昨日は身内の手術があって病院の待合室で缶詰状態だった卯月です。
いやあ医療の進歩ってすごいですね。心臓あたりのカテーテル手術だったのですが手術自体は2,3時間で終了。なんの問題もなく。術後のお医者さまからの説明も実際のレントゲン動画?みたいなのを見せてもらいながらでした。
こりゃ、病院入ったら卯月も簡単には死なせてもらえないな、なんて不謹慎なこと考えてもいました。いや、自分はいいのですけど、大事な身内には長生きしてもらいたいものですとも思った次第です。
スマホの充電も心もとなく、普段は睡眠をとっている時間でしたので頭もぼうっとして読書すらすすまず、仕方ないので短編の構想を練っておりました。それが昨日の『視点は死転?』。最近せつない感じの作品が続いてましたので、変化が欲しくて……。本当はこわーいホラーにしたかったのですけど、なんだか卯月の短編っぽいものに戻ってます(原点回帰?)。ついコメディに寄ってしまうのはこの身に染み付いた何かのせい。
さっき確認したところによると、またまた皆様のおかげで『視点は死転?』ホラー週間55位。『らららいふ』SF週間60位。『あめのきみ』現代ファンタジー週間238位に上昇っす。
でも、ジャンル別週間ランキングのところってぶっちゃけ卯月も見ませんから、これが何かPVに影響することもないです。ですけど意識としては、何でもいいので自分の名前の露出があれば、コイツどっかで見たかもって別の機会にでもクリックしてもらえるかもしれない。そんな感じですかね。
短編の命は短い。ですので最近恒例となった『解説』いれていきましょうかね。『視点は死転?』をまだ読まれていない方はこの機会にぜひ。
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この作品、卯月最短の1000文字です。2000文字でひーひー言ってたのにですよ。挑戦することって大切、なにかしら得られるものがあります。読まれた方の心がどの方向でもよいので一ミリでも動けば成功って感じ。
あの中に企んだこともありますので、本日はSS形式で。卯月ファン(というか信者)の二人が『視点は死転?』をいきすぎの深読みをします。
「おい、卯月さまの新作読んだか?」
「ああ、先輩。いま読んだところっす。今回はやけに短いっすね」
公園のベンチに俺と並んで座る後輩がスマホから顔を上げる。
「そうだな。近況ノートも短かった。朝は雨の詩についてだったか」
「中原ナントカのはよく分かんなかったんで、まど・みちお、でしたっけひらがなのやつ見つけて読んでみました。あれ、なんかいいっす」
「谷川俊太郎のも良かったぞ。つい子どものころを思い出してしまったな」
「っすね……」
俺と後輩は雨が止んだあとの青い空を見上げて余韻に浸る。いやいや、俺が言いたいことはそれじゃない。
「あの朝の時点で短編を投入するというメッセージが含まれていたんだ。きっと」
「そうっすか? 考えすぎじゃないっすかね」
「いや、外から聞こえる雨音にも触れている。短いが言葉のひとつひとつを見落とすなということに違いない」
「まさかぁ。でも先輩、あれってホラーじゃなくて微エロ妄想のコメディですよね。というかファンタジー。カテエラっすよ。現代ファンタジーっしょ」
「ふん、甘いな」
「えっ、何がっすか?」
「お前はあの主人公がベンチに転生した、最近よくありがちな人外転生モノとでも思ったのだろう」
「違うんすか? スライムとか蜘蛛とか、ああ自販機とかありましたね。公園のベンチもありありでしょ?」
「ふふっ……。だから甘いと言っている。お前はどこで主人公が転生したと判断した?」
「だって書いてありますよ。えっと、あった。『私、ベンチになってしまったのです。転生?』って書いてありますよ。ほら! それに女子高生たちに俺達みたいに座られて……」
「実はあの『転生?』というのは罠だ。俺達から重要なナニカを隠すためのな。例えばだ。お前が突然ベンチになってしまったとする。その場合、お前は自分がベンチになったとどうやって知るんだ?」
「ん!? えっと……、雨ざらしだったようですし、最後のシーンも無抵抗でしたか、ああ自分じゃ動けなかったっすね。カガミなんて公園に無いし……。水たまりっすよ。大きな水たまりができててそこに映ったベンチをみて」
「水たまりな……。俺なら、そこに映っているのがベンチだったら、自分が透明になったんではと考えるがな」
「うーん、そうかなぁ? そうだ! おしり。おしりっすよ! 座られてはじめて自分がベンチだって気づいたに違いないっすよ! ああ、おれもJKに座られたい……」
「お前のキモい妄想は置いておくとして、ベンチになった触感というのはどういうものなんだ? 手ざわりのようなものか?」
「やっぱ、おしりは手。いや頬ずりも捨てがたい……、イテッ! なにするんっすか!」
「キモいからそれ以上はヤメロ。卯月さまの評価も下がる。それとベンチ視点ってなんだ? 視点は変わらず一人称で一貫してるだろ」
「先輩の言ってる意味わかんないです。ベンチになった自分視点が『ベンチ視点』っす! えっとこれくらいの高さかな」
後輩はベンチの横にしゃがみこんでそう言う。
「目の位置ということか?」
「いや、座る部分のほうがうれしいかも……、イテッ! ちょっと暴力反対っす! もう、『転生?』って書いてあるからいいじゃないですか」
「転生な。転生というのは生まれ変わりのことだが、すると主人公は何らかの理由で死んだことになる。病死? 他殺? 自……、いずれにしろおかしくないか? 文章中には『たまには外の空気を吸うことでいいアイデアが浮かばないかとこの公園に来たのでした』とある。そして人称視点に思いを馳せていて、ぼかしてはいるがそれが原因だと言っている。主人公についての『死』の記述はないんだよ」
「ああ、たしかに……。でもきっとナニカの力によって」
「何だ? そのナニカというのは?」
「えっと……、悪魔とか宇宙人とかそんな感じのじゃないっすか?」
「これまでの卯月さまの傾向からすると、悪魔ならファンタジーに宇宙人ならおそらくSFにでもするだろうし、そこは明確に書くはずだ。そうじゃないか後輩よ」
「まっ、たしかに……」
「あえて隠しているナニカ。俺はそれを恐ろしく感じるぞ。最悪の場合夢オチという残念なことも考えられるが、過去作からすると必ずどこかに『蝶』が出てくる。胡蝶の夢の暗示だな。この作品だけ例外ということは考えにくい」
「なんてマニアックな……。先輩、全作品読んでるんですか?」
「ああ、すべて暗誦できるぞ、やってみようか?」
「い、いえ。結構です……」
「そして最後のシーンだが、ここの部分の二人って俺達に似てないか?」
「は、はあ。先輩、ちょっと小説にのめり込みすぎっすよ。フィクションなんですよ。はやくこっちに戻ってきてくださーい! あっ、イテッ! 二度もぶった! いや、三度目っすか……。親父にもぶたれたことないのに!」
「おい、そのセリフはいろいろ問題があるから止めておけ」
「そ、そうでした……」
「なあ、お前昨日何してた?」
「ええっと、昨日は、きのう……、あれっ? 何してた。ちょっと待ってくださいよ。その前の日のことはしっかり覚えてるのに。ど、どういうことっす? 何も覚えてないっす!」
「だな。実は俺もだ……」
「ということは……、ええっ!? そんな……」
「おそらく俺達も卯月さまの隠しているナニカによって」
「えっ、ええーーっ!」
おしまい。