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魔女は7月に死ぬ、の事。

当初。
喫茶店での僕と彼女の会話劇のつもりでいました。
魔女は7月に死ぬんだよ。と彼女が言い。
何故なら世界は神様が6日で作り最後の1日休息をしたのちに完成した。つまるところ、7は世界に等しく、故に完全な聖なる数字だと説き。半面、魔女は神様から最も程遠い存在だろ? だから魔女は7に呪われている、と彼女は結ぶ。
野球の7回攻撃の由来や1から10の数字の中で他の数字との関係を持たない孤高の数字だなんてことをつらつら二人で話し合いながらだらだらコーヒーを飲んだり、パフェを食べたり。ラッキーセブンから、獣の数字の話題に飛びながら、ただ言の葉の間で踊り合う。
やがて、会話は一回りして魔女は7月に死ぬ。言い換えれば7月以外には死なないんだよと、彼女は言い。己の胸を抉じ開け心臓を抉り出し僕へ渡す。告白とでもいうように。
「ほら、言ったとおりだろ」と微笑む。

ところが。
「魔女は7月に死ぬんだよ」
その後、なぜか彼女は満開の向日葵の前で微笑んでいたのです。
その瞬間。『あ、無理だ。これ』声に出ていました。彼女のしてやったりというような笑顔が見えました。
少なくとも1000や2000文字で収まる話ではないというのが何となく想像ついてしまいました。夏に出会い、秋に知り、冬に傷つき、春に……。そういう物語であるべきなのでしょう。そのうえでもう一度廻り来た夏にどのような選択を取るのかは、今のところ自分の中に明確な答えはないのですが。
しかし不思議で仕方がないのは。
よくキャラが勝手に動き出すとは言うものの。動き出すと言うほど書いてもいない筈なのです、彼女を。
それこそ「魔女は7月に死ぬんだよ」この一言を語らせただけです。
確かに魔女という『謎めいた女性』という属性は与えていましたが、それすら投げ捨てて太陽の下白のワンピースに麦わら帽子という魔女からかけ離れた格好までしてくれました。肝心なことは語らないと言う私の中にある魔女のイメージだけは守ってくれたようですが。
どーしてこうなった。わずか777文字の間何度呟いたか。
書ききれないと分かった時点で、いくつか浮かんだ場面を抜き取って僕のフラッシュバックとしてまとめると決めました。どうせなら777に収めようと、余計なことも考えました。結果としてダイジェストの様な断片の様なそんな、彼女と僕との間に何があったのか、欠片も触れる事のない物語です。
恐怖であったのか恋愛であったのか。いやこちらは、元々の想定でもよく分からなかったのかもしれませんが。
書ききれない時点で、最初の構想に戻せばよかったとは分かっています。そちらであれば多分2000字くらいで収まっていたでしょう。
けれど、そうする気分になれませんでした。
彼女が向日葵の前で微笑んでいたのには何か意味があったのだろうと。そんな風に思うのです。思いついて書いたのは私自身なのですが。そんな風に思うのです。
怠惰。というべきかもしれません。物語はピリオドをつけてこそ物語であるのですから、終わりは語られるべきものです。
ただ、ひょっとしたら書かれるべきだと思ってもらえることにも、意味や意義があるのではないか、なんてことを思いもするのです。
いや、まぁ、いいわけでしかないと言うのは重々承知しているのですけれども。
そんな訳なので、未来の僕がいずれ形にするのでしょう。切り取った季節の1幕かもしれないし、終わったその先の後日談かもしれませんが。

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