明日本気出すと説いてからすでに2年以上が経過していることに男は微塵も気づいていなかった。
そして、これっぽっちも気にしていなかった。
なぜなら明日は明日である限り明日であるからだ。
昨日の今日が明日である限り、それは毎日の積み重ねでしかない。
明日できることは今日やらない。
男はそんな楽観的な日常を過ごしていた。
ところが、どうだ。
現実は斯くも無慈悲なものだ。
たった2年、うっかりしていただけなのに…
某岩屋に閉じ込められた天然記念物が神にぼやいていそうな言葉が男からも漏れ出ていた。
朝起きてから寝るまでの流れに不変性が生じてからこのかた、自身が取り組むべき<それ>を部屋の隅っこに追いやっていた。
日々の新鮮さや冒険性を忘れ、身を固めた結果がこのざまである。
置き去りにされ、日の目を見ず埃に塗れたこれらは今の自分を許してくれるだろうか。
昨今の作品たちのように、異世界に行けば恐ろしいステータスを手に入れられれば苦労はしないだろうに…
そう思いながら、引っ越し前に作り置きしておいた鍋が、転居先で食べられることを忘れられ、無惨にも芳しい香りが立ちこめている新しい我が家を後にして、男は今日も不変的な日常を過ごすのであった。
今日も小説は進まない。