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サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました18

https://kakuyomu.jp/works/1177354055261988141/episodes/16817139554646175345


……ここまで来て俺は迷っている。何を? 決まっている。ゴス美に阿賀ヘルからメッセージがきたと伝えるか否かだ。



 リスク管理という点では間違いなく共有するのが正しく、また真っ当な判断である事に疑いようがないのだが、一個人として、男として、兄として、果たして本当にその行動を肯定、正当化できるか疑問が浮かび続けているのだ。ここは如何に無謀であっても、一人で事態の収束を図らんと動くのが正しいように思えて仕方がないのである。だが俺はその気概を発揮できるほど強靭でもなければ勇敢でもない。常に怯え、恐れ、逃げようとしている。考えてみればピチウが出ていった時だってそうだ。ゴス美に手を掴まれていたとはいえ、振りほどけないわけではなかったはず。俺はあの時、如何にも怒り、困惑し、思考が濁ったように錯覚しながらも、心の憶測では狡猾に身の保身を考えていて、自身の意に反して妹を追わなかったと納得し、周りにもそう見えるよう仕向けていたのではないかと自問せざるを得ない。

 そして今もそうではないか。こうしてゴス美のところに来ているのは、俺自身が自らの責任から逃れんとこうしているためではないか。姑息で矮小な、小人の自己満足のためにゴス美を使おうとしているのではないか。やはり、自身にそう問う。俺の行動理念は、保身と体裁によって動かされているような気持になる。

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