受付カウンター内の電話機が鳴った。
女性職員は、スマートな仕草で受話器を持ち上げる。
「はい、一階インフォメーショ、ああ、私でございます。
先ほどの件ですね。
はい、はい……あのう、ちょっと待って。
あなた、私の言葉を理解していらっしゃいます?
ではうかがいますけど、私が、なぜそのようなグロテスクなモノを口にせねばならないのかしら? ソレッて人類が口にしても良いモノ?
いえ、だから、ちゃんと聴いてくださいな。
ええ、ええ、そうです、ええ……ですからクマ○ンを国内で食べさせてくれ……はっ?
私がどうして水着パブで踊らなきゃ……えっ? 踊るのは貴女で私は客引き?
ちょっと待って、貴女のほうが私よりスタイルが良いって言ってるわけ?
ハーン、上等じゃない」
女性職員の目つきが変わった。
「この夏用に買った、私の水着を見てから言いなさいな。
いいこと、レオパード柄に、ブラックのアクセントを入れたビキニよ!
ふふん、スタイルに絶対の自信がなきゃ、浜辺で失笑を買うだけって代物よ。
しかもターコイズのアクセをくびれた腰に巻いて、悩殺セクシー……それは盗撮でしょ。どうして私が私自身を盗撮しなきゃ……だ、か、らあ、私が言っているのは、水着のことで……なぜ突然ワニの話になるのよ。
えっ? ゲテモノ料理屋?
なにそれ……私がゲテモノ趣味って言いたいわけ?
クマモ○? あのゆるキャラがどうして私のセクシー自慢に……ハッ!」
そこで女性職員は気付いた。接客中であったことに。
あわてて電話機から顔を上げると、受付カウンターに両腕を曲げて乗せ、それを枕にし、その上に真ん丸な顔を乗せてニコヤカに微笑む同じ顔があった。
ツリリンと禿げあがった頭部に、眼鏡、鼻の下に鬚を生やしたパパ。
金髪のモジャモジャヘアに、眼鏡(パパとお揃いのようだ)をかけているピーター。
二人は細い眼で、電話口でけんか腰の若い女性職員を見つめている。
「パパ、いや、父上殿」
「なんでございましょうかしら、ピーターと名乗る若者さまよ」
「これが、ヤマトゥ、ナベシキィ?」
「ノンノン、ピーター殿へ。それを言語に翻訳するのなら、大和ナンでしこを踏む、だと昔のエライ過去の人たちは伝えてたようじゃのう、ばあさんや」
「オウッ、さすがはボツが尊敬していると、勝手に勘違いなさってる父上殿!」
いやいや、鍋敷きでも四股踏みでもないって、瓜二つの西洋人親子。
そのヘンな日本語はどこで習ったのよ。
それを言うなら、大和撫子でしょうが。
女性職員はツッコミを入れたかった。
関西人としての熱き血潮が、ここでツッコミを入れずして、どこでツッコむ! と騒ぐ。
だが、常に空港内は監視カメラが目を光らせていることを知っている。
お客さまと「なにゆうてんねん、アホか、オドレは! 割り箸を鼻の穴に突っ込んで下からバシッと叩いたろか!」などと漫才をする姿を録画されてしまったら、間違いなく査定に響く。
せっかくコネというコネを最大限に利用して、KIXに入社できたのだ。それも正社員として。
英語はもちろん、フランス語にスペイン語は日常会話に不自由しない。
これが彼女の自慢である。
最近はNHKラジオ講座で、中国語の勉強まで始めた。
三十歳前後で、国際線のパイロットと恋に落ち、ローマで挙式を上げるの。
だけどキャリアウーマンとして、幹部になってやるんだから。
仕事は絶対に辞めないわよ。
そのためには失敗は許されない。
電話に出た同期の女子職員とのやりとりを、一分始終見られてしまった。
カラダばかり磨いて、アタマは空っぽなんだから、あやつは!
どうする、どうする私……
怒りの矛先が電話の同期に向く。
そのとき、天啓が閃いた。
「あ、あの、お客さま」
「フンフ~ンッ」
パパは笑顔でうなずく。
「ご質問の、○マモンでございますが」
「フンフ~ンッ」
「本場の踊り食いや生き造りは、この近辺ではお出しするお店はちょっと見当たりません。多分。
その代りと申してはなんでございますが、クマモ○のお饅頭などでしたら」
とたんにパパとピーターが、驚愕の表情を浮かべたのであった。
なぜ驚いたのでございましょう?
え? もちろんわたくしは存じ上げておりますのよ。
当り前でございますわね、オホホホ~ッ♪
タライに氷水を入れまして、足もとから涼をとっております。
どれどれ、カクヨムさまをチェックいたしましょう。
ま! 「面妖な金属男」にレビューをいただいております!
雹月あさみさま、
いつもお世話になっております♪ お忙しい中をお時間割いてくださり、またレビューまで頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
タマサブの気色悪さで、お加減を崩されませんでしたでしょうか。それが心配でございます。「新たな手法」に気付いてくださり、嬉しい♡
底辺で蠢いておりますと、ついこのような姑息な手段を考えてしまいますの。心より御礼申し上げます♪♪
花尾アキさま、
どうも初めまして♪ わざわざお目通しくださり、またレビューまでいただきまして、誠にありがとうございます! 発想力だなんて、嬉しい♡
本来は脇役でありましたの。一度だけメインにして描いちゃえ、などとネジが一本飛んで描いてしまいました。あ、でもわたくしはいたって平凡な一般市民でございます。このようなお下品な笑いかたなど、するはずがござい……ますかも。心より御礼申し上げます♪♪
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
糸乃 空ささま、
どうも初めまして♪ ご多忙の中にも関わらずご覧くださり、またレビューまでいただきまして、誠にありがとうございます! 面妖の意味、忖度くだすって嬉しい♡ ああ、けしてサラダ油は常飲なさらないでくださいまし。週に一度程度でお願いいたします。このような薄気味悪いキャラを創造してしまい、つばきは出家いたさねばならないですわねえ。
心より御礼申し上げます♪♪
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!
あ、「魔陣幻戯」にレビューを頂戴しております!
ゆうけんさま、
なんと御礼を申し上げればよろしいのやら。つばきの最も読まれない長編を続けてご覧くださり、誠にありがとうございます! 巧みな文章だなんて嬉しい♡ ちょっと登場人物が多すぎましたわねえ。初の長編ということで、意気込んで描いてしまいましたゆえ。数々の応援コメント、つばきは感無量でございます☆ ゆうけんさまの洞察力に、わたくしは脱帽でございます。ここまで深くご覧いただけるなんて、作者冥利につきます。心より御礼申し上げます♪♪
あ、「二十歳のおばあちゃんへ」にレビューをいただいております!
もくたんさま、
どうも初めまして♪ 連休のお忙しい中、わざわざお目通し下さり、またレビューまで頂戴いたしまして、誠にありがとうございます!
感動しただなんて、嬉しい♡ 今作は、つばき初の恋愛モノでございます。わたくしほど恋愛モノが似合わぬ語り部が、なぜか描いてしまいましたの。きっとナニかが憑依したか、お酒のアテで食べ合わせが悪うございましたのね。心より御礼申し上げます♪♪
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます!