他人が書いた物語を読んでいると創作意欲が湧きます。
書店で売られている有名作家の小説であれば、「面白いな」で満足して本棚に仕舞ってしまうのですが、Web小説や同人小説あるいは同人ゲームを読み進めていると、ふと物語を紡ぎたくなります。
それはきっとライバル意識を燃やしているからだと、自分のことながら分析しています。書店で売られている商業小説はいわゆる『プロ』が書いたものであり、到底手が届かない雲上の至宝であると理解しているからこそ、素晴らしい物語に対し素直に感動することができます。
しかし、同人小説はと言うと、『プロ』ではなくあくまでも『アマチュア』、即ち自分と同じ立場の一般人が書いたものであるという先入観があるのです。したがって、自分と同じ環境で同じように趣味として(利益を得ているものもありますが)書かれた小説を「面白い」と感じると同時に、「負けたくない」という闘争心が湧き起こるのも無理からぬ話なのではないでしょうか。
「ないでしょうか」と問いかけましたが、あくまでも個人の感覚ですので、共感できないかもしれません。私個人としては、そういったプロではないアマチュア、あるいはその狭間に位置する方の創作物に触れると、劣等心という名の創作意欲が湧き起こってくるのです。俗に言う『嫉妬に狂った』状態です。平静を装って「ふうん、面白いね。でも……」と粗を探しているダメ人間なのです。努力不足を棚に上げて、素晴らしいものを見下そうとしているクソ野郎なのです。
そんな狂い切った状態で思いついた物語はどうしようもなく陰鬱で、自身の不満や問題といったものが浮き彫りになった私小説ならぬ私怨小説とでも呼ぶべき呪物です。お焚き上げして然るべき代物ですが、世に放つことで憂さ晴らしいたします。八つ当たりとでも呼びましょうか。
とは言いつつ、構想中の物語を即座に出力できるほど優れた人間ではないので(そんな人間は嫉妬とは無縁でしょう)、過去に書いた小説を投稿し始めました。上記の話とは全く関係がなく、人間関係のストレスに喘いでいた頃に出力した代物でございます。淡々と、現代人の特徴である短文構成を考慮して、より自然な会話を意識した結果、どちらが喋っているのか瞬時に判断できなくなりました。小説として致命的ではございますが、誰が喋っているのかを明記するのも野暮なほど一行一行が短い物語ですので、読み流すには丁度良いと我ながら感じております――という言い訳です。努力不足で済まさずに、努力できる人間になろうと決意しました。創作意欲は努力のきっかけにもなるようです。
以上、あとがきのような始まりの挨拶でした。