ハロー。つるです。
3月になってから近況ノート書いてなかったので、今回は資料の整理を兼ねて「いま連載してる『梨子割』はこんな資料をベースに書いてるよ」ということをつらつら書こうと思います。
『梨子割』
https://kakuyomu.jp/works/16818023212696611765小説なんて所詮どー調べて書こうが「見てきたような嘘を付き」なのは変わらないのですが、この作品を書くにあたっては知りたいな、ってことがたくさんあったので、自己満足でしかないとわかってても、いろいろ漁っています。
あ、このほかにも書き切れないほど、ネットの海を彷徨って、いろんな情報を見てますが、とりあえず書籍として書き出せるのはこんな感じですね。では項目ごとに見てみましょう。
《花沼村関係》
物語の舞台となる「南埼玉郡花沼村」いまの埼玉県白岡市あたりをモデルにしています。現在も梨の産地です。つるは住んだことないのですが、つるの母方の祖母が戦争時このあたりに住んでいた(らしい)ので、その縁で舞台にしました。
と、いうわけで、書くには当たって白岡市立図書館さまにはたいへんお世話になってます。目的こそ言わなかったんだけど、突然訪ねていって「昭和前期の梨農家の資料が読みたい」とお伝えし、いろんな本を教えていただけました……。書き上がったら御礼が言いたいわね。だけど読んで喜ばれる作品でない辺り申し訳ない。
・白岡町史 (白岡町発刊)
・ふるさと白岡 (白岡町発刊)
・白岡町史資料 ③ 民俗Ⅰ(大山地区の民俗)(白岡町発刊)
あとコピーしまくりながら(県外在住なので貸出しは出来ない)書名は失念してしまったのですが、元白岡町長さんの自伝も読み込みました。だいたい良太郎と同じ時代を生きているのでたいへん為になりました。「岩槻の農学校」とか「久喜で徴兵検査を受ける」とかの記述はこの辺がソースです。
《戦前の世情資料》
・写真が語る銃後の暮らし (太平洋戦争研究会 編 ちくま新書)
これは日本全体の戦前が知りたくて読みました。タイトル通り写真が沢山掲載されており、年表も付いているので、歴史的な事件を頭にたたき込みながら、当時の社会の雰囲気など知るのに大変役立ちました。
《戦争関係》
これもいろいろあるんですけど、主に役立ったのは以下の三冊。
・特集文藝春秋 赤紙一枚で (文藝春秋)
昭和三十年代に発刊された、従軍経験のある文化人を主とした従軍体験記を集めたもの。生々しかったですね。この時代はまだいわゆる「戦争責任」というものがそんな論議されてなかったのか、そういう論点がなく、あくまで個人の戦争体験をぶっちゃけて語る本であったからこそ書けたんだろうな、と思う資料でもありました。第4話で出てくる良太郎の満州でのシーンはこの資料がソース。貴重な一次資料だと思います。なお近場では神奈川近代文学館にしかなくここでしか閲覧できなかった。こういうものこそもっと読まれるべきと思う。
・悲しき戦記 (伊藤 桂一 著 講談社文庫)
これは連作短編のフィクション(小説)ですが、著者の経験かなと思うこれまた生々しい戦地の話や兵隊の感覚がとても為になりました。読み物として純粋に面白いです。なんと恐ろしいことにキンドルアンリミテッドで読めちゃうんだよな……いや、正直なところ、こういうものこそ金払って読みたいんですけどね、わたしゃ……。
・戦争における「人殺し」の心理学 (デーヴ・グロスマン 著 ちくま学芸文庫)
これは別に今作に出てくる戦争に限った事柄を扱った本ではないのですが、戦争下における一般兵士の心情を知りたくて読みました。かなり鮮烈な事象とかも描かれてぐひゃあと言いながら読みましたが、人間性ってのを考える上で有益でしたね。ただ、グロスマンが元にしているデータが実は偽造されたものという疑いが最近出たので、情報の信憑性というとなんともはやなのですが。
《シベリア抑留関係》
・戦後強制抑留 シベリアからの手紙 (平和祈念資料館 刊)
これは非売品の小冊子。漫画で分かりやすくシベリア抑留の様子が描かれてます。平和祈念資料館に行けば無料でもらえるよ。入館も無料だよ。
その他、資料館の展示物もたいへん執筆に役立っています。
あと、平和祈念資料館では実際にシベリア抑留された方の話を聞く機会も定期的に設けてまして、そこにもお邪魔しました。いやあ、生で話されると重みが違う。ひたすら生き抜いて下さってありがとうございます……という感じでした。
私がお話を聞いた方はお住いの福生市のyoutubeでも体験記を公開されてますね。見てほしいなあ。これは完全版ですが、編集したもっと短い動画もあるみたいなので……。
「行き先も、分からずに~20歳の初年兵、シベリア抑留の記憶~証言篇」
https://www.youtube.com/watch?v=o1vjqI2yaiU《戦後資料》
ここからはまだ公開してない部分になるのでネタバレにならない程度に。
・兵士たちの戦後史 戦後日本を支えた人びと (吉田裕 著 岩波現代文庫)
このあと、そんなにがっつり作中に出てくるわけではないのですが、戦後の良太郎の感情を追う手がかりとして読みました。
・懐かしの昭和30年代 (宝島社)
・懐かしの昭和40年代 (宝島社)
写真がいっぱい載ったムック。当時の大衆文化を知るのにたいへん役立ちました。
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さてさてさて、『梨子割』更新はただいま第四話「異国の地の桜」中盤ですが、執筆分は第九話、時代にすると昭和五十一年まで書き終わってます。あと終章入れて三話かな。昭和が終わると共に話も終わる、そんな構成ですので。現時点で77000字。だから10万字はいかないんじゃないかな、という長さです。思ったより短い話になりました。まあカクコンに出すわけでもなく(これがカクコンで受賞しちゃったら事件でしょうが……)、出すつもりの公募の下限文字数はもう超えているんでいいんですが。
でもめちゃくちゃ濃厚な物語だな……と思います。文字数のわりに。正直、疲労も半端ない。やっと終わりが見えてきたのでがんばれる……とりあえず執念で書き終えてやる……といまはゼイゼイ言いながらラストの構想練ってますよ……。
というかここまで労力かけてエタったら悲しいじゃないですか!!!
書くよ、書くよ、もう、意地で。
良太郎と邦正がどういうエンドを迎えるか、誰よりもつるが知りたいんじゃ!!
でもそれにはつるが書かねばならんのだーうおー!!(吐血)
もうこんな口当たり悪い話を読んで下さるみなさんには感謝しかないです。
だって、ここ一年のカクヨム長編「エトランゼ二部」→「てんえが」→「梨子割」ですからね。温度差が酷すぎるんですよ。恋愛ファンタジーの次にこれが始まったら普通怒るよな……と思いながらつるも書いてますもん!自分でも思うもん!!
でも、何を差し置いてもいまこれが書きたかったのが、これなんですわ……。
なぜって聞かれるとほんと困るんですけど。
なのでみなさまにはもうちょっと、お付き合い頂きたく。
つる執筆史上わけのわからん力の入れ方をして書いてますんで、どうか『梨子割』、引き続きよろしくお願いします。