ログ・ミスチヴァス【可笑しなお菓子な召喚術師?】

トータス

第1話 ここは・・・どこ!?

【様々なの世界へと繋がるを有し、それを管理するカドッカ】

 他人呼んでカドッカ・ワールド。


 そんな世界の片隅に、今日も元気な子供が遊びに来た。


 今日はおっきな図書館に来てるの。

 お姉ちゃん、何だか忙しそーだから、ラテ兄にご本読んで貰うの!


 関係者以外の立ち入りを固く禁ず と書かれた立て札の向こうへ躊躇することなく駆け入るデュオ。

 平積みに積まれた≪危険な≫魔導書の山を幾つも掻き分けて奥へ。

 デュオの侵入を阻む事自体が不可能と諦め、特別許可証【一日図書員】ありったけの防御・封印・探知魔法を掛けた襷を持たせることで対応。

 その先に目的とした人物を見付けた!


【ラテ兄ィー! コノゴ本、読ンデー!】


 何やら古くて分厚い革表紙の本を持って駆けて来る様子を見て、


「デュオ、ゴメンね。今は一寸ちょっと忙しくなってきちゃったから、読んであげられないかな」


 とある内部事情にて手が離せない、目が離せないでいるラテ兄。


「フム、では私が何でも読んであげようね」


 代わりに応えてくれたのは、ラテ兄の肩に乗っていたイタチ風 な姿の長老エルダー


「フフッ。デュオ、良かったね」

【ンー!】


 読んでとせがまれた本には、表紙に綺麗な地平からの日の出が描かれている。


「どれどれ、どの本かなぁ? ・・・ラテ坊や。これは・・・?」

「はい? えっと・・・ああ、まだ未整理の棚にあった本みたいですね。

 魔導書の様な感じがしますが、長老が居るなら問題ないと思います」

「そうかのぅ。何処かで見た覚えがある様な気もするのだが・・・まぁ、問題あるまい」


 そう言いつつ、毛深い懐から小さな眼鏡を取り出して鼻先に載せ、魔法を発動させながら本を開いた。


「どれどれ・・・おかしな召喚術師? 著者・東邦のゲキ?

 この記録は○×△□を召喚せし術師の物語である?

 うぅむ、一寸調べてみるかの。

 読む前に一寸調べるから待っておってな」


 そう言うと、長老は本に意識を集中し、その内容に没頭し始めた。


「あらら、こうなっちゃったら暫くは掛るかな? デュオ、どうする?」

【待ッテルー!】

「そっか、じゃあ僕は・・・達の方を見て来るから、ここで待っててね」

【オー!】



 それから十分後・・・ ZZZzzz 健やかな寝息が響いたとさ。



 更に十分後・・・



 大騒動の末、目的の本を見付け、問題を解決した一行が義弟を捜しに来た。


「あー! こんな所に居た!」

「あーあー、待ち草臥れて寝ちゃったのか」

「ふふふ、可愛い」

「このままじゃなんだな」

「お持ち帰りしますわ!」

「わぁお、足の踏み場もないな」


 ガヤガヤと複数の足音が近づいて来る。

 その中の足の一つが、少し太めのを踏み付けた。


「! フギャァァァッ!」

「わっ! なんか踏んだ!?」

「「「「えっ!?」」」」


 唐突に展開する幾重もの魔法陣。

 その数は次から次へと増え、視界を覆い尽くした!



   ・・・   ・・・



【別世界】

 数名の漆黒のローブを纏った人影が怪しげな動きをしている。

その内の一人が動きを止め、口を開いた。


「今回も駄目か・・・」

「だぁー、こんなんで何時帰れるんだよ!」

「やっぱ、こんなモンじゃ駄目なのかなぁー」

「そりゃ、そう簡単に行くとは思ってないさ。だけど、もしかしてって可能性が無いわけじゃないだろ?」

「まぁなー。新しい魔法とかも創られたって話もあるし、上手く行くかも知れねぇし」

「とにかく、今回は失敗だな! 解散解散!」

「アー、やれやれ」

「草臥れ儲けだったな」

「次はどうすっか・・・」


 全員が立ち去り、誰も居なくなった。

それから暫く後、魔法陣が輝きを放ち始めた。



   ・・・   ・・・



 シロエは円卓会議の執務室で、ある所からの報告書に目を通していた。

その書類を片手に、おもむろに念話を繋げた。


【はい、ミノリです。シロエさん、どうかしましたか?】

「・・・ミノリ、今どうしてる?」

【えっと、今は依頼されたクエストをこなして、これからアキバの街へ帰る途中です】

「そっか、急で悪いんだけど、一寸寄り道をして貰えないかな?」

【それは構いませんけど・・・何かあったんですか?】

「ん、一寸気になってね。シバマタにあるヤマモト邸の洞窟を調べて貰えないかと思って」

【そこに何かあるんですか?】

「分からない。ただ、そこで何やら儀式らしき事が行われているらしい。その儀式が何なのかは判らない。だけど冒険者がやっている事だからね、念の為に調べて貰っても良いかい?」

【ハイ! シロエさんのお役に立てるんだったら調べて来ます!】

「うん、頼んだよ。何をしているのかだけでも調べて貰えればいいから」

【ハイ!】



   ・・・   ・・・



 ふぇ? ココ、ドコ?


 起きて気が付くと、そこは薄暗い洞窟だった。


 正面には祭壇、様々な供物としての食べ物などが並んでいる。

足元には何やら見慣れた様な魔法陣が描かれている。

何か臭うのだが、その臭いの元は今は無い様だ。


 取敢えず、お腹が空いたから食べ物を摘み食いしてみるが・・・不味まずい。果物は美味おいしい!


 一頻ひとしきり果物を食べ、誰も居ないみたいだし、お外へGo!


 お外は見知らぬ森の中。フコー、フコーという音と共に目の前が陰った。振り返って見ると、クマさんと出会った。


 どうやら洞窟はクマの寝床になっていた様だ。冒険者が押し寄せた時は、その力量差に身の危険を感じ立ち去ったが、冒険者が立ち去ったのを見計らって戻って来た様だった。


 そのクマさんの右手が上がり切ったその時。


「あ! 危ない!」


 ギンッ! と音を立て、目の前には白衣に緋袴の背中が現れた。その前では、杖を構えた女の人の前で不思議な文様が爪を遮っていた。


「トウヤッ!」

「おうっ!」


 更にその前に飛び出した相手が、クマに一太刀浴びせ、刀の柄を掌に叩き付けた!


「〈武士の挑戦〉! これでコイツはオレしか見えなくなってる筈! ミノリ!」

「うん! さっ、こっちへ!」


 軽々と抱き上げられ、安全な所へと運ばれた。


「よし! トウヤ、そこから離れるんだ!」

「オウッ!」

「〈フロストスピア〉!」


 クマさんが凍りつき、動けなくなっている所をすかさず次の呪文、


「〈フレアアロー〉!」


 更に炎の矢がぶつかり粉々に砕け散った!


「ふっ、見たかい? ミス・五十鈴」

「怖かったね、もう大丈夫だからねー!」


 助けた子供を抱えたまま、見て居なかった様子。

 チョッピリがっくりとしたルディ。


「ふぅ、でもこんな所で子供が居るなんて。君、何処から来たのかな?」

「えっと、お父さんかお母さんは?」

「名前、何て言うんだ?」

「怪我はないですか?」


 矢継ぎ早な質問に目を白黒させている相手を目にし、気を取り直して尋ねるべき事を口にするルディ。


「き、君達・・・そんな一度に詰め寄ったら、答え様にも答えられないんじゃないか?

彼はビックリして声も出ない様だが」

「そ、そう言えば・・・。えっと、私はミノリ。で、こっちがトウヤ」

「トウヤだ、宜しくな!」

「えっと、セララです!」

「私は五十鈴ね!」

「ボクはルンデルハウス=コード。親しくしている皆からはルディと呼ばれているよ。

それで、君の名前を伺っても良いだろうか?」

【・・・デュオ】


 魔法を使っていた事から、試しに念話で話しかけて見た。


「ん? 何か聞こえた気がするが・・・」

「えっと、もしかして喋れないのかな?」


 ミノリがそう聞いて来た言葉に対し、コクコク! と頷きを返した。どうやら魔法は魔法でも違う形式のモノの様だ。

 ・・・だったら、暫くは黙っていた方が良いのかな? と子供らしくないかもしれない事を考えている。

 類い希なる、数奇な経験は山ほど。でも、そんな経験があるからこそ、慌てず騒がずに、思いっきり!


「そっか、ゴメンね。嫌だったかな?」


 そう五十鈴が尋ねる問いに対し、フルフル!


「えっと、あなたのお名前、書けるかな?」


 ミノリはそう言うと、バッグから紙とペンを取り出し持たせて貰う。


 未だにそんなに上手くもないのだが、【デュオ】と書き記した。


「デュ、オ。デュオ君、で良いのかな?」


 コクコク!


「で、誰かと一緒だったりしたのか?」


 そう言われ、辺りを見回して見ると、全く見知らぬ場所である事に気が付いた。兎に角、紙に姉と一緒に居た事を書いて見た。


 小さな人形ひとがたで自分を指差し、それより少しだけ大きめの人形をサイドテールに書き上げた。


「えっと・・・お姉さん? と一緒だったんだね?」


 コクコク!


「でもなぁ、この辺じゃ他に誰も居そうもないし・・・」


 もしや、さっきのモンスター等の手に掛ってしまったのかもしれない、そう考えてしまった。咄嗟の事とはいえ、助けが遅かったのかと。


「と、兎に角、この辺をもう一度捜してみよう!」

「おう!」

「うん!」

「ハイ!」

「フッ、このボクに任せたまえ!」

「そうだね!」



 一時間ほど経過、捜せど捜せど誰も何も見付からない。



「う、ど、どうしたら・・・」

「こ、このままだと夜になっちゃいます」

「うぅーん、仕方が無い。一旦アキバの街に戻ろう! もしかしたら、そっちに逃げてるかもしれないし!」

「そ、そうだな! きっとそうだよ!」

「じゃあ、一度ギルドに連絡を入れておきますね!」



   ・・・   ・・・



アキバの街


 賑やかな町並み、活気あふれるアキバの町に置いて異質な存在、それは迷子。

さして狭くもないが、そこでの噂はあっと言う間に広がる。悪評は特に・・・足が早い。


「腹グロ眼鏡がまたやらかしたらしい!」

「今度は何だ?」

「子供を作ったらしい!」

「「「何ぃー!?」」」

「で、相手は誰なんだ!?」

「誰だ!?」

「そ、それは判らん! だが、外見は判った!」

 =迷子の親捜しという事で、外見の公開と情報収集の為、張り紙が配られている。

「・・・誰だ?」

「さぁ・・・! も、もしや! 隠し子か!」

「そ、そうだ! きっとそうに違いない!」



 そんな噂が飛び交ったそうな。



 その噂のとばっちりだかで、ログ・ホライズンのギルドホール前には人だかりが・・・

帰るに帰れなくなったそうな。



【・・・ミノリ、取敢えず迷子のお客さんと三日月同盟クレセント・ムーンに】

「はい! スミマセン、スミマセン!」



三日月同盟クレセント・ムーン ギルド・ホール


「えっと、それで情報は・・・」

「それがなぁ、ちぃーとも集まらかったんよ。何かシロ坊が子供作ったとか、隠し児がおったとかいう話になっとって」


 そう話す三日月同盟のギルマスの胸には、子供が埋まっていた。

 何故か【もー慣れた】といった具合に大人しくしている。であった当初は、ぎゅ~っと抱きしめられてジタバタ暴れていたが、取敢えずは呼吸が出来る限りは暴れなくなった。


 一方では、


「マリエ、そろそろ放して上げないとその子が窒息してしまうわよ」


 そう言うヘンリエッタは落ち着いた様子ではあるが、内心では興奮気味で自分が抱っこしたいと言った具合だ。


「えぇー。この子、良え子やし、もうちょっと」

「駄目です。もう暗くなってるし、子供はおねむの時間ですよ。

さぁ、お着替えしてお姉ちゃん達と一緒に寝ましょうねー」


 フラフラと眠そうに、コクリと頷いた。


「あ、ヘンリエッタさん、すみません」

「いえいえ、良いんですよ。それに、急なお客さんじゃ、何の準備も出来ませんでしょうし」

「すみません。それじゃあ、お言葉に甘えて」

「じゃあ、また明日な!」


 バイバーイ、とばかりに手を振るう。


「さて、この子に似合う服は何が有るかしら♪」

「ヘンリエッター、着せ替えは程々になぁー」

「分かっていますわ! さぁ! 似合うサイズがあれば良いのだけど・・・。

無ければ創ればいいわよね!」


 その後、三日月同盟の被服班総出で色々と作ったとか?



   ・・・   ・・・



翌日、色々と調べてみた結果・・・


 名前:デュオ


 種族名の所はノイズが走り不明・・・もしかしたら、知られざるイベントNPC? と思われた。


 メイン職業:召喚師  Lv.1

 サブ職業:小悪魔   Lv.7


 フレンドリストには問題なく登録出来たらしい。お陰で難無く念話を使用。


 どこから来たのかは、結局よく分からない。日本語が通じる事や、日本の事情についても当たり障りなく知っている事が分かり、取敢えずは何がしかの事件・事故などで大災害以降の記憶が無いと推定されているらしい。

 取敢えずは三日月同盟にゲスト(=女性陣のオモチャ)登録され、暫くはお世話になる事に・・・散々可愛がられる?

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