第4話 修行の製菓? ・・・甘い考え

 シロエの紹介状を携え、<ロデリック商会>にて召喚術師としての研鑽(?)を積む事になった。

 <第八商店街>にも声を掛けようという話もあったのだが、ミノリによる内部情報により、今現在は多忙だろう事から見送られた。

 良くは分からないが、ロデリック商会から召喚術師であるなら、こちらでレクチャーしようと、申し出があった。

 召喚術の行使は問題はない(?)のかもしれないが、明らかにオカシナ事が起こる為、その原因究明と対処の為。

 不思議な召喚術を使うという噂は、瞬く間にアキバ中に広まっているらしい。


 〈第8商店街〉のカラシンも立候補したがったのだが、多忙なので遠慮する事になった。

 偶に様子を見に行くつもりではある様だ。


 という訳で、〈ロデリック商会〉に修行しにいく事に。


 〈三日月同盟〉の一同は一寸手が離せなくなったため、(アカ)ツキ姉(=赤くないから)に手を引かれ、〈ロデリック商会〉へ。


「やあ、初めまして。私は〈ロデリック商会〉のギルドマスターのロデリックだ。

 君と同じ召喚術師で、暫くは君の召喚術の先生になるからよろしくね」


 そう言いながら、威圧感を与えない為にも、しゃがみ込んで挨拶をする白衣を着たロデリック。

 そう挨拶をしたのだが、思わぬ展開が起こった。


【オジーチャント、オンナジダァ!】


 とばかりに首っ丈に跳び付かれた!


「へっ!?」


 レベル90の召喚術師ではあるが、子供に跳び付かれる様な経験が無いロデリックは思わずふらついてしまった。

 何とか立ち直り、


「えぇっと、君のお爺さんは、科学者か何かなのかな?」

【ンット、狂喜ノマッドサイエンティスト!】


 それを聞いて喜んでいいのか嘆いて良いのか、かなり悩むロデリック。

 そんな騒ぎの中、


「お? 来たの? へぇー、この子が。私はミカカゲ。で、こっちが私の相棒のアリーね。君のサポート役になったのと、オヤツを作るのが専門だから、宜しくね」

【オー! パテシテ?】

「ん? そーそー、パテシエね。良く知ってたねー」


 そう言いながらポフポフ。


【ママママ、パテシテ! オ菓子屋サンナノ!】

「へぇー、そうなんだぁー。所で、ママママって何かなぁ?」

【ママママ? ママノママ、ダカラオ婆チャンママママ!】

「そっかそっか、成る程」

【ヨロシクー! アリーッテ、使イ魔?】

「そうだよー」

【使イ魔! オ家ニモ居ル!】

「へぇー、どんな使い魔なのかな?」

【ンット、狼サン!】

「そっかそっか。今度見せてねー」

「さて、そろそろ修業を始めてみようか」

【オー!】

「では、手近な所から始めようか」



 その後、暫くすると・・・



 バイン、バインバインボイン!


「うあちちちちっ!」


 と叫びながら口を押さえるブルーフォレストと、


「やっちゃえやっちゃえー!」

「な、何でこうなった!?」


 とけしかけるミカカゲと唖然としているアカツキ。


「おお! これはこれは!」

「ちわーっす、どんな具合? ・・・へ?」


 感嘆しているロデリックと様子を見に来て呆気にとられるカラシン。



   ・・・   ・・・



 経緯を聞いたカラシン。


「ふぅん、なるほどぉー。

 じゃあ、色々試して見るべきなのかもしれないね。

 これを使って何か召喚出来たりしないかな?」


 そう言って取り出したのは、何の変哲もないブラックローズティーの茶葉。


「じゃあ、これを触媒に何か召喚術を掛けて見てくれない?」


 コク!   両手を掲げ、何かを呼ぶような仕草をして見ると、パァッと光ったと思ったら・・・ボン!

 なんだかとっても見覚えのある/○‐○/まる眼鏡に転じていた。


「・・・うん、何だろうね。この召喚術は」



   ・・・   ・・・



 一方その頃、某ギルドホームでは・・・


「あれ? 眼鏡眼鏡、何処へ行ったのかな?」

「どうしたー?」

「いや、眼鏡を外して置いてたら見当たらなくなって」

「どれどれ、見当たらねぇな。随分散らかってるけど、机の上から転がったんじゃないのか? ところで、この茶葉。何かの試供品か?」

「イヤ? そんなモノは無かった筈なんだけど・・・」

「なら休憩がてらお茶にでもしようや」

「そうだね、ひょっこり出て来るかも知れないし。取敢えず予備はっと・・・」



   ・・・   ・・・



 ワケが分からないまま、取敢えず眼鏡はお凸に載せてみた。新たな項目が点滅し始めた!


「うぅむ、なんだかとっても見覚えが・・・」


 と眼鏡を見て呟くアカツキ。


「じゃぁ、次行ってみよー!」



   ・・・   ・・・



「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「わああぁぁぁっ!」

「ひええぇぇぇ!」


 逃げ惑うブルーフォレストとロデリック。どう対処して良いかわからないで混乱状態に陥ったカラシン。その三人に大きく茶色いモノが迫り、それに全身がめり込み、姿が消えた。


その様を見ていたミカカゲとアカツキはと言うと、


「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっはははははははははははははっはははははっはははははははっははっははっはははは! ケフケホ!」

「・・・ははは」


 お腹を抱えて笑い過ぎて喉が枯れたミカカゲと、乾いた笑いのアカツキ。


【オー! 大成功?】


 これで良いの? とばかりにミカカゲの顔を覗き込むデュオ。


「うんうん! 大成功だったよー!」

「それで良いのか!」


 その疑問に応えるミカカゲと突っ込むアカツキ。


「いーのいーの! 面白かったんだから!」

「なわけあるかー!」


 めり込んだまま、ブルーフォレストは吠えた!


「ふぅ」

「はぁ」


 如何にかめり込んだ状態から脱する事が出来た三人に、特にダメージを受けた様子もない。


「うぅーん、結局ワケが解らなかったなぁ」とブルーフォレストがいうと「取敢えずは、当たり障りの無いモノで色々試して見るしかないのかな?」カラシンが後に続いた。


 ロデリックとしては、結果として殆ど何も判らない事が不本意な様だ。


「そうだねー、何が起きるかは謎だけど。プフッ!」


 何が起こったのか思い出し、つい笑ってしまうミカカゲ。


「なら、他にも協力を募って大々的に実験をするべきなんじゃないかな?」

「うぅむ、まだもう暫くは内緒に・・・」


 カラシンがそう言うと、ロデリックとしてはこんな発見はまだまだ秘匿していたいらしい。


「だけど何の情報も無いわけだし、公開して意見を募るのも良いんじゃない?」

「・・・仕方が無いですね。円卓会議の議題に挙げてみましょう」



 挙げてみたら、アッサリと承諾を得た。



   ・・・   ・・・



 取敢えず、模擬戦という形で実践。

 参加者はそれぞれ、自薦他薦という形で円卓会議が指名した。


 色々と行き詰っている〈D.D.D〉のリーゼは気晴らしという名目で教導に参加する事に。


 〈三日月同盟〉からは事情を知ったヘンリエッタが参加表明。


 何が起きても動じないだろうし、何かあった時の為にと〈ログ・ホライズン〉からは直継が指名された。



   ・・・   ・・・



『レディース・アンド・ジェントルメン!

 円卓会議主催、大魔術実験を、ここに開始致しまぁーす!

  アーカコーナァー。

   三日月同盟の食客ぅ、〈召喚術師〉デュオォー!』


 トテトテと闘技場の真ん中辺りまで進み出たデュオ。


『『『キャァー! 可愛いぃー! 頑張ってェー』』』


 黄色い悲鳴に驚きつつ、周囲をきょろきょろ見回して手を振っている。更に黄色い悲鳴が大きくなった!


『続きましてぇ、アーオコーナァー。

 D.D.Dのぉギルマス代理ぃー〈Drei-Klauen〉《三羽烏》の一羽ぁー、〈妖術師〉リーゼェー!!』

 

『『『うおぉぉぉっ! リ・イ・ゼ! リ・イ・ゼ! リ・イ・ゼ! リ・イ・ゼ! リ・イ・ゼ! リ・イ・ゼェー!!』』』

『『『リーゼ教導教官! 負けないでぇー!!』』』


 声援に応える様に杖を掲げるリーゼ。

デュオは教導教官と聞き、おっかなそうに相手を見上げている。


『えー、この試合、実験を兼ねている為、勝敗以前に教導と実験の為の模擬戦ですのでご了承ください。何が起こるのかは、誰にもわかりません。何が起こっても不思議な事ではない、との円卓会議からの通達です』


 観客として訪れた者達は、そのアナウンスでもって、これから何が起こるのかを、固唾をのんで見守る事にした。


『・・・では! レディ・ファイト!』



 開始直後、様子を伺うリーゼに対し召喚術を行使すると、リーゼの口から悲鳴が上がった。


「きゃあぁぁぁぁ! あっつぁぁぁぁ!」


 青く丸い物体が、リーゼの口へと飛び掛かったのだ!


『え!? ア、アレは!?』

『ほほぅ、さっそく使ったようだね』

『うぅーん。確かに良い手ではあるけど、結局アレがどうしてそうなるのか、全然分からないままだったね』


 戸惑う司会を差し置いて、解説として呼ばれた二人の師匠は意見を交換しあっていた。


『ええっと。ロデリックさん、カラシンさん、お二人はこの展開を?』

『そりゃ、間近で見てたから』

『まぁ、話には聞いてたよ』

『だったらアレが何なのか、解説してください!』


 それに応えるべく、ロデリックが口を開いた。


『フム、アレは』


 ごくりと固唾をのんで続きを待つ司会と観衆と対戦者のリーゼ。


『アレは?』

『結局、何なんだか判らなかったが、スライムを召喚したつもりらしい』

『ス、スライム?』

『そーそー、スライム』


 何とかその物体を口から引き離したリーゼ。


「アチッ! あちちっ! これの何処が!?」


 一寸気を抜くと再度口に向かって飛び込もうとしてくるから、熱いのを我慢しながらお手玉の様に放っている。



 カラシンが後を引き継いだ。


『ほら、一時有名だったじゃん。あの肉まん』


 そう言われ、リーゼが熱いのを我慢してソレをシッカリと見てみると、アンマンの様な形で目の様な物が付いている。口に当たる部分は何処にもない。

それが、グイグイと飛び跳ねる様に動き回っているのだ。


 更にロデリックが後を引き継ぐ。


『そもそもあの青は梔子クチナシの色素から作った青だそうだ。それを連想して口を塞ぐ行動(=口無し)を取るのではないかと推測してみているのだが』

『あ、それでかぁ』

『な! なんとぉー! アレはスライムだそうです! ・・・所で、当然の疑問ながら、アレはどう倒せば?』

『ああ、それはね。食べてしまえば問題ない筈だ。ウチのメンバーもそう対処していたよ』

『へぇー、それは面白い』

『・・・だそうです!』


 それを聞いたリーゼは、ならばと思い切って齧り付いた!


『後で食べた本人に聞いたんだが、考えが甘かったらしいよ』

『どう甘かったって?』

『最初は肉まんだと思ったが、熱々のカスタードが口の中一杯に広がったって』


 齧り付いたまま、両手を挙げて降参のポーズをとるリーゼ。


『え、ええっと、リーゼさん。口は、大丈夫ですか?』


 司会が気を使って尋ねると、ふるふると頭を横に振るリーゼ。


『あー、〈妖術師〉は呪文が使えないとねー』


 と言うカラシンのセリフで幕となった。


 リーゼ曰く、そのまま戦っても良かったが、怪我をしない程度に手加減できる自信が無かったとか。


【勝テター!】と万歳しているデュオ。



その後のD.D.Dでは、教導教官ががあんなに頑張ったのだから、自分達もD.D.Dを盛り立てねばといった結束がより一層強くなったとか。

負けたからと抜けようとする者は極僅かだったとか・・・(大嘘です)



   ・・・   ・・・



次回 夢幻の悪夢

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