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いくひ誌。【1791~1800】

※日々、できることができなくなり、理想がゆがんで、塗り替わる。


1791:【繋がりの是非】
孤独が好きなので、人との繋がりを前提にした物言いには、ああまたか、みたいな諦観を覚えてしまうのだが、かといって「孤独はいいぞー」と言うつもりはない。いくひしが人と直接に関わるのが苦手なように、人と触れあえないことが苦痛に感じる人もいるだろう。各々、じぶんの望む環境を整えていけばよい。ある意味で、社会に生きている以上、誰もが人と繋がっている。無人島にでもいかないかぎり、或いはどこかの部屋や洞窟に閉じこめられてしまわないかぎり、誰しもが誰かと繋がっている。ただ、直接なのか間接なのかの違いはある。いくひしは、人と繋がりたがる人たちよりも、人との繋がりをつよく感じてしまうのだろう。みなには眩しくない光が眩しく感じる。近づきたくない。人間そのものと関わらず、その人の発する表現や考えを時間差で、遠くから受け取れればそれで充分なのだ。言ってしまえば、いくひしは孤独であるほうが多くの人と繋がっていられる。みながいくひしを孤独だと言うだけで、いくひしはべつに孤独だと思っていない。寂しがり屋だし、本当に独りになってしまったら、やはり嫌だ。人類最後の人間になって、本も読めず、物語にも触れられず、死ぬまでずっと独りになりたいか、と問われれば、そんなのは嫌に決まっている。太陽みたいにつよい光から距離を置きたいだけであり、ほんわかと光を感じられれば充分なのだ。みなには繋がっていないように視えるだけで、いくひしは孤独だが、孤独ではない。目のまえに太陽が現れてしまうと途端にいくひしに繋がっていた無数の糸はちぎれ、いくひしは孤独になってしまう。孤独になりたくないから、孤独が好きなのだ。みなにとっての繋がりがいくひしにとっては孤独であり、みなにとっての孤独がいくひしにとってはみなと繋がっている状態だと呼べる。いくひしは孤独だ。だからこそ孤独ではない。


1792:【評価基準】
いくひしの創作においての評価基準は、そのひと固有の世界観を感じられるか否かなのだなぁ、としみじみ理解した。文章が上手なひとはたくさんいるけれども、自身の世界観を更新しつづけているひとは稀なのだ。世界観を持っているひとは、文章が下手でも読ませるし、世界に浸らせてくれる。そういうものにいくひしは惹かれるのだなぁ。好きです。


1793:【世界観とは?】
ある種の法則によって結びつき、拡張されつづける「好き」の複合体のことである。


1794:【美】
世のなかには二種類の美人がいる。排泄行為を嘆かわしく思い、なぜ美しいじぶんからこんな醜汚が垂れ流されるのか、と悲嘆に暮れる者と、我が身から零れ落ちた一部だありがたく思え、と排泄物にすら美意識を反映させ、付加価値が生じることに一抹の疑いも抱かぬ者である。いずれにせよ、人はみな排泄物を抱えて生きている。醜く、臭く、汚らしい。美人とは、それら卑近な事実を度外視したさきに現れる幻想であり、上品さ、高尚さ、清らかさもまた、切り捨てられた現実のうえに成り立つまやかしである。しかし、現実というベールを脱ぎ捨てた真理はかくも筆舌に尽くしがたく、美も醜も超越し、ゆえに誰も言葉にできず、読み解けない。現実は醜く、虚構は美しい。そして真理はただそこに。


1795:【一般化したあとは】
百合やBLなど、同性同士の恋愛を含む感情の揺らぎを掬い取る創作物は、それが社会に当然あってしかるべきもの、との共通認識が広く社会に浸透した段階で、百合やBLというくくりを打ち壊す方向へと舵をとらなくては、虚構が現実の柔軟性を阻害し、無用な軋轢を絶やさぬ触媒となりかねない懸念については、いまから充分に思考を煮詰めておく必要性があるだろう。百合やBLというくくりなくして、同性同士の感情の揺らぎを描けない、というのは、いささかつよい区別を感じさせる(同様に、少女漫画、少年漫画といったくくりも、女性らしさや男性らしさといった、誤った刷りこみを助長する触媒になっているように感じられる)。むろん、創作物は現実の社会問題を是正するための道具ではない。よって、創作者が慎むべき道理などはない。しかしそれでも、百合やBLが社会に普及したつぎの段階では、それらジャンルの垣根は自然消滅する方向に働き、どんな物語にも百合やBLの要素があって自然な環境が整っていくのではないか、と期待するものである。それは、どんな物語にも謎があり、広義のミステリィと呼べるのと同じように。


1796:【おさめるものがないでござる】
やあやあ、いくひしさんだ。出掛けようと思っておそとにでたときにかぎって雪や雨が降ってくる現象に名前はついているでござるか? マーフィーの法則でありそうでござるが、どうなんじゃろ。帰り際に、よいお年を、と言われて、ありゃーひょっとしてきょうで××おさめかや?なんて気づいて、はひゃー、もうことしも終わりでござるか、んみゃー、となってしまったでござる。ことしはいくひしさん、何か一つでも成長できたでござるか、目標を達成したでござるか。キコキコ自転車を漕ぎながら、雪の舞う夜の街をすいすい泳いできたでござるが、みゃー、なんもしてない一年だったでござる。生産性がなかったでござる。小説ですら、予定の一割もすすめられずに、予定外の余計なモニョモニョを量産しては、逃避に明け暮れた日々でござったでござる。ツイッターとかインスタとかnoteとかSNSをいろいろはじめたけれども、案の定というか、反響はなかったでござる(読んでくださった方には特大感謝花火を打ち上げたいでござる)。想像どおりすぎて逆に安心したでござる。あとはそうな、健康だったのはよかったでござる。万年筋肉痛のいくひしさんにしては、あまり身体に負荷をかけずに済んだ一年だったでござる。ただ怠けてただけー、とも言えるので、あまり誇れた成果ではないでござる。あとはなんじゃろな。ことしは意識的に百合とBLをつくろうとしていたけれども、来年からはちょっと抑え気味にするでござる。SFにしてもAIと仮想現実はもうお腹いっぱいでござる。退廃的な世界観はまだちょっとつくり足りないというか、つくってこなかったので、そういう文明が崩壊したあとの世界は意識してつくっていきたいでござるな。短編小説は電子書籍化していないのが、二冊分くらい溜まっているので、つくりかけのをやっつけたら、随時書籍化していくでござる。あと来年は、アマゾンのPODを利用したいでござる。一冊から紙媒体の本を販売できるでござる。五万円の登録費が捻出できなかったのと(マンガの新刊をがまんできなかったでござる)、同人誌をそのまま流用するにはちょっとお粗末な装丁だったので、ちゃんと編集(デザイン)しなきゃなぁ、と思ってたら、気づいたらことしもあと73時間を切っていたでござる。編集技術を磨きたいでござる。とりあえず、電子書籍化だけはつづけていくでござる。たくさん物語をつくるでござる。フリー素材にして著作権を放棄してもいいかなぁ、と考えているけれども、まだ踏ん切りがつかないでござる。小説に飽きたら、そうする予定でござる。来年はSNSの利用を控えるでござる。ことしはたくさんのひとと一方的に繋がったでござる。たくさんの好きを溜められて、満足でござる。何もお返しできなかったのが心残りなので、来年はちょびっとでいいからお返しするでござる。がんばるでござる。あ、うそでござる。がんばりたくないでござる。好きなことだけしていたいでござる。眠いので寝るでござる。おやすみでござるー。


1797:【カタチと素材】
じぶんのしあわせはじぶんでしか決められないけれど、じぶんのしあわせをかたちづくっているのはじぶんの外にあるものばかりなのだ。


1798:【虚構人間】
光が粒子と波の両方の性質を併せ持っている、というのは、相転移とどう違うのだろう? たとえば一年が一秒に感じるような宇宙人が十年間この国の土地に降り立ったとして、そのときその宇宙人の目には、雪が十回、周期的に現れたり消えたりして映るはずだ。じっさいには雪は水や水蒸気となって、変わらずそこにあるのだが、時間スケールの異なる観測者には、消えたり、現れたりするように視える。同じようなことが、極小の世界における粒子や波にも言えるのではないか。場と場が干渉しあうことで、波は粒子として振る舞い、人類には観測可能な現象として顕現するのではないか、と足跡のつづく灰色の街並を眺めながら考えた。もちろんこんなのはいくひしの飛躍した妄想なので、真に受けてはいけません。いくひしの八割は真に受けてはいけないものでできている。残りの二割は、記憶違いに錯誤に思いあがりである。


1799:【能力はあるかないかの二択】
じぶんよりも能力が高い相手には従わなければならない、といった誤った前提をもとに様々な行動選択を行っている者が多いように観測される。たしかに、じぶんよりも能力が高い相手の言うことをきいたり、仕事を任せたりしたほうが、目的を遂行しやすくなる。ただ、すべての分野で能力が高い人物というのは稀だ。ある特定の分野で突出した技能を有しているからといって、ではその人物の言動をすべて真に受けてよいのか、と言えば、答えはノーである。そもそもの話として、誰のどんな言動であっても真に受けるべきではない。確率の問題として、技術の精度がより高く、成功体験を有している者の判断を優先したほうが得をしやすいというだけの話であり、その人物の能力の多寡は、その人物そのものの優劣を決めるものでも、ましてや正しさを保障するものでもない。にも拘わらず、社会に息づく者たちは、じぶんよりも優れている、と感じる相手の言動を無条件に信じ込もうとする性質を帯びている。いくひしも例外ではない。往々にして、見かけ上そう視えるというだけで、その人物が真実に優れているかどうかは定かではない。能力の多寡を決める基準そのものが間違っているといった事例も珍しくはないだろう。おおむねそうだ、と言ってしまっても言いすぎではない。足の速さ一つとっても、短距離走から、長距離走、障害物競走から、競歩、サッカーのドリブルから、ラグビーのタックル、バドミントンや卓球の反射神経や、剣道の間合いを詰める瞬発力と、問われる技術は様々だ。スポーツという枠組みから外れていえば、いかに走らずに済む環境を整えるか、といった真逆の資質を有していたほうが能力として優位に立つこともある。基本的に、技術や能力とは、いちがいに比べられないものなのだ。にも拘わらず、上辺の数値にまどわされ、周囲の人間たちの阿諛追従な態度に流され、相手がじぶんよりも上かもしれない、と錯覚しただけで、無条件に相手の言動を真に受け、付き従ってしまう者が多々散見される。繰りかえすが、いくひしも例外ではない。あまり他人の言動をおいそれと聞き入れないほうがよい。素直さとは、聞き分けのよいことではない。納得できる理屈を考え、本当にそうだろうか、と自身に問いかけつづける姿勢が、素直の意味だ。他者の意見を取り入れるのは、飽くまで理屈を構築するための素材集めであり、必要であれば、いつでも捨てて構わない(相手の意見を取り入れずとも理解するだけなら充分可能だ)。物質とは異なり、思考は、いちど捨てたものであっても、その気になればまたいつでも素材として使いまわせる。能力とは、あるかないか、の二択だ。上か下か、といった基準で何かを持ち上げる物言いには(もしくは下げる物言いには)注意しておいたほうがよいかもしれない。


1800:【ひがみだと思ってるんでしょ】
仲間を増やして、共感を集めて、賛同者を募れば社会を変えられる、と勘違いしている人間が近頃増えてきた印象がある。否、むかしからそういった考え方をする者たちは一定数いただろうが、いまはそうした考えを実行に移すところまでを比較的誰であっても簡単にできるようになってしまっているのが、なかなかに危ういなと感じる。SNSの登場が主な要因だ。社会の在り方を決めるのは議論であり、理屈だ。なんの議論も挟まぬままに、なんのとり決めも交わされていない多数決の強行は、暴力で言うことを聞かせるのと原理上区別はつかない。多くの者たちから賛同の意を集められさえすれば、他者や集団のありようや、ルールを変えられるとする社会は民主主義とは呼べない。多数決の原理は、議論のうえに築かれる最終決議であり、段取りなくして声の大きい者たちの主張が通るようでは、いずれ社会全体が土台から崩れていくこととなるだろう。これに限っては、大袈裟な話ではないと感じている。ある意味で、数の暴力が暴力と見做されず、ある種の正当な道理を備えているかのような振る舞いを見せはじめている。SNSによる人々の突発的かつ衝動的な一揆に歯止めをかけるシステムがまだどこにも構築されておらず、自由な交流をウリとしたSNSの性質上、運営がそうしたセキュリティを自前で整備しようとするとも思えない(SNS上の人々のやりとりを運営の恣意的な判断で制御可能であるほうが危険とも言えるから、これはこれで進退窮まっている)。多くの者たちが理解を示さず、共感できず、反対したとしても、より正しいことやものは存在する。縮退圧とは何なのか、と人々が知らずとも、恒星はいずれ収斂していき、縮退圧が自重に持ちこたえれば白色矮星となり、耐えられなければブラックホールとなる(と多くの専門家たちに考えられているだけであり、本当にそうなのか、とはこれもまた例に漏れず断言はできない)。人が理解しておらずとも、万物はただそこにある。数々の失敗を重ねながら人類は学んできたはずだ、賛同者の多さが正しさではないのだと。しかし、ここにきて、その礎がふたたび揺らぎはじめているように見受けられるが、あなたにはどう映っているだろう。これはべつに、いくひしが評価されないのは、そうした風潮がわるい、というひがみではない、断じて! たまにはこうして注釈を挿しておかないと勘違いされてしまう方もいらっしゃるかも分からないので、並べてみたが、並べたとたんに胡散臭さに磨きがかかってしまった。これではまるで、他人にどう思われてもいいと言いながら、要所要所で言いわけを挟む人間みたいだ。いくひしは達観した物言いをしがちだが、じぶんと関わりのある人間には漏れなく好かれたいし、いっぽうてきに愛されたいし、称賛されたい。しかし、そうした欲求が満たされずとも、不幸だ、と思う道理を持ち合わせていないだけであり、極めて即物的で俗物な、有り触れた凡人なのである。何が言いたかったのか。要するに、書くことがない日でした、という告白なのである。


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参照:いくひ誌。【1041~1050】https://kakuyomu.jp/users/stand_ant_complex/news/1177354054884844179

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