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いくひ誌。【3741~3750】

※日々、人は糞と共にある、臓腑の中にちゃんとある、いくら着飾っても偽れぬ美醜、秘められた腐臭、編まれた詩集に滲む死臭は、どことなく不純、清らかに彩られた始終こそが生ならば死はもっと泥にまみれて有り触れた臨終で、基準、それもまた矛盾。


3741:【2022/06/26*マーク】
郁菱万にはマークがある。以下の画像がそれだ。何に視えるだろう。いくつかの像を幻視できるようにしたつもりだ。ちょっと数えてみよう。ざっと数えてみたら六つある。たぶんもうすこし多いが、言語化したときに、まあそういうふうにも見えるよね、と思ってもらえる像は六つかな、と思う。ちなみに、齧った林檎ではないですが、それを七つ目に加えてもべつに構いません。視えたように見てもらえばいいですし、見なくともよいです。バットマンのマークにも似ていますが、作ってしばらく経ってから、そういうふうにも視えるな、と思いましたが、パクリになってしまうので、そこは違うと言っておきたいです。べつにそれでもよいですが。総合すれば、定かではないんです、というマークになります。いくひしさんっぽいでしょ。(真に受けないでください)(画像貼れるようになっているのに気づいたので、使ってみたくなった日でした)(近況ノートさんの過去一覧も一回で見られる範囲が長くなっていてありがたいです。使いやすい改善、ありがとうございます)(これはカクヨムさん運営さんに宛てたテキストですが、しかしここは誰もいない最果ての地、これも過去の記憶を頼りにいくひしさんが再現した、すでに過ぎ去った日々の日誌なのである。むかしはね、そういう文章投稿サイトがたくさんあったのだ。いまも探索すれば残っているだろうけど)


3742:【2022/06/26*へそ曲がりの渦はナンカイ?】
シクった。一番最後に上記の記事がくるようにすればよかった。画像と記事が離れてまう。でも、画像さんとおぬしだけイチャイチャするの気に食わんから、直さんどこ。彦星さんと織姫さんの気分を味わうがよい。(性格が、性格が)(なに?)(歪んでおられる)(光の速度で動いちゃったかな)(質量無限大やないかい)(ブラックホールさんとお呼び)(歪むのは時空だけにしときぃ)


3743:【2022/06/26*熱に透明な夜を】
久しぶり。きみの近況を聞きたいところだけれど、きみはきっと口をつぐんだまま私の目を見ようともしないだろうから、いつぞやのきみの言葉の通り、礼儀としてまずは私のほうから内情を吐露しようと思う。そうだな。まずは音楽が足りない。新しい曲がね。新鮮な予想外の刺激はもうたくさん、とご遠慮したいくらいには時間に追われた常日頃ではあるのだが、それでもできれば飽きに、日々の健やかなる時間を浸食されたくはない。同じ道を通うことが億劫になったとき、それとも家の外に出るのが真夏日にダウンジャケットを着こむくらいに憤懣やるかたなく感じたとき、日々の営みへの食傷を感じずにはいられない。その点、曲はいい。聞き慣れない、記憶にない、新しいというただそれしきのことが精神の淀みを洗い流してくれる。透明な湧水のごとく風が、細胞の合間をすり抜けていく感応が湧く。なんて言うときみは溜め息交じりに、大袈裟、とつぶやきそうなものだ。もうその視線がすでに、だよ。目は口ほどに物を言う。だからきみはそうやってすぐに目を逸らすのかな。私はきみのそういう、態度と内心が裏腹なところを好ましく思う。それを見抜けるじぶんをややもすると誇らしく思うのかもしれない。じぶんが特別に思えるから、ではないよ。いいやそれもあるかもしれないけれど、きみの特別になれたように思えるからだ、きっとね。錯覚、と言いたげな目だね。でもいいんだ。私はきみを通して夢を視ることができるのだから。素敵だろ。新しい曲を探してはいるが、何でもいいわけではない。それはそうだ。波長に合うほうがいいに決まっている。その点、ふしぎなのは、私はきみが歌ってくれる曲ならたいがいなんでも新鮮に聴こえるってことで。どうしてかな。もし私が孤島に一つだけ音楽を持って行っていいと言われたら、きみの歌声を持っていくよ。嘘つき、と言いたげな目をされてもこればかりは本心だからしょうがない。日々の潤いをね。私はいまご所望だ。そのためにこうして遠路はるばる――は言い過ぎにしろ、汗に塗れるのも厭わずに足を運ばせていただいたわけだ。さて、礼儀はこの辺で済ませたことにさせて欲しい。つぎはきみの番だ。どうだろう。私と顔を合わせておしゃべりをしてくれ、とまでは言わない。でも、ただ歌うくらいならしてくれてもいいんじゃないか。私なんてここにいないと思ってくれていい。いつもきみが部屋でそうしているような、誰に聴かせるでもない歌を歌ってくれ。誰の曲かも分からないきみの好きな曲でいい。きみの好きな、曲がいい。私に日々の潤いを分けてくれ。後生だ。


3744:【2022/06/26*猛暑日の朝はもう】
おはよう。予定決めたよ。来月のお尻のほうに行くことにするね。どこにって、ちょっとえー。約束したよね。冗談ってちょっともう。わたしだけ浮かれてるのかと思って恥ずかしいじゃん。そういうのやめてって言ってるでしょ。ごめんってきみはいっつもそう。いいけどね。きみのそれが照れ隠しだってわたし、ちゃんと見抜いておりますから。うん。うん。そうだね、二年ぶり。やっとだね。とか言いながら毎朝こうやって顔合わせておしゃべりしてるから、あんまり久しぶりって感じはしないけど。ふふ。ね。ほとんど喧嘩しなかった。前はあれだけ口論になってたのに。会うたび。それはだってきみが理屈っぽくて、わたしの気持ちをすぐに置き去りにするから。分かりづらいって、それはきみが見る目ないだけです。わたしほど分かりやすいコほかにいないよ。それにきみの考えはわたしすぐに分かるし。いまだってきみは、こんなこと言いたかったわけじゃなかったのに、と思いながら、でもわたしに解かって欲しくて感情が制御できないんでしょ。分かるよ。きみのことだもん。そりゃそうよ。年上ですからね。どこかの甘えたがりくんとは違うので。あ、いじけた。え、なに? 具体的な日程? ん-、たぶん土日になるかな。最後のほうの。えー、その日は仕事? だっていつもはそんな。会えないかもしれない? だー、なんてこと言うのかねこの人は。せっかくわたしが、わたしがだよ。会いに行ってあげますよーって、えーそういうこと言っちゃうー? 有給取りな。ダメです。有給、有休。大丈夫、大丈夫。きみはちゃーんとお仕事休んで、わたしに会いにきてくれるから。そうでしょ? さっきのも頑張ってわたしにいじわるしちゃったんだよね。屈服させたかっただけなんだよね。分かっておりますよー、なんたってわたしはきみの――あ、ごめん誰かきた。ぴんぽん聞こえた? 誰だろ、大家さんかな。ちょっと待っててね。はーい、いま開けま――あ。お、おはよう、ございま……はぁ? なんで? お邪魔します、じゃないよ、ちょっとー、なぁにもう、そういうことするぅ? 来るならくるって言ってよさー、部屋片付けしてないんですけど。ちょっとこら、その荷物なに。しばらく厄介になりますって、仕事は? 有給まとめてとったって、だからそういうことは先に言ってってばもう。きみってばそういうとこあるよね。ふふ。もう嫌。


3745:【2022/06/26*くどく口説くな】
デート? ああ申し訳ないね。そんな余裕ないよ。見て分からない? 息子どもに手こずる毎日だから、化粧だってろくにしてないし、見てこれ。ジャージ。毎日同じの着てんの分かるでしょ。デートなんてそんな、笑っちゃうよね。ああ違うの、いいの、うん。気持ちはうれしい。ありがとう。でも本当にそんな余裕なくてさ。そんな時間あるなら一人で散歩したり、昼寝したり、そうそうぐっすり眠りたいでしょ。そもそも何歳だと思ってんのあたし。きみまだ学生でしょう? 違うの? ふうん。へぇ。よく分かんないけど、頭いいんだね。そういうの知らないからさ。ああいいのいいの、本当のことだから。頭いいなら分かるっしょ。あたしんみたいなのからかってないで、まだきみ若いんだから。ちゃんとそういう、なに? じぶんに合った人見つけなよ。時間の無駄だよ。やめときな。はは。火傷するよって言いかけた。あ、煙草いる? 吸わない? もうねこの時点でだいぶ合わないよね。一緒にいるだけで損するよ絶対。だっていまあたし、あんたのこと、子供らのお守りにちょうどいいな、とか考えてるし、ひょっとしてペットにできるかもとか都合のいいこと考えてるよ。奴隷になりたいわけじゃないんでしょ、だったら――それでもいいって、こえぇよ。怖いからねそれ。本気で口説くときに言うセリフじゃないって絶対。真面目だねぇ、そんな頭下げてまで謝ることじゃないだろうに。子守りしたい? させてくれって、あたしだって子供のことは可愛いんだ。そんなどこに住んでんのかも知らない相手に任せられるほど無責任な親じゃないよ。じゃあ知り合いましょうって、しつこいねきみも。損はさせませんからってもうだいぶこの時点で損をしちゃってる気がするけどさ。一つ聞くけど、あたしのどこがそんなにいいの? そんなすぐいけそうな感じする? 舐められてんのかなって思っちゃうよ。そうじゃないって必死すぎだろ、つうか顔真っ赤。だいじょうぶ? どうした? ん? まあ、そんなに言うならうちの子らに勉強教えてやってよ。頭いいんでしょきみ。家庭教師としてならいいよ、すこしくらい付き合ってあげても。ただし、変なことあったらすぐ警察に言うかんね。よろこんでって、人が良すぎて不信感しかないからねきみ。全然信じてないけど、まあいいよ。あんまりいっぱいはお金あげられないよ。いりませんってそういうわけにはいかんでしょが。タダほど怖いものはないって、まだそっか、きみ若いもんね。ご飯? 手料理ってそんなんでいいの? カレーとかだよできても。やったーって喜び方がガキ。まんまガキだよそれ。あ、何? 休憩終わり? タバコまだ吸い始めたばっかなのに、もったいな。はいはい、分かりましたよ。バイトなのにようやるわ。こっから先は仕事モードでね。畏まりましたよ、リーダー。あ、できたら積み下ろしのほうやっといてください。何でって、だってほら、あれ疲れるでしょ。頼むねリーダー。よろしく。


3746:【2022/06/26*なんか違うな】
恋愛物語はじぶんでつくるとなるとコメディくらいむつかしい。人によって好みが分かれすぎるからだ。王道がない。時代の影響をモロに受ける。コメディもそう。以前はよかったのが、数年足らずで、それは笑えない、になる。恋愛物もその傾向が強い。で、いくひしさん思うに、たぶん、「れーんあい(ハートマーク)」みたいなのでなく、もうほぼそれ友達やろ、家族やろ、くらいの関係に煮詰めたあいだに漂う、そこはかとない踏み外しそうな気配――疑似近親相姦みたいな感じだと、けっこう物語として面白くなる気がする。なんて言うと、非難轟々の冷めた目で見られそうだけど、それくらいじゃないと恋愛物を面白くできる気がしない。ほかのストーリィに恋愛を絡める、くらいならできないこともないが、それはけして恋愛物語ではないのだ。なぜならべつに恋愛要素がなくとも面白いので。トッピングにすぎぬ。そこでいくと、恋愛要素がなくなると面白くなくなる、というラインを攻めるとなると、ホラーやミステリィの技法を恋愛に絡めるしかなくなる。つまり、関係性の間にどんな感情の乱れを生みだすのか、が要となる。恐怖や殺意を絡めればそれがホラーやミステリィになる。なら、恋愛物はどうかと言えば、そこに罪悪感や不安や必死さや期待といった感情の波を生みだせればいい。となると、そもそもの土台が安定していればいるほど、亀裂が入ったときに、その亀裂が物語の紋様として強く作用するはずだ。初対面同士よりかは、別の関係性が築かれたうえでの「恋愛」のほうが物語として面白くしやすい。そうなると、ほぼほぼ親友の立ち位置や、ほぼほぼ家族の立ち位置からの、恋愛関係へどう転ぶ?を支軸にしたほうが、いまは長く時代の変化に耐えられる気がする。これの利点は、必ずしも恋愛が成就せずとも、ハッピーエンドにしやすい点だ。恋愛至上主義批判が巻き起こりやすい昨今の風潮からすると、守りを固めながら攻めにも活かせる構図と言えよう。とはいえかような理屈を唱えるいくひしさんは万年三歳児のあくびちゃんなので、「恋愛? わかんない」になる。恋愛経験皆無だが恋愛免許はどこでとればええの? 学校で習った? 恋人のレシピはどこで見れる? 材料ってなに? 粘土? 小麦粉? ハサミいる? な、いくひしさんであるから、恋愛物は苦手なのである。むつかしい。恋をすると変になるのか、変になると恋をするのか。恋愛が先か、変態が先か。それ判断に困る?な初手でつまづくうつけもの、本日のいくひしまんでした。(うつけものって、漬物っぽいな。響きが)(鬱のナマケモノさんかもしれない)(撃つ獣かもよ)(こわいが)


3747:【2022/06/27*むつかしいよね】
富の再分配については、これも国内の話と海外を含めた全世界での話とを区別しないと混乱する。国内の富の再分配については、余裕の多寡で判断するしかない。ただし、余裕とは単純な稼ぎや利益では計れない。企業に焦点を絞るとして、社会全体の余裕を築くために技術の進歩がいるのなら、そうした技術を生むために負担を背負う企業を国民全体で――つまり政府によって――優遇するのは、それほど理不尽には映らない。問題は、どんな技術が社会の余裕に繋がるのかが前以って判らない点だ。そこは基礎研究への投資や支援と同じ問題を孕んでいる。そのためにもまずは人々の目を肥やすべく教育に力を入れるのは順当な考えだ。そして負担を減らす、という意味では、医療制度を見直し、重病化する前から予防を行える環境を築けるとよい。もっと言えば、病院にかからないような健康を維持できる生活を万人が送れる環境がいる。そのために、ではどうすればよいのか、を考えられるとよさそうだ。企業がそこを考えて技術の進歩や資本の使い方を模索すれば、社会全体で循環した回路が築けそうである。また、貧富の差は何も国内だけにあるのではない。この国はむしろ相対的に裕福層である。ならば、富の再分配という意味では、他国の劣悪な環境で暮らす人々のために富を再分配するのが筋となる。そのために、税金を増やさなくてはならないのです、と言われて、拒める道理を構築できるだろうか。富の再分配を支持しているのではないのですか、と言われて、口ごもらずにいられるだろうか。政府は政府で、海外への支援を積極的に行うのなら、もっと情報を前以って公開し、税金の使い道を含めて詳細に公表したほうがよろしいのではないか。情報が足りないな、と思うことがすくなくない。比較検討そのものができない。考えるための素材がすくない。そんな中でいったい国民に何を考え、選択させようというのだろう。出版社を含め、これからはますます情報の質と量――何より誰もが情報にアクセスできる権利の重要性が増していく。利益の追求を、環境の自由の拡張と呼ぶのならば、まさしく情報は、環境を――未来を――どのように切り拓き、創っていくのかの道具であり、基礎であり、或いは指針の素材そのものと言えよう。反面、利益などいらない、いまのままでもよいですよ、という考えも当然でてくる。環境など変えなくてよい、未来はもっとこじんまりと自然に還るほうがよい、という思想が反動で盛り上がる余地がこれからは増していくと妄想できる。そうなったときに、それではこれこれこのような問題に対処できない、環境が劣悪になる、と指摘するためにも、やはり情報は隠さずに、透明性を維持して欲しいと望むものだ。それができないのは、環境が整っていないからだろう。国民を信用できない。政府を信用できない。海外を信用できない。これみな、環境が整っていないのだ。やはり、すこしずつでも環境を――未来を――より暮らしやすい、個々が自由を拡張できる世界にすべく、情報から共有していくことが優先されるのではないだろうか。本日のいくひしさんはそう思ったのだそうな。(定かではありません)(それはそれとして、個人情報やプライバシーは守られて欲しいですね)(セキュリティが保障されてこそ、情報共有は促進されるものだといくひしさんは考えます)


3748:【2022/06/27*傲慢な雨、略して傲雨】
靴の下敷き、新しいのにしたら絶好調だった。歩きやすい。動きやすい。いいね! でも夕立に遭い、服着たままシャワー浴びたみたいになったのでチャラになった。びっちょびちょ。でもお風呂に入ったあとのコーラが美味しかったので、さよならホームランの日だった。またきてグンナイ。つぎのおはようまで夢の中で遊び倒すぜ。きょうもいっぱい息した。あすも生きよ。


3749:【2022/06/28*ぼんやりの日だった】
汗だくで自転車漕いで出掛けたのに、きょう休みなの忘れてた。小学生か。夏休み初日の小学生か。あわてんぼうのサンタクロースをしてしまったな。無駄に炎天下の洗濯コースを増やしてしまった。もはや汗を掻かないという。掻いた矢先から蒸発していく。そして肌が冷たく、お風呂に浸かると、露天風呂に浸かったときみたいに、あったか~い、になる。皮膚が凍えておるのはなぜ?になる。しもやけみたいになっとるが。日焼けのせいなのか、熱中症もどきなのか。元気だからよいが、じつは元気でない可能性も拭えぬ。汗みたいには拭えぬ。わがはい、万年風の子、元気の子、タケノコ、ノコノコ、みぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ。意味なんて皆目サラサラござらんRAP、略してサラんラップのいくひしまんでした。てい、OH!(それを言うなら、せい、HOO!では?)(帝王なので)(そっち!?)(非帝王なので)(なんだ、帝王じゃないんじゃん)(否定王なので)(否定ばっかの王かよ、最悪じゃん)(抵抗したいので)(なら「てい、KOU!」じゃん。Kがないうえに、Uもなくて、Hがある)(Kなし(貶し)で、U(YOU)がいなくて、H(スケベ)なんだ)(最悪じゃん)(K.O!)(やられてんじゃん)(夏、バテ)(わし、ダメ、みたいなノリで倒れるのやめてくれ)(いま、だけ)(いい加減にSAY、YO!)(あ、鳥肌。暖房つけていい?)(真夏日ですけど!?)


3750:【2022/06/28*九木隹】
雑さを好きになると、たぶんほとんど嫌いになることがないな、と表現を見て思う。要は、欠点そのものが好きだからだ。その人の変えようのない、生涯ついて回るだろう、至らない箇所――いわゆる「世間一般からすると上手と見做されない要素」を、いいなぁ、素敵だなぁ、と思えたら、それはたぶん、物凄く技術を高めるのと同じかそれ以上に、表現そのものと鑑賞者を結びつけ、心を動かす触媒になるのではないか。ただし、それは雑さゆえに、本質的には未熟さであり、ノイズであるから、本来は薄れれば薄れるほどよいはずなのだ。したがって、第一印象でマイナスと捉えられることもあるかも分からない。基本は、そのほうが多いだろう。だが、多くの者から欠点と見做されるそれそのものに強く惹かれ、魅力として捉える受動者にとっては、その雑さそのものがキラキラと輝いて映るだろう。汚泥の底の微かな湧水のごとく、玉に映ることもあるはずだ。雑さと個性は、重なる部分もある。しかし、個性はいちど長所と見做せば、長所の性質を伸ばすことができる。だが雑さは、いかにそれを長所と見做そうとも、しょせんは雑さなのだ。未熟なのである。したがって、長所と見做そうとする姿勢そのものが、雑さを際立たせ、長所としての質を貶める。愛や正義と似ている。それそのものを肯定してしまうと即座に薄れ、塗れ、淀み、崩れる性質がある。雑さは、ないほうがよい。すくないほうがよい。だが、それでも打ち消せない個性からすらもはみ出たところに宿る魅力があることもまた否定できない。雑さとはつまるところ、光により生じる影である。宇宙はそもそも暗いというが、しかし実は宇宙は微かな光で埋め尽くされている。それを暗いと感じる人類の感受性の低さが、主観の中でのみ影を大きく映しだしている。影は、影ではなく、雑さもまた雑ではない。光をより多く捉えられるようになればなるほど、微かな影に、雑さに、尊さを覚えずにはいられなくなるだろう。最後まで消えることなく残る影に、雑さに、美を見出せずにはいられないはずだ。定かではない。


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参照:いくひ誌。【2211~2220】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054890836321

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