桜香の怪談
桜香(サクラガ)中学校は自然に恵まれた学校だ。
後方には小さな山が聳え、更に後方にはそれより大きな山が連なる。数十メートル西に行けば森があって、近くに川が流れ、畑や果樹園も多い。
それは俺の住む桜香町が田舎だからっつーのと、土が良いため野菜は育ちやすく、果物は実りやすいからっつーのが理由だ。そんな町の真ん中辺りに建ってるから、桜香中学は自然に恵まれてる。緑が足りないとか言われる日本だが、ここは逆に緑が足りすぎてる。
旧き良き校風というのか、耐震はしてあるけど木造を基本とした学校で所々ギシギシと軋む。ま、創立152年とか言ってりゃそんなもんなんだろうけど。
そんなボr…古い学校には、怪談・七不思議みたいなものが付き物。んで、この桜香中学にも怪談的な話があるらしい。
「童歌?」
「そ、童歌。わらべうたって書いて童歌(ドウカ)。それがこの学校の怪談だ」
目の前の月漉新は持参しただろうコロッケパンを齧りながら言った。
今は昼休み。俺、日葵蒐は親友の新と咲間誠也と一緒に昼飯を食っていた。他愛もない話をしながら弁当をつついてると、ふいに新が話題に出したのが、この学校の怪談だった。
「そのどうかってのが、怪談なのか?」
誠也、今明らかな平仮名発音だったぞ。ついでに口に物入れたまま喋んな。
「あぁ。といってもそれ自体が怪談じ「なくて、童歌になぞらえてある怪談のようだ」
少し口角の端を上げて、新は咀嚼してたパンをゴクリと飲んだ。
コイツは成績優秀で所謂真面目系と言われる類に入るが、実はこういう怪談が好きらしい。俺達以外には話さないらしいけど。前にオカルト研究会の幼馴染みを紹介するか聞いたら(全力で)断られた。人見知りか、コミュ障なんだろ多分。
「で、どういうのなんだ?その童歌っての」
「俺も聞きてぇなそれ!面白そう!」
「うるせぇよ!いきなりはしゃぐな!」
「ごめん蒐!」
「だからうるせぇっつの!」
「いや、お前らが五月蝿い」
俺と誠也を一緒にすんな。その冷めた目やめろ。つか、誠也はとりあえず弁当食うか喋るかの一方に集中しろ。
「はあ……まあ良いよ、いつもの事だし」
「ため息つくんじゃねーよ。腹立つ」
「まあまあ、落ち着けよ。で、話聞かしてくれ!」
「わかった。話そう」
「お前は無視すんじゃねぇ!」
そんな俺の叫びもまた無視され、新はパックのいちごミルクを一口飲んだ。誠也は笑いながら弁当の唐揚げ食ってるし...、それにイラつきながら俺もコーヒー牛乳を勢いよく啜った。やっぱうめぇな、コーヒー牛乳。
いちごミルクを飲んだ新は「さて……」と前置きを置く。
「じゃあ、話すか。この学校の怪談について」
ニヤリ、と珍しく笑う顔はとても薄気味悪いような悪どいようなモンだった。ホントに好きだな、こういうの。
……やっぱ紹介するか、オカルト研究会。
かごめかごめ 籠凛 @kurou09rin21
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