エピローグ

久葉中研究部へようこそ

 野島先生は多目的室の鍵をすり替えたことを咎められたものの、特に処罰は受けず、フロッピーディスクは増田教頭先生から許しを得てフロッピーディスクを譲り受けたそうだ。フロッピーディスクはこの学校ではもう使えないに等しいので、中身を見てしまえば欲しい人に譲る、そういう社会貢献の仕方もあると学べた。一方の川崎先生も特に処罰はないそうで、一応謝罪はあったそうだが、今まで以上に嫌味になった。

 ゴールデンウィークも終わり、俺にとって長かった仮入部期間も終わった。今日までにどこかの部活に入部届を提出しなければならない。

 俺は講義室1に足を踏み入れた。

「あ、来た来た」と篤志が手招きをする。その隣には澄香が座っている。

「やっぱり2人とも入るんだな」

 俺はこう言って2人の近くの席に座る。

「いろいろあったが、良いと思ってな」と篤志。

「どの部活も意欲的だけれど、やっぱりね」と澄香。

 たわいもないことを言っていると、もう1人講義室に入ってきた。

 牧羽さんだった。

「お前も入るのか」

 篤志が少し顔をゆがませる。

「島流しには遭いたくないし。自分で決めたもの。正式に入部するわ」

「なら、よろしくな」と俺はいう。澄香も微笑んで「美緒ちゃん、よろしくね」と言った。

 前の扉から部長の高瀬冬樹先輩が入ってきた。高瀬先輩は教壇の前に立つと話を始めた。

「集まってくれてありがとう。まず、4人には多大なるご迷惑をおかけしました。そのことについては、申し訳ありませんでした」

 高瀬先輩は頭を下げる。

「そんな、いいんですよ。俺だって父さんのことが分かったんですから」

 高瀬先輩は頭を上げると、「そう言ってもらえたのは、うれしいことだよ」とつぶやいた。

「では、顧問の先生が決まったので紹介します。入ってください」

 1人の先生がゆっくりと教室に入ってきた。田村先生だった。

「あれ、田村先生?」

 俺が呼びかけると、田村先生は「全く」とため息をついた。

「いきなりくじ引き大会が始まっててよ、俺の番だって回ってきたら大当たりを引いたと思ったら研究部の顧問に任命されちまったよ。

 まあ、初めのあいさつとしては何だがとにかく、研究部第一顧問田村浩海です。

 そういうことで雑用頼むときはよろしくな」

 顧問決めがくじ引きだったとは。俺たちの中から笑い声が起こった。

「後、忙しくて来られないようだけれど、一応増田先生が副顧問としてついてくれるようになったからさ。なんにせよ、研究部の成長した姿を見てみたい、と」

 驚きの声が上がった。何しろ教頭先生が顧問についてくれるというのだ。

「では、顧問もついたので、君たち4人が入部届を田村先生に提出してくれれば、晴れて正式な部になります」

 高瀬先輩がこう説明する。

「そんな簡単なことなのですか?」

「文化部の場合、部員が5人以上集まって顧問の先生がついてくれれば公式の部活動として生徒総会で認めてもらえるんだ」

 高瀬先輩は言う。

「んじゃ、自己紹介をしたら入部届を出してください」

 田村先生はそう言うと近くの席にどっかと腰を下ろした。

「じゃあお願いします、冬樹先輩!」

 俺がこう言うと、冬樹先輩は一瞬首をかしげたが、「俺から?」と聞いてきた。

「そうですね」

「始めてください!」

 俺たちは冬樹先輩を壇上に留めさせた。

 俺たちは学校の組織の中で生活し、教育を受けていく。でも、その先どうするかはそれぞれが決めていくことだ。研究部だって、ここから始めていく。

 冬樹先輩が大きく息を吸った。

「では部長として改めて。

 久葉中研究部へようこそ」

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久葉中研究部へようこそ 平野真咲 @HiranoShinnsaku

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