森が枯れても、どっこい生きてる砂の中。たくましく暮らすエルフの日常

かつて砂の人造精霊が暴走し、砂漠が国土の多くを占めるようになった国。主人公のヴィリュークは、空飛ぶじゅうたんで砂漠を渡り荷物を配達する運び屋だ。時に遭難者を助け、時に盗賊を圧倒し、時に変わり者のスナネコと出会い、彼は飄々と生きていく。
エルフと言えば、森(あるいは水)と結びついたイメージがある。そんな彼らを砂漠に放り込むという発想が新鮮だ。水蒸気を集めやすい明け方に魔法で水を集約して溜めておく、強い日光を和らげるために魔法の道具で肌の色を変える、随所で見られる彼らのそうした工夫が、作品に独特の空気を生み出しているように思う。
また、魔法の絡まないヴィリュークの生活描写もいい。宿屋の食事を自分で即席サンドイッチに仕立てたり、干物を炙ったり、森林地帯へ戻った際には川で釣りを楽しんだり。気ままに今を楽しむ独り者という風情が全編に漂っていて、魅力的なのだ。

※「第26話 砂エルフ、久しぶりの釣りを楽しむ」まで読んでのレビューです。