読み応え充分

突如として現れた謎の霧によって生き物が乗っ取られ破壊されるようになった世界。霧が現れた原因を知る二人が、霧を止める旅に出る。
各国を通過するたびに良くも悪くも周囲を巻きこみながら、霧によって滅びた最初の国へ向かう。

霧の正体に迫っていく第10話から一気に面白くなる。
剣と魔法の世界だけれど、霧の正体を探っていくアプローチは非常に科学的。
私自身が科学には明るくないため、理解するのに手間取ったけれど、理解したいという気持ちになるほど霧の謎は興味を引いた。

霧は人の命を奪うから悪、という単純な話ではない。
霧によって恩恵を受けた人々もいるし、霧を信仰の対象とする人々もいる。
そもそも霧は止められると確信しているのはリオだけ。リオを守ると決めたキョウも最初は半信半疑だ。
そうした中で霧を止めに行く二人には、味方が少ない。

躍動感のあるバトル描写が良い。
対立する両者の背景や心情が丁寧に描かれ、「どうせ勝つんでしょ」ではなく、「どうするの?」と思いながら読んだ。ドキドキした。

予想を裏切る展開が良い。
「これってこういうことかな」といろいろ予想しながら読んでいたけど見事に外れた。「まさかそうだったとは」と驚いたし、伏線に気付いて「なるほど」とも思った。

読後感が良い。
スッキリとした気持ちになれる。

文章にやや難があるものの、それを補って余りある面白さ。
最後まで読んで損はない。