影村沙羅は、分子生物学と統計学の二刀流の研究者として、生活している。 　影村沙羅は、一人で二刀流なのではなく、それぞれ一つの専攻を持つ双子が、一人として振る舞っているのだった。…

　生存のために最善を尽くしてきた僕には、生存以外の目的がない。 　誰かを推し、そこに気持ちや金銭といったリソースをつぎこむなんて、ありえない。 　そんな僕に、死んだ妹の夫が会い…

　一人飲みをしたくて入った居酒屋で、遠野要は高校時代の同級生、糸川凪に声をかけられる。 　人の顔を覚えられない要でも、糸川凪の名前は覚えていた。糸川凪は生まれつき右耳がほぼ聴こえ…

　遠野要の部屋には、テレビがない。お笑いもドラマも、おもしろくないからだ。 　そんなある日、要は、弟の通う専門学校の学校祭で、ヘアカットのモデルをすることになる。

　祖父の米寿の祝いの席を抜け出した糸川凪は、高校の同級生、遠野要と出会う。 　要の用事につきあわされた凪は、愚痴を吐く。

　片耳難聴の服飾デザイナー、糸川凪は、イベントでいいデザインを見つけ、デザイナー鋼と居酒屋に行く。 　そこで、鋼がデザイナーを志す理由を聞く。

　大学の卒業式の後の飲み会を抜け出した遠野要は、人気の少ない研究棟の裏で、白銀の髪と蒼の瞳の美青年に出会う。水無月悠と名乗ったその青年は、「予測できる喪失を嘆く意味がわからない」…

　片耳難聴の服飾デザイナー、糸川凪は、一人暮らしを始めるために、自室を整理していた。整理の過程で、過去の日記を見つける。 　躊躇なく日記を処分する凪の前に現れたのは、孤独を抱えた…

　フリーランスの服飾デザイナー、糸川凪は、新作の宣伝用の写真のモデルに撮影をキャンセルされ、困っていた。その話を聞いた後輩デザイナー、遠野鋼から、知り合いを借りることになる。鋼が…

　糸川凪のデザインした新作のモデルを遠野要に頼んで、撮影や新作発表を行ってから数日後。反響について、要を凪に紹介した、要の弟、鋼と三人で通話を繋いだ。鋼がいたおかげで、冷え切った…

　凪さんが遠くに引っ越したあの日、日記帳を買った。孤独に慣れるために。