• 異世界ファンタジー

VRMMOの続き 3

 情報屋ギルド『私らしく』
 もともとは個々で自由に活動しつつ、パーティーを組みたい時、大人数用のレイドダンジョンに挑戦したい時にギルド掲示板を使って募集しましょう。
 それぞれ情報を出し合って困った時に相談しましょう。
 くらいの緩い運営を目指したゲームをエンジョイしたい勢のためのギルドで、ギルド会員でなくても集まった情報を公開したり、攻略や装備に関する相談に乗ったり、パーティーメンバーの足りない外部の人にタイミングの合うメンバーを斡旋したりしたらいつの間にか情報屋ギルドになっていたらしい。

 ギルドホーム一階に設けられたいかにもな雰囲気のバー。
 そこでカウンターに向かいグラスを拭いている店員に話しかけるトッポ。僕はただその後ろにいるだけだった。
 そして別の店員がやって来て二階の個室の一つに案内された。部屋は一つずつ別エリアになっているので、この部屋で話した事は室内にいる人間以外に聞かれる心配がなく、客が情報を提供する場合や逆に機密性の高い情報を客に伝える時に利用されている。
 案内された部屋は応接室といった感じの場所で、そこにいたのは僕達と同じ高校生くらいの男性、紺のスーツ姿の彼は『私らしく』のギルドマスターでプレイヤーネームは山田二郎だと名乗った。

「それで、新しいダンジョンとボスの情報を持って来たと聞きましたが?」

 互いに自己紹介を終えると、向こうから訪ねて来た。
 カウンターでトッポが伝えたのはそこまで。あの場で全部の情報を伝えたら誰がそれを聞いているかわからないからだ。

「はい、こちらをご覧ください」

 そしてトッポが撮影していたボス戦の映像を流しはじめた。

「ほう、これは……。キマシ工場跡地のボスの色違いって感じですね。背景も似たような工場のようですが……」
「そう、そのキマシ工場跡地の隠しエリアで出会ったボスです」
「隠しエリア!? そんなものが!? あのダンジョンはすでに隅々まで完全にマッピングが完了していると思っていましたが……」

 半信半疑といった感じか。ボスの動画だけだと加工して色を変えただけだと思われているかもしれない。

「これがガセじゃないって証拠にこのボスから手に入るアイテムを見せますよ」

 そうして今度はドラヤキのチップとロボットを取り出すトッポ。
 チップをはめて起動したドラヤキを見せて、山田さんの疑いも晴れて僕達の持ち込んだ情報が信用された。
 やはり情報屋でもロボットの事やチップの事は知らなかったようだ。公式サイトにも情報のないチップや仲間に出来るロボの存在に興味津々である。
 そして僕達はチップが必ずドロップするのか、譲渡可能か(気付いたのが名付け後だったので名付け後は不可だった。名付け前は不明)どうかを確認するためや、最大パーティー人数の時にロボット戦闘に参加させられるのかを確認するための協力を頼んだ。『私らしく』の方も実際に現場に行って自分達でも確認したいというのでちょうどいいからこの後向かう事にした。

 ロボットの参戦はパーティー人数に空きがあれば空きの数だけ参加可能だと判明。チップの譲渡は名前を付ける前の状態では可能だった。ただし、既に名前を付けたチップを持っている相手には渡せない。さらにチップのドロップは未所有の誰かの所に一個だけ来るようで、全員が所有している状態だとドロップしない。前にゲットしたけど他人に譲渡した人でも現在未所有ならばゲット可能。
 つまり僕とトッポはもう「|従者のチップ《シュトリー》」と「|騎士のチップ《ドラヤキ》」以外のチップを持てないという事だ。チップをロボットの頭部にはめて名前を付けたらその後はやり直しが効かない。それが分かったのも収穫だ。だから『私らしく』の人達は全員がチップに名前を付けずに、数人の代表に名付けをやらせて、説明文の学習して成長するの部分がどうなるのか経過を観察するらしい。
 
 ボスからドロップしたチップの種類はランダムで、今の所は「従者」「騎士」「農夫」「剣士」「弓兵」「調理師」「大工」「狂戦士」と見事にバラバラ。それとロボットのパーツが二つ。
 チップが確定でパーツは確率、どちらもランダムで何が手に入るのかはわからないというのが今の所の推測だ。他のロボパーツはガトリングの腕と魚の下半身だったので僕が女性の頭型のパーツを手に入れたのは本当に幸運だったようだ。
 この後は人が少ない時間を狙って『私らしく』のメンバーが調査を続けてから情報を攻略サイトに乗せる事となった。そして攻略サイトに乗せる前にメールで調査結果を僕達にも報告してくれるらしい。
 ついでに他のダンジョンにもこうした隠しエリアがないかも調査するらしいが、そっちは攻略サイトで見てくれという事だった。
 情報に対する報酬をもらい、ログインできる時間も限界に来たので僕達は彼らと別れて噴水前まで戻るとログアウトする事にした。

「新しい発見もあったし、今日は楽しかったね。明日はどんな日になるかな? ね、ブル太朗」
「へけっ……ってなにやらすんだよ」
「ん、じゃあな。また学校で」
「おう、今日は楽しかったぜ」

 こうして僕の「エンドワールド」一日目が終わった。ログイン時間は6時間、ゲーム内では24時間、ちょうど一日。すごく濃い時間だった。

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