第8話 魔女の告白

「わかりました。あなたの立場は理解しました」


 安堂光雄は魔女ラムワイヤーの話を聞き終えて、やっとのことで言葉を絞りだした。


 彼女の告白は恐るべきものだった。

 そして、同情を禁じえないが、同時に、彼の立場ではそれを容認することはできなかった。


「……あなたが人を襲うのを見逃すことはできません」


 安堂光雄はきっぱり言い放った。

 自分がこんなにも決然とした態度を示せると思ってもいなかった。

 だが、不思議と彼の中の正義は炎のように身体から立ち昇っていた。


「そうよね。それはそうよ。ただ、そういうゲームのルールなの。これはデスゲームなのよ」


 悲しそうな瞳で魔女は言った。


「でも、たぶん、あなたに協力することはできるかもしれない」


 安堂光雄は続いて言った。

 魔女ラムワイヤーは少し驚いたような表情で、彼の顔をまじまじと見つめた。


「そんなことができるの?」


「やってみないと分かりませんが」


「確かに、そうね」


 魔女は大きく息を吐きながら、瞳を閉じてしばし黙考した。


「それで、どう手助けしてくれるの?」


 ライムワイヤーは暗い瞳で安堂光雄を見つめた。


「あなたの守護天使とやらを殲滅します」


 安堂光雄はさらりと言ってのけた。


「冗談でしょう! 奴は血も涙もない機械天使よ。あなた達が敵う相手ではないわ」


 ラムワイヤーのエメラルドグリーンの瞳が妖しい光を放っている。


「この新宿、歌舞伎町からあなたが解放される手段はそれしかない。それに勝算がない訳ではない」


 安堂光雄の語った戦略は奇想天外であったが、ラムワイヤーにとって悪い話ではなかった。


「分かったわ。それでいきましょう」


 彼女は最後には同意した。


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匿名捜査官タグ 坂崎文明 @s_f

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