先週2023年3月19日、第40回大阪女性文芸賞の授賞式に、いち参列者として出席してきました。
受賞された「ア・マザー」の寺澤あめさん、「影み。」の堀越雪瑚さん、本当におめでとうございます!
私自身は第31回の受賞者で、この賞および代表の尾川さんには大変お世話になりました。心が折れそうなときも、大阪女性文芸賞をいただけたという「心の冠」が支えてくれ、なんとか書き続けてこられました。
今回の第40回をもっていったん賞は中止とのことなので、自分自身が覚えておくために近況ノートに書いておこうと思います。
受賞作が掲載されている『鐘』35号に、代表の尾川さんが賞の歴史を寄稿されているのですが、読んでいると胸が熱くなります。
大阪女性文芸賞は今から四十年前、「男性中心の文学世界に一石を投じようと女性の書き手たちが立ち上がって創設した賞」です。
当時は賞の選考委員も男性ばかりで、「こんな女(主人公)は嫌だ」と作品の良し悪し以前に、偏った男性の物差しで簡単に落とされることがあり苦い思いを持つことが多かったそうです。そこで「男性には理解され難い作品をもきちんと光を当てるような、女性を対象にした賞を創設しよう」というパッションで立ち上げ、運営メンバーが身銭を切り寄付を集めてスタートした、とあります。
様々な苦労の中、賛同者や企業協賛が集まり、黒井千次先生や津島佑子先生といった大御所作家が選考委員を引き受けてくださっていました。私が小説を書き始めた頃には、大阪女性文芸賞は女性の書き手が憧れる地方文学賞で、私もいつか受賞したいと思いながら原稿を応募していました。
そんな中で社会情勢が変わり、かつて「女流」などと言われていた女性作家の本も、書店の棚に男女関係なくアイウエオ順で並ぶようになり、「『女性を対象にした賞』=『女性のみを対象にした賞』というそれまでとは若干ですがニュアンスが違う受け止められ方をされ始め」たそうです。
実際、女性だけに賞を与える意義が薄れた、逆差別と言われかねない、との意見も出てきた時期。そこに会員の高齢化や代表のご病気等もあり、40回を区切りに「中止」の決断を下されたとあります。
私も本当は下読みなどで賞の運営に貢献するべきだったのですが、プロになるためにあがける残り時間を考え焦っていたため、執筆時間の確保を理由に一度お断りしてしまいました。これについては今も心苦しく思っています。
女性だけに賞を与える意義については、私自身が若い頃ですら、まだまだ女性の地位は対等とはいえなく、女性の実力にスポットライトを当てる取り組みは必要であると、肌感覚で思っていました。が、様々な面で垣根が取り払われたことで逆に、今まで女性の地位向上のために尽力してきた賞がいったん中止となるのは、少し複雑な気持ちです。
現在、書き手が性別に関係なく表現できるようになってきたのは、かつて不平等に憤り頑張ってくださった先輩方のおかげであることを忘れずにいたい、そしてそのパッションを受け継いで、書き続けていきたいと思います。
あなた方のお陰で今があります。感謝を込めて。