頭が痛くて寝れなかった。
余計な感情は出さない、っていうのは普通に考えたら無理だ。心がけていても無意識に嫌な感情が表に出てしまうし、何より、暗い感情を一切出さず耳障りの良い言葉しか吐かないなんてそんなの私じゃない。
それとも、人を傷つけるくらいなら自分なんか出すべきではないのだろうか。
迷惑だから出てくるな、と。
でも、何かを完璧に演じようとする理由と気概がなければそんなこと私は5分もやってられないだろう。
その演技だって、体に不調をきたせば大体の人間は維持できなくなる。
あの子―――とある私の友人以外は。
ずっと誰かを演じているその子は、どんなに体調が悪くともそれを隠せてしまうし、人前で演技が崩れることはめったにない。
38度以上の高熱であろうと、言われないと気付かない程度には普通に会話できる。普通に仕事もできる。あの子の家族だって不調に気付かない。
「頭痛くて動けないとか、体調悪すぎて何もできないとか、なったことないの?」
そう聞いたら
「自分が体調悪いのと、仕事しなきゃいけないのは関係ないから」
人間ってそんな感じだっけ。そう思った。38度なんて出たら床に伏す以外何もできなくなるのはもしかして自分だけだったか。私が間違ってるのか?
普通に考えて高熱の人間が動いてて大丈夫なわけないけど、あの子はいつでも「大丈夫」「無理はしてない」と返すばかりで。
それにすら妙な説得力があって「あ、大丈夫なんだ」「無理はしてないのか」と毎回思ってしまいそうになる。
でも、たまに見ていられなくなる時がある。
薬が効かないと言っている時とか、また余計にストレスを受けていそうな時とか。
ここから先は、以前書いた近況ノート「日記のあの子」
https://kakuyomu.jp/users/usaho/news/16817330660471462248を読んだ人の方が分かりやすい内容になると思う。
前述の友人と日記を書いている友人は同一人物だ。
彼女は不幸体質というか、人の不幸や体調不良を無意識に肩代わりしてしまう。
体調不良に関しては意識的にもできるようで、ある日の日記に人の体調不良を引き受けようとした時のことが記されていた。
「それ、どうやるの?」
ダメ元で聞いたら、普通に教えてくれた。
自分でも何でこんなことしてるか分からないけど、それ以来、たまにあの子の体調不良の一部を引き受けようと試みるようになった。
あの子の声を聞きながらだったり、日記を読みながらだったり。
上手くいってるかどうかは確認してないから分からない。でも、毎回それをやると決まって急に頭が痛くなる。薬を飲むと収まる程度だし、でもあの子的には頭痛がなくなったくらいじゃあまり楽にはならないかもしれない。さすがに熱と片目が見えないのと味覚がないのと声が出にくいのを引き受けるのはできなさそうだから、これくらいは。
いつだったか、「自分が必要なくなる未来が近づいている」と彼女が言っていた時、そんな未来あると思えないって私は言ったけど返事はなかった。
どんな言葉もあの子にはちゃんと届かないかもしれないけど、本当にそう思った。
この先たとえ耳が聞こえなくなっても喋れなくなっても、記憶がなくなろうと君の周りから誰もいなくなるなんてことはない。
本当は、
「そんなこと言わないでよ。未来が見えるわけでもないのに」
って言いたかったけど。