• 異世界ファンタジー

VRMMOの続き ヒロインとの出会い


☆ヒロインとの出会い編☆

 森の奥で聞こえた悲鳴。僕達はドラヤキの背に乗ってその声の元に向かって走らせた。シュトリーを戦闘用のスパイダーモード(モノアイ頭部にクモ足、両手ガトリング)にしといてよかった。さすがにドラヤキの背に三人は乗れないからメイドロボモードだとシュトリーを一回仕舞うのに時間を取られただろう。他のパーツは画面操作で交換できるのに、頭パーツだけは手作業でチップを付け替える仕様を運営はなんとかしてくれないかな? 『私らしく』の攻略サイトやギルド一階の情報掲示板とかアーヤが動画で紹介してくれたことでチップの事やロボットを使役できる事はだいぶ知れ渡ったのでこうしてドラヤキに乗っていても目立たないが、シュトリーの女性型頭部は他で見た事が無い。山田さんに聞いたが「私らしく」にも完全な人型の見た目のパーツ発見の情報は来ていないらしい。
 そんな訳でシュトリー作の完全な人型の体のメイドモードならプレイヤーの一人に見られてバレないが、さすがにスパイダーモードを女性頭でやると目立ちすぎる。うっかり誰かにスクショを撮られ掲示板にアップされようモノならば大騒ぎだ。
 だからスパイダーモードにする時は明らかにロボな頭部のモノアイを使っている。そして小型なスパイダーモードでは移動時はドラヤキの頭に乗せられている。欠点があるとしたら小さいために音声を出す機能がなく喋れない事だろうか?

 情報と言えば、シュトリーの本体である『従者のチップ』も僕以外が手に入れたという情報がない。単純に持っている人が黙っているだけなのか、僕以外は手に入れていないのかは不明だけど。
 だからシュトリーの事は能力面でよくわからない。
 ドラヤキの『騎士のチップ』はけっこうドロップするようなので、どんな装備でどんな指示を出せばどれくらいでスキルが手に入るのかとか、馬の下半身をセット時に能力が上昇するとか、どの武器が得意で苦手とか攻略サイトに情報が集まっている。
『従者のチップ』の特殊能力に関していえば、全てのスキルが覚えられるがそれに当たるかもしれない。今の所攻略サイトを見て使えそうなロボのスキルを全部試してみたら偶然全部覚えれただけの可能性もあるので違うかもしれないけど……。ほんと、シュトリーって何なんだろう? 山田さんとトッポはボスの最初の討伐者に対する特別な報酬なんじゃないかというものだった。キマシ工場跡地以外のチップが手に入る隠しエリアを最初にクリアした人が『従者のチップ』を手に入れるか、同じようにレアなチップを手に入れた場合か、またはキマシ工場跡地で誰かが『従者のチップ』を手に入れたら判断材料になるんだけどな……。


 そんな事を考えてる間に僕達は目的地に到着した。

 大量の植物系や動物系のエネミーに囲まれた二人の女性プレイヤー。どちらも片手に剣、もう片方に盾を装備していて、武器も防具も初期装備。
 片方がもう片方を支えるようにしている。よく見ると寄りかかっている方は左足が欠損状態を示す灰色になっている。
 欠損状態は攻撃を受けた部位が失われたと判断されると起こる状態異常でその部位は自由に動かせなくなるし、障害物や地面をすり抜ける。見た目では灰色なだけだが、ゲームの判断的には存在していないという事らしい。治すには専用のアイテムが必用だ。
 初期装備は武器も防具も総プレイ時間が二十時間以内なら耐久値1以下にならず、破壊される事は無いんだがもう破壊手前のボロボロな状態。HPもあとほんの少しのかなりギリギリな状態だ。
 別にここでやられた所でマザーの所に戻されて、所持金が半分になり、今回のログインで手に入れたアイテムがランダムでロストして、全部のスキルの使用回数がゼロになり一時間は回数回復が始まらないというだけだ。ゲームなのだから本当に死ぬわけじゃない。
 無くなった回復アイテムを補充したり、装備を見直したり、プレイヤーが制作した建築物とかアート作品を眺めていればスキル回復までの時間つぶしは出来るのでその後で失った分のアイテムや金を補充すればいい。
 いくら最初に来るレベルの森で敵もそんなに強くないと言ってもあの数だ、助けに入ったら僕までやられる危険もある。向こうも目の前のエネミーで手いっぱいでこちらの存在に気付いていない。普通ならば見なかったフリをして立ち去るべきだろう。

「トッポ、先に行くぞ」

 目の前で女の子がやられるのを見たり、無視して立ち去って罪悪感が全くなければだが。「回り込み」のスキルを使えばすぐに助けに行ける。とりあえず彼女達に一番近い敵の背後に行って倒しつつエネミーの注意を僕に向けさせれば……。

「まわ――」
「ちょっと待て」

 スキル名を言おうとしたら止められた。

「なんでだよ、見捨てる気か?」
「いや、時間が無いから簡単に言うぞ。あの子達に共闘の許可を貰わないと俺達がいくら攻撃してもダメージが通らない仕様なんだよ。だから少し待て、今共闘の申請を……」

 これは落ち着いた後で聞いた事だが、なんでも横からトドメだけ刺されてドロップアイテムを奪われるとかを防ぐために誰かが戦闘中だとそのエネミーに他は攻撃できない仕組みらしい。そして戦っている人の人数が1パーティーの最大人数六人以下だったら最大人数になるまでは戦闘の途中からでも共闘が出来るらしい。こちらはロボを入れて四人。向こうは二人なのでギリギリ全員で参加可能だ。
 トッポがウィンドウを操作しながら説明する。操作が終わると少女たちの前にウィンドウが現れた。突然のことに驚く少女達。

「『ヒールショット』」

 トッポが欠損状態の少女に向けてスキルを使った。HPが回復している所からあのスキルは別にパーティーメンバーや共闘中でなくても有効なようだ。
 少女達もトッポのスキルでこちらに目を向ける。

「手伝うんで共闘の許可を、承認を押して下さい!!」

 トッポが大きく手を振って存在をアピールしながら大声で伝えた。HPの回復した少女がこくりと頷くとウィンドウに指を伸ばした。

「よし、お待たせ。シュトリーを連れて彼女達の所に『回り込み』シュトリーは移動後に俺が回復させてない方を『応急処置』。あとはウェイトタイムが終るたびに二人を回復と、二人に近付くエネミーをガトリングで攻撃してくれ。ブル太は思いっきり暴れろ」
「了解、『回り込み』」

 シュトリーがドラヤキの頭から僕の頭に飛び移った。彼女は僕の持ち物判定なので触れていれば『回り込み』で一緒に連れて行ける。そうして少女の背後に現れる。

「えっと、どうも……」
「えっ!?」「うわ!?」

 二人が突然現れた僕に驚く。何も言わずに背後にいるのもアレだし、何か言わなければと思ったが、上手い言葉が出てこなかった。

「驚かせてすみません。時間ないんで僕はこのままエネミーに突っ込みます。お二人はこの子が護りますんで。ここを動かないで下さい」

 頭のシュトリーを掴んで手のひらに乗せて二人に見せた。そのままシュトリーがトッポに指示された『応急処置』を始めた。

「きゃっ」

 お尻から飛び出すクモの糸。メイドモードの『応急処置』は何処からか絆創膏や包帯、消毒液を取り出してのものだが、スパイダーモードだと糸で傷口を塞ぐ感じだ。いきなりこんなものを食らえばそりゃ驚くよな。

「あ、すいません。これ、この子の回復スキルなんです」
「本当だ、アカ姉のHP回復してる」
「あ、本当……」

 シュトリーが僕の手から地面に飛び降りると、迫って来ていたエネミーにガトリングガンを食らわせた。シュトリーはトッポの指示をちゃんとこなしている。僕もそろそろ行きますか。

「じゃ、僕は行きますんで『爆裂斬』」

 まずは覚えている唯一の範囲攻撃スキルを使う。攻撃したエネミーの後ろに斬撃が飛んで大爆発が起きた。これには炎属性が付くので植物系のモンスターにはプラスのダメージになるため、攻撃の範囲内の植物系は光になった。動物系も、最初に会ったゴブリン似のサルは倒せたが、クマや鹿のエネミーは残っていた。それを横からトッポの銃弾が処理してくれた。
 ドラヤキが盾を構え『仁王立ち』でエネミーのヘイトを稼いでいる。その背に乗ったトッポが襲ってきたエネミーを撃っている。使っているのはいつもの無限通常弾ではなく、貫通弾。これは一体目に与えたダメージと同じダメージを直線状にいる敵にも与える。そして二体目も倒せたのならその半分のダメージを三体目にと一気に複数を攻撃できる効果を持つ。
 これだけ大量にエネミーがいて、しかも『仁王立ち』の効果で自分に向かってきている状態ではとても有効な弾だ。トッポの武器の能力ではこの初級の森の敵相手ではオーバーキルもいいところだ。一発で三体を光に変え四体目にダメージを与えている。

「『ダブルスラッシュ』『五月雨突き』『回り込み』『爆裂斬』」

 攻撃の威力が上がるスキルを使っての攻撃。そもそも双剣は威力より手数の武器なので初心者用の森でも素の一撃でエネミーを倒せない。一撃で倒そうと思ったらスキルを使う必要があるのだ。
 だから出し惜しみせずにスキルを使っていく。


「よし、ラースト」

 最後の一体が光りになった。シュトリーを回収するために二人の所に戻ろう。

「よ、お疲れ」
「そっちもな」

 二人の所に先に来ていたトッポが片手を出したのでハイタッチ。お互いの労をねぎらう。

「あ、あの、助けていただきありがとうございました」
「ありがとうございました」

 セミロングのオレンジ色の髪の女性が腰を曲げ深々とお辞儀した。それに続くようにキミドリのポニーテール少女がお礼を言って同じように頭を下げようとする。左足が欠損状態なために少しやり辛そうだ。

「あ、むりに頭を下げようとしなくてもいいですよ」

 バランスを崩しそうなポニテ少女の肩を支える。

「すいません」
「再生の粉は持ってますか?」

 再生の粉は欠損状態を治すのに必要なアイテムだが、少女達は持っていないようだ。そもそもそれが何のためのアイテムかも知らないらしい。なのでトッポが説明した。

「じゃあ取り合えず噴水前まで送りますよ。その足だとまともに歩くけないでしょ」

 あいにくと僕達も再生の粉を持っていなかったので誰か売っているプレイヤーを探すか、マザーに素材を渡して作ってもらうしかない。僕達のホームに向かうのは距離的になしだ、噴水前の方が明らかに近いから。

「でも、そこまでしてもらうのは……」

 オレンジ髪さんが申し訳なさそうな顔をした。

「気にしないで下さい。どうせ僕達も回復アイテム補充のために噴水前に行くつもりだったんで」
「そうそう。行き先は同じなんでついでですよ、ついで」
「頼ろうよアカ姉、お二人の言うように私の足じゃまともに歩けないし、戻る途中にもエネミーは出てくるよ?」
「……じゃあ、すみません。もう少しだけお世話になります」

 二人をドラヤキに乗せて男二人は徒歩。エネミーの襲撃も考えてシュトリーはドラヤキの頭の上で待機。

「私達今日が初プレイで――」

 まずは自己紹介からはじまり歩きながら二人と話をする。
 オレンジ髪の方はアカネさん。ポニーテールの方はミドリちゃんというらしい。
 二人は本当の姉妹で、最初はミドリちゃんがアーヤの動画を見てこのゲームをやりたがったのだが、実際にゲームの中に入る上にオンラインゲームでどんな人がプレイしているかもわからないので心配した両親がアカネさんも一緒にいるのならと条件を出したのだ。
 そのため本体のゲーム機が二台手に入るまでお預けとなり、今日ようやく二台目が家に届いてプレイ可能になったらしい。

「それで、どうしてあんな数のモンスターに?」
「それは、私が罠を踏んで――」

 ミドリちゃんがモンスターハウス系のトラップを踏んでしまい、周囲に突然大量のエネミーが出現したらしい。
 そして戦っている内に左足を噛み千切られ、僕達が聞いた悲鳴はその時のものだったようだ。

「トッポさんとブル太さんはどれくらい『エンドワールド』をやっているんですか? これって最近見つかった仲間にできるロボットですよね? 昨日アーヤが動画で紹介していた」

 ミドリちゃんが興味津々で目の前のシュトリーやドラヤキを観察しておる。

「そう、そのロボット。攻略サイトに情報が出た日に二人で取りにいってさ。ちなみに俺は発売日からやってる」
「うん、トッポが新情報に掲示板がお祭り騒ぎだーって僕に教えてくれてそのままの勢いで取りに行ったんだ。あ、僕はまだプレイ十日目。初日にゲットできずに再入荷を待っていた組」

 ロボットに関してはトッポがサラッと嘘を言った。ロボのチップを見つけたのは僕達ですと言う必要もないので、無難な対応だろう。
 攻略サイトに情報が載った事で掲示板が騒ぎになっている事を教えてくれて、二人でその掲示板の様子を眺めたのは真実だ。これならさらに質問されても上手く合わせられるだろう。

「そうなんですかぁ~。あ、よかったらもう少しこのゲームの事教えて下さい。アーヤの動画で少しは情報あるんですけど、やっぱり見るのとやるのでは全然違いますし、動画では素材集めやアイテム作りとかの時間がかかる地味な作業ってカットじゃ無いですか。だから色々と先輩に指導して欲しいんです」
「ちょっとミドリ、さすがにそれは厚かましいよ」

 助けたことや、ここまで色々と話した事でこちらを信用できると判断したのかミドリちゃんがグイグイ来る。
 いくら何でも出会って一時間以内でその気の許しようはどうなんだ?
 親御さんがアカネさん同伴でないとゲームをするのを認めなかった理由がなんとなくわかった気がするぞ。

「えっと、僕達は別にいいですよ。今は目的もなくただゲームを楽しんでいるだけですから」

 目標と言えば庭の農園の収穫物の品質を向上させるとか、家畜に出来そうな動物がいないか探す事だ。仲間に出来るロボがいるんだ、どこかに飼える動物もいるんじゃないかって『私らしく』に情報が無いか聞いてみた。トッポがロボのチップのようにどこかの隠しダンジョンにきびだんごがあって、それを食わせれば仲間になって鬼ヶ島までついてくるんじゃないかとか冗談で言ったら山田さんが一考の余地があるとか言い出してな。それで自分やシュトリー達のスキル取得目的でダンジョンに行くついでに探ったりしているけど、農園はすぐにやらなければならない事じゃないし家畜やスキルは彼女達に付き合いながらでも出来る事だ。
 だから今は他人のやりたい事に合わせられる余裕のある状態と言える。

「な、トッポ?」
「そうだな。新しく始めた人にゲーム楽しんでもらうお手伝いなら喜んでやりますよ。だた……」

 トッポも笑顔で答えた。

「ただ?」
「俺達もうすぐプレイ三時間でログイン制限なんですよ。だから噴水前に行ってアイテム補充してログアウトする予定だったんですよね。だから今の所はフレンド登録だけして、また次にログインした時で良かったら付き合いますよ」

 あ、そうか。エネミーの事で自分達がこの森を通過していた目的忘れてた。時間的にゆっくり買い物している余裕は無いだろうな。アイテム補充は次ログインした時になりそうだ。

「じゃあ私達も戻ったら一回ログアウトしようかアカ姉?」
「そうね、ミドリの足を治したら休憩しましょうか。ブルータスさん、トッポさん、妹がワガママ言ってすみません。しばらくよろしくお願いしますね」

 森を抜け草原に出た。遠くにビル群も見えている。目的地はもうすぐだ。
 僕達はフレンド登録を済ませ、一時間後に再会する約束をして一度ログアウトした。


 ☆ヒロインとのオフでの出会い☆

「えっと、南口は……」
「あそこの階段を昇ればいいみたいだな」

 龍次《りゅうじ》が指さした階段上の看板に乗り換えや北口、南口と書かれている。
 とりあえずは階段に向かう僕達。

 今日はミドリちゃんの誘いで彼女の高校の文化祭に行く事になっている。ミドリちゃん、僕達の一個下の高一だったのには驚いた。リアルの事をあまり話してないし確認もしてなかったが、中学生だとかってに思い込んでいた……。
 南口の改札を出た先でアカネさんが待っていて、高校まで案内してくれることになっている。

「で、そのアカネさんは……」

 大学生くらいの女性を探す。あ、あれかな?
 色は黒いがゲームと同じセミロングのゆるふわな髪の毛。クリーム色のカーディガンに紺のロングスカート、ベンチに座りスマホを見つめている女性。その膝の上には目印の最後までチョコたっぷりなお菓子の箱。

「龍次、あそこ」
「他に目印を持っている女性はいなさそうだな」

 明らかに見やすい位置に目印の菓子の箱を出しているのはあの人だけだ。

「あの、もしかしてアカネさんですか?」
「え?」

 スマホから視線を上げる女性。僕の横では龍次が同じくチョコたっぷりなお菓子を持っている。

「ブルータス君とトッポ君?」

 よかった、アカネさんで間違いないようだ。これで違ったらかなり恥ずかしい事になっていた。

「はい。こんにちは、それとも初めましてですかね? ブルータスこと青戸《あおと》 慎也《しんや》です。それでこっちが」
「桃谷《ももたに》 龍次です」
「こんにちは、私は倉橋《くらはし》 彩香《あやか》です」

 三人の自己紹介も終わり、彩香さんがミドリちゃんに無事合流出来た事をメールで伝えると高校に向かう。
 ミドリちゃんが通うのは女子高で制服や校舎の感じが金持ちのお嬢様が通っていそうな雰囲気を出している。彩香さんもこの学校の卒業生らしい。

「幼稚園から大学までエスカレーター……。彩香さん達って実はかなりのお金持ちのお嬢様?」
「え、そんな事ないよ。普通だよ、普通」
「なぁ龍次、よく考えたらさ「エンドワールド」のハードってそれなりの値段するじゃん、それを二台って……」
「あ、そう言えばそうだな……」

 彩香さんは普通って言うけど、この学校での普通だとすると僕達からしたら上位の存在かもしれない。

「入り口にガードマンがいて、チケットが無いと参加できない文化祭とか僕初めてだよ」
「ああ、俺も……」

 僕達の学校は普通だった、門で生徒会とその顧問がノートにお客さんの名前と、保護者なのか友人なのか卒業生なのか、ご近所さんなのか、学校や生徒との関係性を書かせるだけで、けっこう出入り自由だ。
 近所の学校も似た感じだったはず。住む世界が違いすぎる。

「あ、アカ姉!!」

 僕達が文化の違いにあっけに取られていると、向こうから聞きなれた彩香さんを呼ぶ声。こちらもゲームとは異なり黒色だがゲームと同じポニーテールの少女。
 リアルでもアカ姉って呼んでいるのか。あやか姉、あーか姉、あか姉、アカネ。みたいな流れかな?
 ミドリちゃんこと、倉橋 葉月《はづき》さんとも合流。彩香さんのアカネに対して葉っぱだからミドリなのかな?
 四人で色々と眺め、彼女のシフトの時間になったので葉月ちゃんのクラスの喫茶店に向かう。メイドやコスプレがおもてなすようなのではなく、ワイシャツの上にエプロンを付け三角巾を付けた生徒が美味しい紅茶やクッキーを提供する出し物だった。
 文化祭でメイド喫茶なんてアニメの世界の話だよな……。どこか現実でやっている文化祭あったら教えて欲しいぜ。

 文化祭が終わったら葉月ちゃんは片付けがあるのでここで解散。はいさようなら、という流れにはならずに僕達は倉橋家へと招待される事になった。
 なんでも彼女達の両親が僕達に会っておきたいとか……。
 ゲームで同じギルドを組んでいる相手が男子高校生で、しかもリアルでも会うと言うんだからそりゃそうなるか。
 実際に接触したのが文化祭なのも両親を納得させられるラインがそこだったのだろう。

 倉橋家では表向き母親は終始ニコニコの歓迎ムードだったか、父親の方がずっと僕達を睨んでいた。
 葉月ちゃんが帰って来て、リアルでも少しボードゲームで遊んで解散になった。
 最後には「これからもあの子達と仲良くしてくれ」とは言われたけど、少しは認めてもらえたのかな?
 こんな奴らのいるゲームなど今後一切やらさせんぞ。なんて言われてゲーム禁止にならずにすんでよかった。二人は楽しそうに「エンドワールド」を遊んでいる、それを本人が飽きてやめていくならともかく、僕達が原因で遊べなくなったら可哀想だからね。

 そんな事もあって僕達のゲーム外での初顔合わせは終了し、広い庭と駐車場付き三階建ての倉橋家を後にした。

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