火に油を注ぐような言動も見られた。幽霊の類が大の苦手で、斗紀夫の指示により自宅に現れたA子の姿に驚愕し、精神が耐えきれず病院に入院。だが、一時帰宅時に再び現れたA子から逃げようとし、自宅3階より転落死する。20×6年8月(日付不明)死亡。享年17才。



【さ行】

●殺戮者(さつりくしゃ)

 20×6年8月4日、Y市にて八窪真理恵含む10名を殺害した加害者。

 生存者の話では「化け物」。性別・年齢・その他一切不明。

 ただ1つ確かなのは、斗紀夫の「同士」であるということ。つまり、夢で受け取った者である。


●真田 理咲子(さなだ りさこ)  ※貴俊の回想に名前のみ登場

 X市の高校で貴俊の同級生であった女子生徒。小学校時代からおかっぱ頭と眼鏡がトレードマークで真面目一徹といった外見。貴俊とは小学校から高校まで同じ学校に通っていたものの、性別が違うこともあり、そう親しいわけではなかった。

 それにも関わらず、生前のA子に自宅に押しかけられ、卒業文集と卒業アルバムを強奪された。その卒業文集がきっかけとなり、『X市一家殺害事件』が起こり、責任を感じていたらしい彼女は、その後不登校となり、最終的には転校していった。


●篠口 梨伊奈(しのぐち りいな)

 中牧東高校3年3組所属。佐保の仲良しグループの1人。身長155cm。

 明るい性格で、かなりのおしゃべりで噂好き。亜由子に裏サイトで『移動式人間スピーカー』と書き込まれていた。佐保は、彼女の明るくて自ら人の輪に入っていける面は羨ましく思ってはいたものの、噂好きな面は苦手であった。

 だが、彼女には悪意や裏で画策するような陰湿さはなく、性被害にあったらしい佐保への思いやりは日香里や翼同様に見せていた。



【た行】

●高川 翼(たかがわ つばさ)

 中牧東高校3年3組所属。佐保の仲良しグループの1人。身長159cm。

 佐保と日香里、翼は小学校時代からの友人。ふっくらとした唇と女の子らしい外見で「可愛い」と評判である。活発で体育も得意。パンチラ率が多いらしく、亜由子には裏サイトで『ダッチワイフ』や『グロステカテカの勘違いぶりっ子』と書き込まれていた。

 佐保がレイプされたという噂を聞いて泣き出したり、夏休みに日香里とともに佐保の家まで行くなど、大切な友人である佐保のことを思いやっていた。


●谷辺 千奈津(たにべ ちなつ)

 相田千郷の姉。旧姓は相田。既婚者。夫と子供1人の3人家族。身長168cm。

 中牧東高校3年3組の担任。担当教科は国語。女子ソフトボール部の顧問。

 授業の教え方も上手で、依怙贔屓もせず、教師としての評判は良かった。外見もいつも身綺麗で服のセンスもよく、佐保も大人の女性として密かに憧れていた。

 だが、彼女は消費者金融で借金を重ね、現在800万円にも膨れ上がっていた。借金を重ねるに至った理由は、仕事のストレスと姑との諍いであり、完全に買い物依存症となっていた。

 なんとかしてお金が欲しいと思っていた時、千郷が恋敵と思い込んでいた佐保の誘拐殺人を企てていることを知り、それに乗ってしまう。

 最後には自分の愚かさを思い知り、教師として、大人として佐保たちの信頼を裏切ったこと、そして自分の何よりも大切な子供に「犯罪者の子」という汚点を残したことを心より悔いた。だが、妹の千郷をこんなにも苦しめた斗紀夫に一矢報いようと彼に一生後遺症の残る大怪我を負わせ、出刃包丁で自らの喉を突き、自殺。20×6年10月22日死亡。享年35才。


●千野 剛健(ちの ごうけん)

 中牧東高校3年3組所属。佐保のクラスメイト。身長163cm。

 「剛健」という名にあわず、色白で背が低く小太りの体型の男子生徒。裏サイトでは「白子豚」と称された。佐保と同じく、運動が苦手。

 10月4日に起こった廊下での揉め事で宇久井にからまれていたところを貴俊にかばわれる。見て見ぬふりしていた生徒が大半であったのに、自分を宇久井から助けてくれた貴俊にずっと感謝しており、荒武たちクラスメイトとともに、学校を休んでいた貴俊を自宅まで迎えに行った。


 

【な行】

●長倉 和則(ながくら かずのり)

 長倉滋と長倉芳美の三男。長倉貴俊と長倉光洋の弟。

 プクプクとして可愛らしく、貴俊のことを「にいたん」と呼んでくれるようになったばかりであった。

 20×5年4月24日、自宅のベビーベッドにてA子に包丁で心臓を一突きされ、殺害された。享年2才。


●長倉 滋(ながくら しげる)

 長倉芳美の夫。長倉貴俊・長倉光洋・長倉和則の父。身長180cm。42才。

 妻の芳美とは大学時代に知り合い結婚。息子全員を大学卒業させるため、必死で働いている自他ともに認める仕事人間であった。

 諸事情により貴俊とは離れて暮らしていたが、20×6年10月22日に発生した、佐保に対する身代金目的誘拐殺人事件に巻き込まれた貴俊の無事を知り、貴俊までも失ってしまうかと思っていた彼は人目もはばからず貴俊を抱きしめ号泣した。


●長倉 貴俊(ながくら たかとし) = 矢追 貴俊(やおい たかとし)

 長倉滋と長倉芳美の長男。長倉光洋と長倉和則の兄。

 中牧東高校3年3組所属。佐保のクラスメイト。身長176cm。

 X市の高校に通っていたも、そこでサイコな同級生・A子に目を付けられ、つきまとわれたあげくに、20×5年4月24日、母・芳美と弟の光洋と和則を殺害された被害者。癒えることのない悲しみと自分の卒業文集が事件のきっかけとなったことや母たちを守れなかったことを悔やみ続けていた。そのうえ、事件に関係のない「安全地帯」にいる者たちからの誹謗中傷に襲われ、20×6年5月に中牧東高校に転入してくることとなった。

 素晴らしく整った繊細な顔立ちと伸びやかな肢体を持ち、理知的で清潔感にあふれた王子様っぽい雰囲気の正統派超美形。学力も非常に高く、何事もそつなくこなせる。スポーツで一番得意なのは水泳。性格は大変穏やかで優しいが、正巳や千野、そして佐保を助けようとしたことから見るに勇敢な一面もある。本人には落ち度はないが、何かと巻き込まれ体質。

 全ての事件が表向きの解決後、彼も佐保と同じく「依頼者」が相田千郷であることには疑問を抱き、真の「依頼者」の存在がいるのではと考えた。だが、斗紀夫を心から信頼していたため、本編の最後では斗紀夫の裏の顔に行き当たることはなかった。


●長倉 光洋(ながくら みつひろ)

 長倉滋と長倉芳美の次男。長倉貴俊の弟。長倉和則の兄。

 やんちゃで甘えん坊で、貴俊のことが大好きだった。ロボットのアニメのおもちゃがお気に入りで、様々なことに興味を持ち出し始めていた。貴俊は小学校の卒業文集に彼が生まれた日のことを書いていた。

 20×5年4月24日、自宅の玄関にてA子に包丁で喉元を掻き切られ、殺害された。享年5才。


●長倉 芳美(ながくら よしみ)

 長倉滋の妻。長倉貴俊・長倉光洋・長倉和則の母。身長163cm。

 旧姓は矢追。既婚者の弟がいる。専業主婦で綺麗好き。夫の滋とは大学時代に知り合い結婚。躾には厳しかったが、滋とともに貴俊を慈しんで育ててくれた。

 20×5年4月24日、自宅の玄関にてA子に襲われた光洋を抱えて逃げる途中、包丁で背中を9回も刺されて、殺害された。享年40才。



【は行】

●深谷 日香里(ふかたに ひかり)

 中牧東高校3年3組所属。佐保の仲良しグループの1人。身長164cm。

 佐保と日香里、翼は小学校時代からの友人。赤メガネと切れ長の瞳が印象的。体育も得意。1年時に宇久井にしつこくからかわれ、彼を毛嫌いしていた。亜由子には裏サイトで「やたらリーダーぶるキツネ顔」と書き込まれていた。

 母のことを言われて傷ついている佐保に助け船をだしたり、佐保がレイプされたという噂をメールで流した亜由子に注意したり、10月4日に起こった廊下での揉め事で宇久井にはっきりものを言うなど、正義感も強い。



【ま行】

●町沢 月祈夜(まちざわ るきや)

 高校中退(在学中であれば佐保と同じく高校3年生)。身長176cm。

 正巳・夏樹・照彦の中学校の同級生。ロマンティックな名前とは裏腹に荒々しい気性の持ち主。髪をジェルで立たせ、輪っかのようなピアスをいくつも付けている。ちなみに歩きたばこの常習者。そのうえ、夏樹たちと同じく恐喝や仲間の女を使った美人局にも関わっていた。

 自分たちの仲間としては気質が合わない正巳が気に入らず、彼の服を脱がせ全裸にして写真を撮ろうとするなどのいじめを仲間にけしかける。

 また、彼は佐保を拉致・監禁・輪姦した不良少年には含まれていないが、佐保は彼の好みであるらしく、正巳が佐保を逃がさなかったら間違いなく彼も仲間たちとともに佐保を輪姦していたと思われる。


●海内 亜由子(みうち あゆこ)

 中牧東高校3年3組所属。佐保の仲良し女子グループの1人。身長169cm。

 あっさりめの顔立ちとすらりとした長い手足の持ち主であり、一見クールでさっぱりとしたイメージを抱かせる女子生徒。だが、中牧東高校の裏サイトという自分に火の粉のふりかからない「安全地帯」で無責任な噂話に花を咲かせ、心無い書き込みを続けていたうちの1人は彼女である。

 彼女は、佐保たちに恨みがあったというわけではなく、単に性格が悪いだけ。書き込みが学校側にばれ、親まで呼び出されてしっかりと絞られた。その後、佐保たちのグループには一応いるも、皆の機嫌をとるかのように饒舌になったり、学校を休みがちになったりしていた。彼女は”友人”の誹謗中傷をかきこんでいても、自分が1人になるのは怖かったのかもしれない。



【や行】

●八窪 真理恵(やくぼ まりえ) ※ニュース映像と名前のみ登場

 『Y市連続殺人事件』の被害者の女性。Y市のペンションの経営者の本妻の娘。

 八窪由真の異母姉。離婚歴あり。

 ニュース映像を見た正巳は、彼女が佐保にどこか似ていると感じた。ちなみに、斗紀夫が夏樹に送り付けた死体写真は、命を断ち切られたばかりの彼女の写真である。20×6年8月4日、「殺戮者」に殺害され死亡。享年26才。

 

●八窪 由真(やくぼ ゆま) ※ニュース映像と名前のみ登場

 『Y市連続殺人事件』の被害者の女性。Y市のペンションの経営者の愛人の娘。

 八窪真理恵の異母妹。事件当時18才。大学1年生。

 姉の真理恵を目の前で惨たらしく殺された。事件後、長時間行方不明になっていたが、無事発見された。彼女は事件の「生存者」である。斗紀夫は「安全地帯」で眺める、次なる物語のヒロインとして、彼女を選んだ。

 

●宵川 斗紀夫(よいかわ ときお)

 相田千郷の元恋人。そして本当の『依頼者』。34才。身長178㎝。

 世間的に割と名の知れたホラー作家。都会的な雰囲気と柔らかな物腰で、大抵の人間は第一印象で好感を持つに違いない外見の持ち主。

 だが、何らかの事件で被害者になった女に一番欲情するという異常な性癖も持っていた。周りに悟られることのないよう用心深く暮らしていたが、不気味な夢のなかで何かを受け取り、そして同じく「夢で受け取った者」であるA子やY市の「殺戮者」たちの存在を知り、彼の狂気は暴走することに。

 彼自身はA子やY市の「殺戮者」のように化け物に変身する気はさらさらなく、ただ自分好みの女(我妻佐保や八窪真理恵のような色白でおとなしめの清純系、経産婦不可)を主人公――つまりは被害者となる事件を作りたいと、佐保を不良少年たちに拉致させた。彼にとって自分以外の人間は、全て自分が脚本を書いた人形劇の中の人形のようなものである。

 そんな彼も、20×6年10月22日に千郷と谷辺千奈津が起こした事件で、被害者となってしまい、谷辺に一生残るような大怪我まで負わされた。その後、八窪由真を新たな主人公として選んだ彼は、Y市へと引っ越していった。



【ら行】

●櫓木 正巳(ろぎ まさみ)

 高校中退(在学中であれば佐保と同じく高校3年生)。櫓木麗子の弟。

 身長173cm。夏樹・照彦とは小学校時代からの友人。顔も服装も雰囲気も素朴。なお、彼は思春期特有の見られたくない物は、ベッドとマットレスの隙間に隠していたが、姉・麗子にはとっくにバレていた。

 7月7日に夏樹たちとともに、佐保を拉致・監禁したものの、彼だけは佐保を輪姦せず、彼女を見捨てて逃げたことに最後の最後まで悔恨と謝罪の念を持ち続けていた。

 数年前に両親を事故で亡くしており、姉の麗子とアパートで2人暮らし。他人に流されやすい性格であるも、姉の麗子だけは不良少年たち(友人たち)から守り抜こうとしていたし、「依頼者」からの呼び出しを受けた夏樹を見捨てることもしなかった。そして、彼は人生における様々な選択肢を誤り続け、20×6年8月8日、逢坂夏樹とともに沼工場にてA子に襲撃される。斗紀夫は彼だけは見逃すつもりだったらしいが、時はすでに遅し、彼は逃げようとして登った梯より転落し、頭部を損傷し重体となる。数か月の間、何とか持ちこたえていたが、姉・麗子の呼びかけに答えることなく、18才の誕生日の前日に息を引き取った。享年17才。


●櫓木 麗子(ろぎ れいこ)

 櫓木正巳の姉。23才。身長152cm。

 数年前に両親を事故で亡くしており、弟の正巳とアパートで2人暮らし。

 キャバクラ勤務で生計を立てており、栗色の髪を高く結上げ、化粧は濃い目で、派手な印象を与える女性。だが、正巳が重体となり長期入院の事態になってからは、心身共に疲弊し身なりにかまう余裕もなかった。

 ギャルな外見ではあるも、中身はわりと常識的である。たった1人の弟である正巳を大切に思い、夏樹を問いただそうとしたり、佐保の家を訪れるなどの行動を起こした。正巳たちが佐保にしたことを知ったのちは、佐保に土下座し泣きながら謝罪した。そして数か月後、唯一の家族であった正巳の最期を看取った。

 1人きりとなった麗子は、佐保が受けた苦しみと痛みを胸に刻み、正巳が背負うべき罪も一生背負って生きていくと、佐保に手紙を送った。


【わ行】

●我妻 佐保(わがつま さほ) ★本作の主人公★

 中牧東高校3年3組所属。我妻優美香の1人娘。我妻誠人と美也の孫娘。

 身長160cm。父も名も顔も知らず、母が未成年でなおかつ未婚で自分を産んだため、自らの出生に負い目を持っていた。経済的には何不自由なく暮らしており、その環境を提供してくれた家族の期待に応えたいと、レイプ事件に遭うまでは夜遅くまで勉強していた。超運動音痴であり体育は全く駄目。

 性格は本人いわく「極度のマイナス思考であり、人見知り」であり、人によって態度が違うことは亜由子にも裏サイトに書かれていた。また、「夫婦交換」などといった言葉を高校生にして知っているなど耳年増な一面も。

 外見は母の優美香ほどの美貌ではないが、色白でそれなりに可憐な少女。そのため、隣人の変態・宵川斗紀夫に目を付けられ、彼が作り出す事件(物語)の「主人公(=被害者)」に抜擢されてしまう。

 レイプ事件で心に深い傷を負いながらも、元の日常に戻ろうと、また家族のために強くなろうとする。自分に向かって包丁を突き付ける谷辺や千郷を必死で説得しようとしたり、A子を刺したのち自殺しようとした貴俊を止めようとするなど、芯は強い少女。

 全ての事件が表向きの解決後、彼女も貴俊と同じく「依頼者」が相田千郷であることには疑問を抱き、真の「依頼者」の存在がいるのではと考えた。だが、斗紀夫を心から信頼していたため、本編の最後では斗紀夫の裏の顔に行き当たることはなかった。


●我妻 誠人(わがつま せいと)

 我妻佐保の祖父。我妻美也の夫。我妻優美香の父。59才。身長175cm。

 西洋人のような彫りの深い顔立ちに、還暦近い現在も背筋をシャンと伸ばしている。厳格で古風な雰囲気の持ち主。国立大学を優秀な成績で卒業している。

 妻の美也同様、娘の優美香を高校在学中に妊娠させた男(佐保の父)のことはいまだに許していない模様。同時に優美香の教育にも失敗したと今でも思っている。

 佐保のことは大切に思い、厳しい躾をしつつも、教育費には糸目はつけないつもりであった。


●我妻 美也(わがつま みや)

 我妻佐保の祖母。我妻誠人の妻。我妻優美香の母。59才。身長163cm。

 斗紀夫いわく「気難しそう」とのこと。誠人とは顔つきや表情の作り方が、夫婦というより男女の双子のように似ている。名門女子大学を優秀な成績で卒業している。

 夫の誠人と同様、愛情表現が下手であり、佐保(でも佐保自身も祖父母にはなかなか心を開いてはいなかった)は自分が祖父母に大切に思われている、自分も家族の一員であるとはっきり分かるまでには時間がかかった。  


●我妻 優美香(わがつま ゆみか)

 我妻佐保の母。我妻誠人と我妻美也の1人娘。34才。身長158cm。

 高校在学中に佐保を妊娠したため、中退し未婚のまま佐保を出産した。佐保との相性は非常に良く、佐保が疎外感を感じていた家の中で一番の支えとなる家族であった。早起きは苦手だが、料理やハンドメイドなどは得意。

 外見は、三十路をこえた今も20代前半にしか見えず、いまだに少女の面影を残している可愛い系の超美人であり、その美しさは斗紀夫も絶賛し、佐保の同級生の間でも評判となるほど。だが、頭の方は(学校の成績という意味合いではなく)少し思慮が足りず、残念な感じである。これは本人も自覚している。

 不審者(千郷)に佐保が車から白い液体をかけられそうになった時には、自分の身も顧みず佐保をかばった。

 佐保がいつか互いに信頼し合え、大切にしてくれる男性と巡り合えることを自身の父母同様に祈っている。

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【R15】ここは安全地帯 なずみ智子 @nazumi_tomoko

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