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南海トラフ巨大地震はいつ起きる?

今夜、神奈川県で震度5弱の地震がありました。

東京もかなり揺れましたが、今年は正月早々、能登半島で大地震。つい先日も宮崎県で地震があったばかりです。ネット上では「南海トラフ巨大地震が近い」という物騒な噂がしきりに飛び交っています。

私は新型コロナウイルスの世界的大流行に揺れた令和2(2020)年の夏、南海トラフ巨大地震をテーマにしたSF小説『日本滅亡』を執筆しました。

南海トラフ三連動超巨大地震に誘発され、相模トラフ巨大地震が発生。さらに富士山が大噴火するという未曽有の複合巨大災害が日本列島を襲う話です。

東海、東南海、南海の震源域が別々に動くのか。それとも3つの震源域が同時に動くのか。それによって被害の規模も違ってきます。

仮に宝永地震(南海トラフの全域が動いた日本の歴史上最大級の地震)クラスの超巨大地震が起きた場合、日本の太平洋沿岸は大津波に襲われ、重要な港湾と工業地帯は壊滅し、津波による死者だけで47万人。経済的損失は220兆3000億円(日本の国家予算の2年分)に達し、日本のGDP(国内総生産)の42%が失われるとされています。

南海トラフ地震は90‐150年間隔で発生しており、前回の昭和南海地震(1946年)の92年前に安政南海地震(1854年)が発生しているため、一部の研究者は「昭和南海地震から92年後の2038年に起きる可能性が高い」としています。

南海トラフ地震が起きた場合、相模トラフ地震も誘発する可能性があり、仮に南海トラフと相模トラフが同時に動いた場合、マグニチュード10クラスのハルマゲドン級の超巨大地震になる可能性があります。

M10と言われてもピンときませんが、震度7(人間は立つことも歩くことも座ることも不可能。寝ていても吹っ飛ばされる激しい揺れ)の激震が1時間以上も続きます。

揺れている間に津波が襲ってきます。無論、逃げることも何もできません。被害は想像を絶するものになるでしょう。

特に東京は悲惨なことになります。東京は湿地を埋め立てた軟弱地盤なので、M7.5の地震で9割の建物が被害を受けます。

『日本滅亡』の登場人物・江戸川静香は下町の老朽化した自宅で被災しますが、昭和56(1981)年以前に建てられた木造住宅は全滅するでしょう。

同じく登場人物の大矢明裕は川崎市のマンションで被災します。鉄筋コンクリートの建物は堅牢で耐震性はありますが、手抜き工事でいい加減な施工をしているところも多く、経費削減のため安い海砂を使い、塩分で腐食し鉄筋がボロボロに錆びてコンクリがひび割れしている建物も多いのです。

設計上は「耐震性あり」とされている建物も実際は見かけに過ぎず、首都直下地震が来ればほとんどの建物は耐えられず倒壊する、という専門家の見解もあるのです。

『日本滅亡』に登場する佐藤雄三は外出先で被災しますが、東京は通勤・通学のために近隣の千葉、埼玉、神奈川から集まってくる人が多く、停電で電車が止まり、道路が壊れて通行止めになれば大量の帰宅難民が発生します。

歩いて帰ろうにも道は被災者の群れに塞がれ、そこに大火が襲ってきます。地震で地面は波打ち地割れが広がり、電線が切れて水道管も破裂し、壊れた車からガソリンが漏れています。歩くのも命がけです。

今夏のような猛暑で水も食料もない状況を想像してみてください。職場や学校から遠く離れた自宅に歩いて帰るのは無理でしょう。

なるべく東京から離れた方がいいのですが、地方は少子高齢化で過疎化がとんでもないことになっていきます。

基本的なインフラやライフラインの維持も難しくなるため、田舎暮らしは相当体力がないと厳しいでしょう。

太平洋沿岸部は大津波で全滅します。房総半島や伊豆半島は暮らしやすい土地ですが、危険度はかなり高く、移住先にお勧めはしません。

静岡、愛知、三重、和歌山、四国も温暖な土地ですが、ここら辺は完全にアウトです。地震と津波で壊滅します。

温暖な九州や中国地方で農業をしながら自給自足に近い暮らしをするしか生き残る道はないのかもしれません。

南海トラフだけではありません。阪神・淡路大震災(1995年)と東日本大震災(2011年)で地震活動期に突入した日本列島は巨大地震の時限爆弾を抱えています。

東日本大震災は三陸沖500キロの断層がずれて40mもの巨大津波を引き起こしましたが、地震の衝撃波は千葉沖で止まりました。今、千葉と茨城の県境付近にものすごいストレスがかかっています。

江戸時代の延宝房総沖地震(1677年)以降、千葉沖では巨大地震が起きていません。延宝地震では房総半島に大津波が押し寄せ、千葉は高い山がないため、内陸10キロまで津波が侵入したことが分かっています。

津波で海況が変わり、以後10年、魚がまったく獲れなくなってしまい、この地の漁師は廃業してしまいました。

江戸初期の慶長三陸地震(1611年)は三陸沖が震源と考えられていましたが、最近の研究では、震源はもっと北の北海道沖だったのではないかと言われています。

北海道東部の千島海溝沿い2000キロの断層がずれた場合、M9クラスの超巨大地震と大津波が襲ってきます。

北海道沖の巨大地震は300‐500年間隔で発生しており、仮に前回の地震が400年以上前だったとすれば、もう何時起きてもおかしくありません。

津波で再び福島第一原発が破壊され、膨大な放射能汚染水が海に流れ出た場合、環太平洋諸国は「フクシマの放射能で水産資源が被害を受けた」と主張し、日本に数百兆円にものぼる莫大な損害賠償を請求するかもしれません。

明日来るのか、それとも十数年後なのか……。確かなことは神のみぞ知るですが、“その日”はいずれ確実にやってきます。

余談ですが、海外を旅していると「外国には歴史があるが、日本には歴史がない」ということを痛感します。戦争と災害で失われてしまったからです。

東京は戦後作られた街です。あの戦争で何もかも焼けてしまいました。戦後は元通りに作り直すのではなく、すべてアスファルトとコンクリートで塗り固め、排ガスまみれのつまらない殺風景な街並みに作り変えてしまいました。

あの戦争で歴史も死んでしまったのです。今あるのは歴史の残骸だけです。全国各地のお城やお寺も戦後復元したものばかり。そこに歴史はありません。あるのは東京と変わらない、つまらない風景だけです。

なんという馬鹿げたことをしたのでしょう。この国は取り返しのつかないことをしてしまったのです。

南米のコロンビアは戦乱の絶えない国で日本と同じ地震多発地帯の火山帯にあります。それでも歴史は生きているのです。

首都ボゴタ中心部の旧市街はスペイン統治時代の面影を色濃く残す歴史的な街並みが広がり、まるで数百年前から時間が止まってしまったかのような不思議な感覚になります。

人々は歴史を守ることに誇りを抱いており、凄まじい暴力の時代を経験しても尚――1899年の千日戦争、1948年のボゴタ暴動、1985年のゲリラ戦争も生き延びて――今も悠久の歴史が息づいているのです。

さて、歴史を失った国はこれからどこへ行こうとしているのでしょうか。

南海トラフ地震で何もかも失った後、この国には果たして何が残るのでしょうか……?

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