第7話

「ええ、数日前から様子がおかしかったんですよ。特に今年の仕事納め辺りから」


「買い物で出掛けた先から電話した時も、駅前で待ってるって言ったのに黙って切って」


「大晦日はもう一度も寝室から出てこなくて」


「そうなんです。日付が変わる前に急に笑い声が聞こえてきて、慌てて寝室をノックしても返事がなかったんです」


「はい。鍵がかかってたものですから、すぐには入れなくて」


「手にした鍵が合わなくて、下に探しに戻ってドアを開けた時にはもう……主人が天井の梁から……」


「すみません……大丈夫です。心当たりですか? あの、実は……」


「主人にはどうも不倫相手がいたようで、その子が結婚するとか」


「あ……いえ、主人は寝言がひどかったんです。2年前位から女性の名をたびたび――」


「いいんです。もう済んだことですから。それで、その相手の女性が大晦日に結婚するって聞いたんです」


「関係は終わっていたみたいなんですけど。ちらっとそのことを言ったら主人に平手打ちされたので、間違いないと……」


「はい。職場の方から電話があって聞かされました」


「それで大晦日にお祝いをするとかで主人が忘れないように、カレンダーに丸印を付けてくれと頼まれて」


「主人にですか? いいえ。不倫の告げ口をしたみたいで嫌だから、このことは全て内緒にしておいてくれと言われてたんです」


「その方ですか? たしか……菊本……とか――」



(完)

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