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小手先の技術についての報告・その1:三幕構成(発端、中盤、結末)

こんにちは。五十貝ボタンです。

2021年を小説を学び直す年と位置づけたことに関しては、前回のノートにも書きました。

2021年の抱負 - カクヨム https://kakuyomu.jp/users/suimiyama/news/16816452218452213112

というわけで、小説について学んだ「小手先の技術」を
少しずつ書き残していこうと思います。

付け焼き刃だろうがなんだろうが、
まず小説を書く役に立つ技術や理論がほしいという気持ち、
五十貝にはよーーーーーーーーくわかります!
なぜなら僕も同じ気持ちだからです。
誰もそんなこと言ってないって? まあ、いいじゃないですか。

僕が思ってるんだから、同じことを思っている人に読んでもらえればいいのです。
「小手先の技術より、もっと重要なものがある!」
……とお思いの方は、もちろんそちらを追及してみてください。
でもどこかで行き詰まった時に、
小手先の技術が助けてくれることもあるかも……ないかも。

とにかく、人に伝わるように書けていなかったら意味がないので、
わかりにくい箇所があったら指摘いただけると嬉しいです。





さて、小手先の技術を身につけるために、いくつかの本を読みました。
物語構造、脚本術、キャラクター造形などなどに関する本です。

きっかけは、ブレイク・スナイダーの『SAVE THE CATの法則』という本を読んだことです。
この本は魔法のように物語を分解する方法を紹介している本です。
読み進めながら、今まで書いてきた小説の構成に思いを巡らせ、
ああすればよかったな、ここはうまくできてないな、ということを考えさせてくれました。

そして、同じように物語について書いている本をいくつか読んで、
自分なりの『小説の書き方』を身につけてから次回作に挑もう、と考えました。
というわけで、読んだ本の記録と
その中から使えそうな「小手先の技術」を抜き出して紹介をしていきます。

ちなみに、ジェシカ・ブロディという作家が
『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』という本も出しています。
こちらは、イントロがカクヨムで読める太っ腹ぶりを見せています。
https://kakuyomu.jp/works/16816410413898889590/episodes/16816452218358559366
関係者の皆さんに大感謝していきましょう。



■三幕構成の役割

さて、勉強するならベタ中のベタから手を着けて行くべきです。
というわけで、映画脚本術についてとてもメジャーなタイトルに手をつけました。
シド・フィールドの『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』です。

この本を特に有名にしたのは、映画における基本的な枠組み、すなわち

「三幕構成」

を明らかにしたことです。

120分の映画なら、
・最初の30分が「第一幕(発端)」
・次の60分が「第二幕(中盤)」
・最後の30分が「第三幕(結末)」
を描くものである、ということをくり返し教えてくれています。

五十貝も三幕構成とその量的バランスについては理解していましたが、
本書を読んで「すぐに使える!」と思ったこと、すなわち小手先の技術は、
「発端・中盤・結末」の三つがストーリーを支配しているということです。

フィールドによれば、それぞれの幕もまた発端・中盤・結末によってできており、
その幕を構成するシーンも、発端・中盤・結末を持っている、と言います。

ってことはつまり、
発端・中盤・結末の三つさえ作れるなら、
それはもう物語が作れるということだ!

この天啓に五十貝は小躍りしました。

プロットを考える時は、まず全体の発端・中盤・結末を考え、
次に「発端」の発端・中盤・結末を考え、
さらに「発端の発端」の発端・中盤・結末を考え……
そうやって全体から細部に入って行けばいいのです。

逆に、執筆作業をするときは、小目標を細かく設定できます。
今日は「発端の発端の発端」まで書けばいい、明日と明後日で「発端の発端の中盤」を書こう、
というふうに小説全体を小刻みに作り上げていけるなら、
「まだ十万字以上も書かないと終わらないのか」という
暗澹たる気持ちに立ち向かう大きな武器になります。




■発端・中盤・結末の使い方1:変化を描くこと

映画でも小説でも、物語は「発端・中盤・結末」からできています。
特に娯楽小説ではこの傾向が強くなります。
純文学的な表現や、私小説、エッセイ、詩などでは必ずしもこれにこだわる必要はありませんが、
五十貝が志向するようなライトノベル的表現は基本的に娯楽小説であり、
またアニメーションに移し替えがしやすい、つまり映像的な表現が多用されます。
ということは、基本的には脚本術で書かれていることはかなりの部分、
ライトノベルを書く助けになるはずです。

前述した『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』には、
三幕構成についての具体的な解説と、実際の映画作品での使われ方が詳細に書かれています。
勉強したい人は当然そちらを読んでもらうとして、
五十貝にとってもっとも重要な部分について、
つまり「小手先の技術」としてすぐに小説に使えそうな部分について書き記しておきます。

なぜ「発端・中盤・結末」という三要素が必要になるのか。
それは、物語に不可欠な二つの目的を満たす使い方ができるからです。

三幕構成(発端・中盤・結末)の1つめの使い方は、
・変化を描くこと
です。

なんだか当たり前のことを言っている気がしますが、
極論、この点さえ満たしていれば小説は小説として成立させられます。

物語は、変化を通じて表現されます。
ストーリーの最初と最後で、何かが変化していなければなりません。

そして前述したとおり、それはシーンでも同じです。
たとえば、こんなストーリーを考えてみましょう。

・部屋の中で目を覚ました主人公が、働くために、部屋の外に出る(発端)
・主人公が朝から働いていたら、日が暮れて、夜になった(中盤)
・主人公は働き疲れたので、部屋に帰ってきて、眠る(結末)

発端・中盤・結末の中に、さらに発端・中盤・結末の要素があることが分かります。

最初と最後で同じ部屋の中にいますが、
「目を覚ます」のと「眠る」のとでは正反対の動きをしています。
どこまでが「発端」でどこからが「結末」なのかを決めることで、
主人公の何がどう「変化」したのかを描くことができます。
これが、ストーリー全体での変化です。

また、発端では「部屋の中」→「部屋の外」、中盤では「朝→夜」結末では「部屋の外→部屋の中」と、
それぞれのパートの中でも変化が描かれています。
これが、シーン単位での変化です。




■発端・中盤・結末の使い方2:楽しませること

さっきの例である「起きて、働いて、寝る」は
たしかに発端・中盤・結末がありますが、
お話としてぜんぜん面白くない、と思ったのではないでしょうか。

読者が喜んだり、気持ち良くなったり、悲しくなったり、驚いたりするような出来事が
なにも起きていないからです。

そこで、三幕構成のもう一つの目的をはたらかせることにします。

三幕構成の2つめの使い方は、
・読者を楽しませること
です。

1つめの目的に輪をかけて当たり前のことですが、
読者は楽しむために小説を読みます。
でも、ただ単に変化が起きました、というだけでは面白くもなんともありません。

考えてみれば、変化を描くだけなら「発端」と「結末」さえあればいいはずです。
なぜその間に「中盤」なんてものが挟まっているのでしょうか。

それは、物語においては「何が」変化したかと同じくらい、
いやそれ以上に、「どうやって」変化したかが重要だからです。
そして、その「どうやって」の部分が、読者が楽しむ部分なのです。

思い出してみて下さい。
フィールドの提唱する三幕構成は、発端と結末が30分ずつなのに、
変化の過程を描く「中盤」が60分、ほぼ半分を占めます。
発端の状態から、何がどうなって結末に向かって行くのかの過程こそが、
読者を楽しませるために最も時間を割くべき部分、ということが分かります。
(くり返しになりますが、この辺の理屈を詳しく知りたければフィールドの本を読んで下さい)

そして、「中盤」にあたる第二幕は、大きく二つに分かれる、とも言っています。
さらに、中盤では変化に対する葛藤が描かれます。
フィールドの教えに従って、殺気の「起きて、働いて、寝る」の中盤を盛り上げてみましょう。

・部屋の中で眠っていた主人公が友達に起こされて、働くために、部屋の外に出る(発端)
・主人公は朝から働いていたが、お昼ご飯を忘れてしまって、夕方にはふらふらになる。(中盤1)
・ふらふらで帰ろうとする主人公。しかし、見かねた友達が、夕食をおごってくれる。(中盤2)
・食事に満足した主人公は、部屋に帰ってきて、眠る(結末)

どうでしょう。かなりストーリーらしくなったのではないでしょうか。
単に起きて働いて寝るだけの話ではなく、主人公がつらい目にあったり、
逆に嬉しいことが起きて喜んだり、感情も変化するようになりました。
さっきのものに比べれば、「何その話」という感じはだいぶ減ったと思います。

中盤に手を加えたためにストーリー全体の主題が変化し、
発端と結末にも些細な変化が起きていることが分かります。
発端・中盤・結末はひとつながりの構造なので、どこかに手を入れると
それに対応して全体が変わって行くのです。



■まとめ

かなり端折って書きましたが、
このように、「発端・中盤・結末」という型を使うことで、
「変化を描く」「楽しませる」という、小説にとって重要な目的を達することができます。
(フィールドによればこの「型」を「パラダイム」といいます。今なら、「テンプレ」がいいかもしれません)

自分の考えているストーリーのどこが発端・中盤・結末に当てはまるのか?
また、中盤に盛り上がるような要素が入っているか?
そんなふうに分析をすることができます。

フィールドが想定しているのは120分ぐらいの映画ですが、
「発端・中盤・結末」という型さえ守っていれば、もっと短い話にもできます(さっきやったとおりです)。

もっと長い話にもできます。
多くの長期連載作品は、「発端」を描いてから、様々な「中盤」を描いてストーリーを足していきます。
よく作家インタビューなどで「最後だけは決まっている」という回答がされるのは、
「発端」を描いた以上は、それに対応する「結末」はある程度決まってくるから、でしょう。
一方、読者を楽しませることが重要な「中盤」は、かなり好きなように描くことができるというわけです。

というわけで、この発端・中盤・結末の型が分かっていれば、
プロットを作る時には全体から細部に作り込むことができ、
執筆の時には小目標を作ることができ、
ストーリー全体やシーン単位の変化を描きやすくなり、
読者を楽しませる「構造」を作ることができる。

かなり強力な「小手先の技術」として使うことができます。
次に小説を読むとき、書くときは、発端・中盤・結末の機能に注目してみましょう。

レッツ付け焼き刃!

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