小説を書いていると他の小説を無性に読みたくなります。「参考にしたい」「自分の稚拙さを痛感したい」、という願望による衝動であり、読後は想定どおり執筆の意欲が下がります。「どうせ自分が書いたものなんか……」と考えるようになるからです。
それがわかっているのに読むのは、それでも一縷の希望を持っているからです。「もしかしたら自分のほうが面白いのではないか」と、嫌いな人間の情報を集めたがる習性のように他人の粗を探して、自分の感覚が正しいと、自分のほうが優れていると感じたがっているのです。承認欲求が強いのでしょう。
もっと純粋に小説を楽しむにはどうすればよいのか。答えは簡単、執筆活動をやめればいいのです。もしかすると小説を読みたがるのは、小休憩に入りたがっている脳からのSOSなのかもしれません。
好きな作家の小説が発表されれば、これらの衝動とは関係なく楽しみますが。いやはや人間の気分というのは度し難いものですな、と自分のことながら思います。