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《季節殺し》後書き

私の故郷は《冬》がながく、《春》の遠い地域です。
《冬》は薄氷の鱗を携えた龍神の姿を取って、尾根を駈けおり、山麓に雪を降らせにやって参ります。おろろんと啼きながら、白樺林を凍てつかせる颪は、龍神の咆吼か。きびしい季節ではありますが、そればかりではありません。窓の外に拡がる銀細工の落葉松は息を呑むほどに美しく、朝などは空気そのものがきらきらと瞬いています。
みな、《春》にこがれながら、ひと時眠りについたように静まるのです……

《季節殺し》
最後までお読みくださいました皆様がたに厚く御礼を申し上げます。季節を愛し、季節が愛した者達の幻想譚…如何だったでしょうか。季節の美しさと慈愛が皆様がたの胸に、目蓋に、届いたのであればそれほど嬉しいことはございません。
連載中、完結後ともに、暖かきご感想やお星様を多数いただき、重ねて感謝致します。レビューを書いてくださいました春子さま、蟹平さま、絢谷りつこさま、華や式人さま、夷也薊さま、お星さまをくださった木古おうみさま、百夜池 水零さま、菖蒲あやめさま、時葉眠さま……真にありがとうございました!
ひと足先に春が訪れたような暖かきお言葉の数々、何度も読み返しております。
数えきれないほどのハートも励みになりました。

まだまだ冬が続きますが、寒さを乗り越えれば、また春が巡って参ります。麗らかな春。こちらの春は夢から覚めたやまねの姿をして、里から麓へころころと転がりながらやって参ります。桜や菜の花の香りをひきつれて。

皆様がたのところにも美しき春が訪れますように。
そう願いつつ、筆を置こうと思います。

また新たな物語でお逢いできることを祈ります。

4件のコメント

  • 読みました! 読み切りました!
    なんて暖かい物語なんでしょうか!!
    しかし!
    星を付けたもののレビューが! レビューが!
    皆々様の素晴らしいレビューを読んでしまった後だと、どうしても内容が似通ってしまい上手いこと表現できませんでした!
    でも、本当に綺麗でした。
    ずっとずっと辛く苦しく耐え抜いて来た《冬》と言う名の人生に《春》が訪れるクライマックスは圧巻です。
    これこそアニメ映画で見てみたいと思わせられるほどの映像美です!
    脳内では勝手にアニメ再生されていました。
    この映像はもう、ジブリか新海監督にどうにかして実現して欲しい。
    全然原作として劣ってないと思います。
    アニメ映画の長編シナリオコンテストとかあったら応募して欲しいぐらいです。

    何やら風邪をひかれたとか。
    まだまだこれから寒さが一段と厳しさを増す季節です。
    仕事も大切ですが、まず完全復活が最優先です。
    温かくして、乾燥を裂けて、しっかり食べて休んで下さいね!
  • 橘 月さん 最後までお読みいただきまして、真にありがとうございます。
    お星さままで賜り、こうして感想も御伝えいただき、重ねて感謝致します。どんな言葉でも、他の感想と被っていても橘 月さんの御言葉というだけで私は嬉しいのですが、ひとつひとつに丁寧に感想を賜っているので充分に幸福です(*^^*)

    そうなのです。辛抱と苦難の《冬》がやっと《新たな春》に季節を巡らせて眠りにつくという結末が、私としてはほんとうに美しい終わりかたで――それぞれの《冬》があったのだと思います。ハルビアにはハルビアの《冬》が。長には長の《冬》が――そうして季節が報われることがセツの願いでもあるので、セツもまたどこかで報われています。
    橘 月さんは私の小説を映像として受けとめてくださるので、とても嬉しいです。橘 月さんにそのように仰っていただくごとに、文章が色づき、風景が動き始めるような気が致します。
    私は小説を書くときに《視覚》に訴えかけることを大事にしています。小説に映像はありませんが、だからこそ。ただ、この書き方はただしいものではないだとも想っています。小説の強みはもっと《感情》に訴えかけることであって、《視覚》に訴える書き方では読者の幅を狭めてしまうのだと。
    それでも、橘 月さんのように言葉の羅列から映像を拾いあげてくださる御方がいるかぎりは、この書き方を続けていきたいとも想います(*^^*) ほんとうにありがとうございます。

    あ、そうなのです。ご心配をおかけして、すみません。十年振りくらいに風邪をひいてしまいました。なにかと仕事に手をつけたくなる癖を封じて、こじらせてしまわないように休養を心掛けますね。おかげさまでだいぶんと回復してきたので、後一息だと思います。
    暖かいお言葉に感謝です。
  • こんばんは~
    どんな言葉でも……とのことだったので、ちょっと頑張って書いてきました。
    折角の素晴らしい物語なのに、魅力を伝えきれずにヤキモキしましたがお許しください。

    夢見里さんの物語は、私にとってはとても映像が拾いやすいです。(よく私は風景描写を疎かにしていることがあるので、勝手に勉強させてもらっています)。
    ですが、特に強烈に風景や情景が広がって見える時があるんです。
    アニメで言えば、パソコンに向かっている自分を中心に、世界が一瞬にして変わって行くような場面に似たような心理状態と言うか、脳内状態になります。
    きっと、夢見里さんの見ている映像なのかな? と勝手に思って読んでいます。

    コメントの方では、季節が春と冬に限っていたから……と言うことが描かれていましたが、私は四季を全て書く必要はなかったと思っています。稀に編集さんのコメントとか総評とかを読んでいて、「そこなの? そこが問題なの?」と思うことはありますが、夢見里さんは今のままを貫いてほしいと思います。

    自分を貫いてスタートラインに立てないよりは、迎合して行く方がいいんじゃないかと自分も思ったことはありますが、無理に変えようとするとそれこそなにも書けなくなりますからね(去年一年がそうでした)。自分は自分。自分らしい書き方は変えられるものではありませんから。だからこそ、同じ作品でも出す場所を変えてみるのも一つの手だと、ありがたいアドバイスを受けて今年は電撃以外にもチャレンジしてみようと思っています。
    是非夢見里さんも気が向いたらチャレンジしてみてください。
    と言っても、一般公募とかになると、ホントに自分の出していいの? カテゴリーエラーじゃないの? と不安いっぱいで二の足踏みまくりですけれど(;^ω^)
  • 橘 月さん…! 素晴らしいレビューを頂戴致しまして、真にありがとうございます…! やっぱり素敵な言葉の数々だったではありませんか…! 寒さと暖かさを取りあげて書いてくださり、とても嬉しかったです。あとは絵になる小説だとも仰っていただき、有難いです…!
    映像を拾いやすい…ですか。私が想像のなかの映像を集めながらそれを言葉にし、物語としているからでしょうかね。あっ、あっ、その感覚わかります。自分自身のまわりに世界が拡がるような……《新たな春》が飛びまわるごとに大地が緑に変わっていくあたりなんかは、特にそんなかんじで書いておりました。おなじ映像を共有できているなんて嬉しいです(*^^*) ほんとうに物書き冥利につきます…!

    四季を書く必要はなかった。と仰っていただいて、なんだかすとんと。胸にもやもやとしていたものが落ちていった気が致します。私は構成があまり得意ではなく、当時考え抜いて四季ではなく二季を主軸に据えたのですが、その選択が誰からみても間違いなのであれば、私が考えに考えたことは全部裏目に出るのではないかと実はなやんでおりました。それぞれのご意見があるのは当然のことです。ただ二季でよかったといってくださる御方もいるのだと思うだけで、心強いです。ありがとうございます。

    私も無理に自分を変えて、異世界転生ものを書いてみたことがあったのです。自分なりにあれこれ考えて、手を抜いたつもりはなかったのですが、まあ、はい、ひどいものでした。黒歴史です。
    それからは自分の好きな路線で全身全霊を賭すことに致しております。
    これからも頑張りますね。
    橘 月さんは、今年は電撃大賞の他にも挑戦なさるのですね。私は遅筆なのでどうなるかはわかりませんが、有難いことに他の御方からも一般文芸あたりをすすめていただいているので、書ければ挑戦したいと想っています。橘 月さんもおなじ挑戦をなさるのだと思うと、心強いです(*^▽^*)
    取り敢えず風邪を治さないと、ですね。
    今晩も寒いです。どうか暖かくしてお過ごしくださいませ。
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