男は、最近気づいたことがある。
作品を作る、ということよりも
「世界」を作ることの方が好きだ
ということだ。
物語を動かすよりも、設定を事細かに決めていく方が面白い。
ゆえに、設定がある程度済み、執筆段階に移行したところで男の興味は失せてしまう。
ならば…と、男は作品の題材を思いつく。
そう、執筆が終了するということが、世界の完成となる物語を作れば良いのだ。
そうすれば、執筆段階で興味を失わずに済むのではなかろうか。
ここ数年のブランクは、確かに気持ちに余裕がなかったことが理由であるが、同時に自身が興味の持てる作品が作れなかったことにある。
プロット段階では輝く宝石箱である。
ここからどんな物語が生まれるのか、どう繋がっていくのか、という楽しみがある。
世界観に命を吹き込み、世界の住人たちがどのように生きていくのかという期待がある。
それが、自身が手を加えるという行動によって、妙なヤラセ感が生まれてしまい気持ちが萎えていく構図。
この負の螺旋を越えねば。
そのさきに本当に見える完成された世界を、生まれてから一度も味わったことがないのだから。
男の執筆は、未だ始まったばかりなのである。