私の故郷は《冬》がながく、《春》の遠い地域です。
《冬》は薄氷の鱗を携えた龍神の姿を取って、尾根を駈けおり、山麓に雪を降らせにやって参ります。おろろんと啼きながら、白樺林を凍てつかせる颪は、龍神の咆吼か。きびしい季節ではありますが、そればかりではありません。窓の外に拡がる銀細工の落葉松は息を呑むほどに美しく、朝などは空気そのものがきらきらと瞬いています。
みな、《春》にこがれながら、ひと時眠りについたように静まるのです……
《季節殺し》
最後までお読みくださいました皆様がたに厚く御礼を申し上げます。季節を愛し、季節が愛した者達の幻想譚…如何だったでしょうか。季節の美しさと慈愛が皆様がたの胸に、目蓋に、届いたのであればそれほど嬉しいことはございません。
連載中、完結後ともに、暖かきご感想やお星様を多数いただき、重ねて感謝致します。レビューを書いてくださいました春子さま、蟹平さま、絢谷りつこさま、華や式人さま、夷也薊さま、お星さまをくださった木古おうみさま、百夜池 水零さま、菖蒲あやめさま、時葉眠さま……真にありがとうございました!
ひと足先に春が訪れたような暖かきお言葉の数々、何度も読み返しております。
数えきれないほどのハートも励みになりました。
まだまだ冬が続きますが、寒さを乗り越えれば、また春が巡って参ります。麗らかな春。こちらの春は夢から覚めたやまねの姿をして、里から麓へころころと転がりながらやって参ります。桜や菜の花の香りをひきつれて。
皆様がたのところにも美しき春が訪れますように。
そう願いつつ、筆を置こうと思います。
また新たな物語でお逢いできることを祈ります。