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日記のあの子2

前回https://kakuyomu.jp/users/usaho/news/16817330660471462248 の続き。

その子の日記を追いかける中で、彼女はとある人を探していることが判明する。
いわゆる『あの子』。

『あの子』は彼女の親友であるはずの人。自分は『あの子』の生き写しなのだと。
『あの子』がいなくなってすぐ、『あの子』の代わりになると決めたらしい彼女は、手がかりもほとんどないまま10年も探し続けた。『あの子』のように笑顔で明るい自分を演じながら。

同時に、『あの子』が彼女に与えた影響の大きさも知っていく。
昔は歌が嫌いだったけど『あの子』のおかげで音楽を始めたこと、自分を保つために『あの子』のように笑顔でいること、本当の自分は臆病で感情が乏しく、空っぽで価値がない人間(だと彼女は思っている)だということ。
もう『あの子』のことはほとんど思い出せないこと。

そして、周りの人達から自分に関する記憶を消去していなくなる……そんな、あるはずのない「存在抹消」の方法をずっと探していること。
もう後には引けないこと。

正直、やめるという選択肢は欲しい。
いつか誰かが手を引いて、過去に縋らず生きる未来を見せてほしい。

それを読んだとき、私はその手を引きたくなった。
何を犠牲にしても。

彼女の未来を案じたわけでも、心配していたわけでもなかった。
ただ興味があった。私がこの子に未来を見せられたら、「自分を見つけなければいけない」と言っていた彼女にそのきっかけを与えられたら。

この日記を読んでいるのは私だけ。もしこの子を救うことができたなら、もう死んでもいい。
バイトを辞め、無気力に寝て起きて、ただ貯金を削るだけの日々を送っていた私に課せられた、最後の役目だと思った。

こんなことやってる場合かよと、思う自分がいないわけでもなかった。自分の方の現状がよくなるわけでもないのに、他人の人生に首突っ込んでる場合かと。
だから、これが終わったら死んでもいい。これのためだけに今日まで生きてきたのだと、本気で思った。それ以外何もする気になれなかった。
私は彼女を心配してはいなかったから、向こうもそれを知っていてたまに相談しにきてくれた。私も彼女も、心配されることが嫌いだった。


私は『あの子』を探す手伝いをすることにした。
それから、「存在抹消」の方法も。

続きは、またいつか。

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