「例えばこれをこうしてこうすれば、どこかに消えて皆の記憶からも消えられるとしたら、信じる?」
あの子に訊いてみたことがある。
「本当にどうしようもなくなったら、それに頼るしかないよね。でも普通の精神状態で信じることではないかな。……でも、それで『存在抹消』と同等のことができるなら、頼ると思う」
ずっとその方法を探していた彼女なら、そう考えるのは自然なことで。私も同意見だった。
彼女がずっと『存在抹消』の方法を探していたように、私だってそれを探していた。
「でも段々正気に戻って怖くなってくるかもよ」
「実行するような精神状態じゃもう戻ってこれないでしょ」
「確かに」
その言葉を思い返しながら検証したけど、やっぱり嘘だった。
上手くいかなかったらその場で死ぬしかない、と彼女は言っていた。
でもその場には何も持ってきていなかったので、帰るしかなかった。
似たような話は他にもあって、何度も検証したが一度もうまくいったことはない。
あの子ならちゃんとやれたのだろうか。
小説のネタにもならないような、つまらない出来事。