月がふたつ 夜がふたつ
湖は深く 息をひそめる
ガラスの息が そっと灯り
星抱く瓶が 静かに並ぶ
秘密はいつも 指先で鳴る
触れれば割れて 光がこぼれる
だから少女は 声を細めて
「ほんとの私は 夢のなか」と
囁き落ちて 瓶が震える
青いひかりが 鼓動を刻む
職人は言う 首をゆっくり振り
「秘密は薄く 割れるから美しい」
朝が来るころ 少女は消える
棚にはひとつ 青い揺らぎ
名前を持たぬ 夢のあかしが
「ここにいるよ」と 微かに瞬く
月がふたつ 夜がふたつ
呼吸を合わせ 湖は眠る
壊れやすい だから美しい
秘密は今も 静かに光る