鷹来タラ先生による表題作の紹介漫画がメディアワークス文庫様の公式x(旧Twitter)上で公開されました。これが驚くくらい綺麗なのです。で、紹介してみたり。
美麗以外言葉がない作画も構図も背景もさることながら、ソフィーナとフェルドリックの表情…!!
4ページの中で、ソフィーナの心の揺れも、フェルドリックの癖も葛藤も、見事に表現してくださっていまして、技術もだけど、だけじゃないのがすごいなあ、と。
どのコマも大好き!ですが、並んで立つ、顔を引きつらせるソフィーナと胡散臭さ絶好調のフェルドリック、そして――最終コマの悩めるフェルドリックとその襟元!が!!
……うん、今週バタバタしてたから、今ちょっとハイです。
「いや、いつもと変わんないよ?」と思ったあなた――お付き合いとご理解、ありがとうございます。反省します。が、あまり結果に結びついたことはありません←もちろん目は逸らしている
――ではなく。
ご興味があれば、のぞいてみてください、ということで、メディアワークス文庫様の公式xです。
https://twitter.com/mwbunkoなお、鷹来先生のxはこちらでご紹介していいかわからないので、『鷹来タラ』で検索してみていただければ、と思います。
4月12日には『家から逃げ出したい私が、うっかり憧れの大魔法使い様を買ってしまったら』(琴子先生原作、スクウェア・エニックス社)の新刊も出るそうです。これも楽しいよ!とこっそり叫んでみます。
そして、短編。
嬉しさとハイテンションに任せてたった今書いたので、こちらももしよろしければどうぞ。
番外編の「交ざれども混ざらず」の後日談的なものです。
ではおやすみなさい。
あなたも良い夜を&花ある週末となりますように!
P.S.タイトル間違えてた(いてて)、修正した!
* * *
カザック王城では、月に一度ほど夜会が開かれる。
会場でフェルドリックと共に人に囲まれていたソフィーナは、周囲の人々の注意が逸れたことに気付いて、そちらに視線を向けた。
(……ロンデール公爵夫妻だわ)
目の合った彼から温かい微笑みを受け、顔を綻ばせる。
王后・フェルドリック派の政敵の筆頭だと聞いているが、やはり敵意は感じない。
「……仲がいいようだね」
(ん?)
フェルドリックの平坦な声に、ソフィーナは横の彼を振り仰いだ。
完全な無表情――は、彼が強い感情を隠そうとする時のものだ。が、理由がわからない。
(敵だから、警戒しろということ? でも個人的には親しいわよね……?)
ソフィーナが困惑と共に目を瞬かせた次の瞬間には、彼はいつもの輝かしい笑みを顔に貼り付けていた。
見間違いだったのかしら、と内心で戸惑いつつ、ソフィーナも笑顔を繕う。
「やあ、アンドリュー、久しいな」
「ご壮健のご様子、何よりの喜びです」
そうしてフェルドリックは敵でありながら、長く共に過ごした理解者の一人でもある公爵を、親しみと共に出迎えた。
夫妻としばらく歓談を交わし、ソフィーナは今そのロンデール公爵とダンスの真っ最中だ。少し離れた場所では、フェルドリックが公爵夫人と踊っている。
老若男女から様々な思惑を含んだ視線が注がれる中、ソフィーナが会場の楽団の指揮者に目くばせを送れば、心持ち音楽が早くなった。
眉を跳ね上げたロンデール公爵がくすりと笑う。直後に足運びが曲のテンポに合わせて早まり、自然と周囲と距離が生まれた。
「あなたにお礼を――あの時かけていただいた言葉の意味が、ようやく理解できるようになりました」
『あなたにつけられた騎士は、自らの信念に沿って動く人です。そして、殿下はそれをご承知で、あなたにお付けになった――私はそう確信しています』
以前フェルドリックとの関係を心配してくれていたことへの礼を口にすれば、公爵は安堵の混ざった微笑を見せた。
「あの人も相方のバードナー家の彼も自由でしょう。あなたを尊重するために、殿下はどんなドレスより宝石より価値のある贈り物をなさった――私や妻を含め、気付く者は気付いておりました。なのに、ご本人のあなたにはまったく伝えていらっしゃらない。本当に困ったものです」
フェルドリックを言葉通り困った弟のように扱い、公爵は苦笑した。そして、「ご理解いただけて本当に良かったです」と我が事のように息を吐き出す。
それから彼はソフィーナの背後へと視線を移し、「そういう方ですので、ついでにもう少しお節介を」と人の悪い笑みを漏らした。
「妃殿下へのダンスの申し込みが少ないのは、妃殿下が遠巻きにされているからではありません」
「え」
「殿下のせいです。私ですら散々睨まれましたから」
「そ、んなことは……」
「ないと思われますか? 次の次のターンで位置を入れ替えますから、ご自身でお確かめください」
「え、ええ……」
(……あ)
向きを変えた瞬間、ソフィーナの目はフェルドリックの姿を的確にとらえた。
彼の視線は作法に反して、相手の夫人には向いていない。心持ち眉根を寄せ、金と緑の瞳を眇めて、ロンデール公爵を見ている。
そして、ソフィーナと目が合うなり、顔をこわばらせ、慌てて顔を背けた。微妙にステップが乱れ、よく見れば頬が染まっているようにも見える。
「……」
つられて顔に血が集まってくる。
「ご理解いただけましたか。ところで、あまり赤くなられると、また誤解されてしまいますので、その辺で」
(……また? ひょっとして、あの晩の二回目の踊りで彼が無言だったのも不機嫌だったわけじゃなくて――)
「ああ、もっと睨まれてしまいました」
公爵は柔らかく微笑んだままだったが、ソフィーナのみならず、フェルドリックもからかわれている気がした。
ちなみにその後――ソフィーナはフェルドリックと延々と踊る羽目になった。
見守るロンデール公爵の生暖かい目が、そのうち周りの人たちにも広がっていき、ソフィーナが居たたまれなくなったことは言うまでもない。