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影が浮いた日


あの日、雨は空へと帰っていった
音もなく、悲しみのかけらを連れて

水たちは地を離れ
言葉にならなかった涙を運び
誰の目にも見えない祈りを飲み込んだ

そのとき、
世界はそっと、ため息をひとつ
地面はわずかに心をゆるめた

すると
影が、ゆらりと揺れた
まるで 重さを忘れた鳥のように

ひとの後ろに寄り添っていたはずの影は
ほんの少しだけ
地面から離れていた

もう 縛りつけるものが
ほんの少しだけ 減ったのだ

空が涙を覚えた日
地上の影は
夢に近づいた

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